うみへび座銀河団で謎の電波放射 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・うみへび座銀河団で発見された謎の電波放射

 アストロアーツ4月10日付記事、元は国立天文台水沢です。

 うみへび座銀河団で発見された謎の電波放射 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>1.5億光年彼方のうみへび座銀河団に、これまで報告されていない広がった電波放射が発見された。放射の機構は未解明だが、銀河団の性質や進化の理解につながる重要な手がかりとなる可能性がある。

 

 >銀河団は数百個から数千個もの銀河の集まりで、直径数億光年にも達する宇宙最大の天体だ。こうした銀河団は互いに衝突、合体を繰り返すことで大きくなっていくが、衝突の際に銀河団の重力エネルギーが変換されて数億度の高温プラズマや磁場、光速に近い速さの電子(宇宙線)が生じると考えられている。そこで、銀河団同士の衝突は、銀河団の進化や高エネルギー宇宙線の起源を解明する上で重要な研究対象となっている。

 

 銀河団が宇宙最大の天体という記述を読んで、「あれ、銀河団が集まった超銀河団というのがあるのだから、銀河団が宇宙最大の天体というのは間違いじゃないの?」と思った方もいらっしゃるでしょう。

 ここでは、天体とは「自らの重力によりまとまっている」ものという条件が付いています。

 その条件の下では、銀河団が宇宙最大の天体というのは間違いありません。

 超銀河団やそれより大きな構造(フィラメントなど)は、たまたま現在そのような配置になっているだけなので、厳密には天体とは呼べないのです。

 

 銀河団内のガスは「数億度の高温プラズマ」となっていますが、それほどの高温になっている理由は上にあるように銀河団どうしの衝突合体の際に重力エネルギーが変換されたためです。

 

 >うみへび座の方向約1.5億光年の距離に位置するうみへび座銀河団(ACO 1060、Abell 1060)は、北天では私たちに最も近い銀河団である。これまでに多数の観測や研究が行われており、過去数十億年間に衝突や合体を経験したことを示唆する結果が得られている。一方で、衝突等に起因した高エネルギー宇宙線やX線を放つ高温ガスからなる特異な空間構造といった観測的な証拠は見つかっておらず、これらの点は大きな謎であった。

 

 うみへび座(Hydra;略符Hya)はトレミーの48星座の一つで、春の星座。

 現代の88星座のうち面積が最大で、横(東西)に細長く伸びています。

 ただ、明るいのは2等星のα星アルファルドだけで、あとは3等星以下です。

 とにかく大きいので13の星座と辺で接しています。

 

 銀河系に最も近い銀河団はおとめ座銀河団で、うみへび座銀河団の半分程度の距離ですが、こちらは赤道付近に位置するので北天にはカウントしないのですかね?

 

 >国立天文台水沢VLBI観測所の藏原昂平さんたちの研究チームは、インドの巨大メートル波電波望遠鏡GMRT(Giant Metrewave Radio Telescope)が2010年12月に観測した銀河団のデータを解析し、うみへび座銀河団中にこれまでに報告されてされていなかった広がった電波放射を発見した。さらに、西オーストラリアのマーチソン広視野電波干渉計MWA(Murchison Widefield Array)の観測データアーカイブにも、より低い周波数で同じ領域に電波放射があることを確認した。

 

 GMRTについてはwikiに基づきまとめます。

 巨大メートル波電波望遠鏡(Giant Metrewave Radio Telescope,GMRT)はインド西部・プネーの郊外に建設された電波干渉計。

 (メートルが meter ではなく metre なのは、イギリス英語なのでしょう。)

 メートル波を観測できるものとしては世界最大とのこと。

 口径45mのパラボラアンテナ30台からなり、最大基線長約25kmという規模です。

 タタ基礎研究所の一部門としてインド国立電波天体物理学センターにより運営されています。

 1996年観測開始。

 

 MWAの方は英文wikiになるので、今回は時間切れで省略。スイマセン

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 GMRTで観測された、うみへび座銀河団の電波強度です。

 画像中央が、発見された電波放射。

 等高線は天文衛星「XMMニュートン」で観測されたX線の表面輝度分布を示します。

 

 >藏原さんたちは可視光線やX線など多波長にわたる観測データを調べたが、この電波放射に対応する天体は見つかっていない。銀河団に見られる広がった電波放射領域「電波レリック」や「電波ローブ」の可能性も議論されたが、既知の電波源として明確に説明できないと結論づけられた。研究チームが「オオコウモリ(Flying Fox)」と名づけたこの放射領域の構造は細長いリング状で、中心に棒状の形も見られる。コウモリの翼に当たる部分は約22万光年にまで広がっている。

 

 対応する天体は見つかっていないというのは、まさに謎の電波放射ですね。

 

 電波レリックとは、銀河団外縁部に存在する円弧状の電波放射領域のこと。

 電波ローブとは、電波銀河が広範囲に作る電波の大規模構造のこと。

 

 約22万光年は、銀河系の直径約10万光年の2倍以上です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 「オオコウモリ」の様子です。

 頭に当たる部分が南西を向き、両翼の先は銀河団中心の銀河「NGC 3311」と銀河団南東の銀河「NGC 3312」に隣接しているように見えます。

 画像右上のスケールバ-の50kpcは約16万光年。(我々素人は距離の単位に光年を使いますが、天文学者はパーセクpcを使います。1pc≒3.26光年)

 

 >ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星「XMMニュートン」の観測データからは、「オオコウモリ」を含む領域の重元素量がやや高いことが示されている。銀河団中心に位置する銀河付近から重元素の多い高温ガスが「オオコウモリ」とともに湧き上がってきた可能性を示唆するものだ。X線分光衛星「XRISM」による観測、検証が望まれる。

 

 XMMニュートンは1999年12月に欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げたX線観測衛星で、英名 X-ray Multi-Mirror Mission-Newton です。

 近地点高度 7,000 km、 遠地点高度 114,000 km という極端な楕円軌道を回っています。

 ニュートンという名称は、もちろん世界一有名な物理学者の名前からとっています。

 

 XRISM は、JAXAが2023年9月に打ち上げたX線分光撮像衛星で、「クリズム」と読みます。

 X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission の頭文字をとっています。

 高度約 550 km の円軌道で地球を周回します。

 軟X線の分光装置「Resolve」と撮像装置「Xtend」を搭載しています。

 

 >今後、同様の電波放射がより多くの銀河団でとらえられれば、銀河団の進化や宇宙線の加速メカニズムの理解につながり、銀河団の膨大な重力エネルギーの変換の仕組みも解明されるだろう。

 

 我々の銀河系は銀河団に含まれていないので、銀河団で起こる現象には比較的馴染みが薄いのです。

 人口密度の低い田舎に住んでいるために都会の常識には疎いようなものです。

 それにしても面白そうな「謎」ですね。

 日本のXRISMなどの活躍で正体が解明されるのが楽しみです。

 

 

 ★ 今日は雨が降ったりやんだりの一日でした。明日は朝から名人戦第2局が始まります。

 これまで新聞の俳句・短歌で天文関連のものなどを掲載してきましたが、負担に感じるようになってきたため、本年5月以降は掲載を取り止めます。ここ数年かなりサボっていたので、あまり影響はないでしょうけど。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス198

   … te zu’e lo nu jdice lo du’u xu kau cumki fa lo nu da .abu ba’o galfi su’o me vy

  その中の誰かに変わってしまうことがあり得るかどうかを考えてみました。

 tezu’e : ~を目的/目標として。法制詞BAI*類 <-zukte 「x3のために行為/実行する」

 jdice : 決める/定める/決定する,x1(者)は x2(命題)であると x3(事/状態)について。-jdi- [言語・認知]

 cumki : あり得る/可能だ,x1(事)は x2(条件)において;x1は可能性。-cum-, -cu’i- [過程]

 ba’o : 完了/事後「すでにし終わっている」。相制詞ZAhO類。

 galfi : 改変する/変える,x1は x2を x3に。-gaf-, -ga’i- [動作・物体操作] 「cenba」と違い、他動的で、結果が含意される

 su’o : 最小で/少なくとも。数詞PA4類。-suz-, -su’o-

 me : 項→述語変換。項の左に付いてそれを「x1はx2(性質)において○○的」という述語にする。ME類

 

 前回から始まる文の後半で、tezu’e の率いる法制節です。

 法制節内の主述語は jdice で、そのx1はアリスでしょうが省略されており、x2は { lo du’u } 以降の命題抽象節です。

 命題抽象節内は { xu kau } により間接真偽疑問となっており、その主述語は cumki で、x1は項番明示 fa により後ろに回った { fa lo nu } 以降の出来事抽象節です。

 出来事抽象節内の主述語は { ba’o galfi } で、そのx1は da 、x2は .abu 、x3は { su’o me vy } です。字詞 vy は、{ lo verba } 「子どもたち」の代項詞となっています。

 このロジバン訳者はこういうときに量化代項詞 da を用いる習慣のようですが、私はロジバンを学び始めた頃に不特定代項詞 zo’e を使うものと学びました。da で良いのならその方が簡単なのですが。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)