銀河系中心の巨大ブラックホールの縁に磁場構造 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・天の川銀河中心のブラックホールの縁に渦巻く磁場構造を発見

 アストロアーツ4月3日付記事、元はEHT-Japanです。

 天の川銀河中心のブラックホールの縁に渦巻く磁場構造を発見 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>天の川銀河中心の超大質量ブラックホール「いて座A*」の縁に渦巻く強い磁場構造が見つかった。M87銀河の中心ブラックホールにも同様の構造が存在しており、全てのブラックホールに強い磁場が共通して見られる可能性を示唆する成果だ。

 

 >国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は、2017年におとめ座の巨大楕円銀河M87の中心ブラックホール(M87*)を観測し、史上初めてブラックホールの影(ブラックホールシャドウ)とそれを取り巻くリング状の光の像をとらえた。

 

 イベント・ホライズンは Event Horizon で、「事象の地平(面)」を意味します。

 ブラックホールを取り囲む球面で、その内側に入ったらどんな物質も光も外に出られないという境界面です。

 詳しくは次の記事をご覧ください。

 史上初、BHの輪郭撮影 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 銀河団はおよそ50~100以上の銀河が集まり重力的にまとまっている天体です。

 銀河団の中心には通常、巨大楕円銀河が存在し、これをcD銀河と呼びます。

 (普通は1個ですが、2個ある場合もあります。)

 M87は、おとめ座銀河団の中心に存在する巨大楕円銀河です。

 (ウルトラマンの母星はM78にあるとされますが、もともとはM87という設定だったところ、誤植でM78となったとのこと。)

 

 M87の中心ブラックホールを、M87* と表すのですね。

 

 >このときに記録された偏光の解析から、リング状の像に沿って偏光の向きが渦を描くように分布していることが2021年に明らかになり、ブラックホールのすぐそばに強く整列した磁場が存在することが示された。磁場が存在する場所で発生した光や磁場を通過した光には、振動面の向きが揃った電磁波である「偏光」が見られることが多く、偏光の向きを観測することによって磁場の情報が得られるのだ。

 

 2021年に明らかになった偏光の様子は、次の記事です。

 M87ブラックホール周辺の偏光と磁場 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 >さらにEHTは2022年に、天の川銀河の中心の超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」のブラックホールシャドウもとらえることに成功した。この結果から、いて座A*とM87*は、1000倍以上も質量とサイズの差があるにもかかわらず、見た目が驚くほどよく似ていることがわかった。

 

 銀河系の中心はいて座方向にあり、そこには巨大ブラックホールが存在していて「いて座A*」と呼ばれます。

 その質量は太陽質量の約400万倍で、巨大ブラックホールとしては小さい方です。

 

 銀河系中心の巨大ブラックホールのブラックホールシャドウについては、次の記事をご覧ください。

 銀河系巨大ブラックホールの輪郭撮影成功 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 >そこで、2つのブラックホールに外見以外の共通点があるのではないかと考えたEHTチームは、いて座A*の偏光を調べた。「ブラックホール近傍の高温ガスからの偏光を画像化することで、ブラックホールに落ち込む、あるいは排出されるガスを取り巻く磁場の構造と強さを直接調べることができます。偏光は、ガスの特性やブラックホールに物質が供給された際に起こる現象など、天体物理学の重要な問題について、より多くのことを教えてくれます」(米・ハーバード大学 Angelo Ricarteさん)。

 

 偏光(polarization)とは、電場および磁場の振動方向が規則的な光(電磁波)のこと。

 これに対して、われわれが通常見る光は無規則に振動しています。

 

 偏光を調べることによって、ブラックホール周辺のガスの磁場の構造と強さが分かるのですね。

 

 >その結果、いて座A*の偏光画像から、M87*に見られるものと非常によく似た渦巻き状の磁場構造が発見された。「天の川銀河の中心にあるブラックホールの近くにも、渦巻くように整列した強力な磁場があるということです。いて座A*の偏光構造が、より大きく、強力なジェットを伴うM87*に見られるものと驚くほどよく似ていることに加え、秩序だった強い磁場がブラックホールが周囲のガスや物質とどのように相互作用するかに重要であることがわかりました」(米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センター Sara Issaounさん)。

 

 銀河系中心の巨大ブラックホールとM87の中心にある巨大ブラックホールとが、酷似しているというのですね。

 後者の質量は太陽の約65億倍なので、3桁違います。

 これほど規模の異なる巨大ブラックホールどうしがよく似た構造をもつというのは、不思議なことです。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の画像をご覧ください。

 巨大ブラックホールM87*(左)といて座A*(右)の偏光画像の比較です。

 渦巻き状の構造が共通して見られ、両ブラックホールの縁が類似した磁場構造を持つことが示されています。

 

 >過去の研究から、M87*は周囲の磁場によって強力なジェットを放出できていることが明らかになっている。今回の研究成果は、いて座A*についても同じことが言える可能性を示唆するものだ。「質量や大きさ、周囲の環境の違いにもかかわらず、ブラックホールにガスが供給され、またその一部がジェットとして放出される物理過程が大質量ブラックホール間で普遍的である可能性を示唆する、重要な発見です」(伊・ナポリ・フェデリコ2世大学 Mariafelicia De Laurentisさん)。

 

 いて座A*は、これまでの研究では「強力なジェットを放出」してはいないとされてきたはずです。

 「同じことが言える可能性」があるとしても、M87*のジェットと比べ3桁小さいと考えるべきでしょう。

 

 >この4月には再びEHTによるいて座A*の観測が予定されている。EHTでは観測のたびに新しい望遠鏡、より広い帯域幅、新しい観測周波数を取り入れるなどのアップデートを行っていることから、今回さらに向上した画像が得られると期待される。また、今後10年間の計画拡張により、いて座A*の動画作成が可能になれば、隠れたジェットが明らかになったり、他のブラックホールでも同様の偏光特性が観測されるようになったりするかもしれない。

 

 いて座A*について「隠れたジェット」が発見されるかもしれないというのです。

 期待したいですけど、どうでしょうかね。

 

 

 ★ 昨日5月2日(木)、藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負第3局が名古屋市「名古屋東急ホテル」で行われ、角換わり腰掛銀の熱戦となりましたが、146手で後手の匠七段が勝利しました。叡王の先手番で負けたのは痛いですね。これで、匠七段の2勝1敗となり、あと1勝で叡王奪取となります。タイトル戦で藤井八冠が連敗したのは初めてです。果たして匠七段が八冠を崩すかどうか、注目の第4局は5月31日に行われます。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス196

   .i la’e di’u cu barda nabmi li’u»

  それが肝心な謎だわ!」

 nabmi : 問題だ,x1(事)は x2が遭遇した x3(状況/課業)における;熟考を要する,x1は x2にとって。-nam- [言語・認知]

 la’e : ~の指示対象。’sumtiの前に付いてその指示対象を引き出す。限定詞LAhE類

 di’u : いま言ったこと。代項詞KOhA2類

 

 アリスのひとり言の最後で、ようやく引用が li’u で閉じます。

 主述語は { cu barda nabmi } 「大きな謎だ」で、そのx1が { la’e di’u } です。

 { la’e di’u } は「今言ったこと」ですが、もし la’e がないと話された内容ではなく、その言語音声や文字列を指すことになります。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)