M87ブラックホール周辺の偏光と磁場 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・M87ブラックホール周辺の偏光から磁場の様子をとらえた

 アストロアーツ3月31日付記事、元はEHT-Japanです。

 M87ブラックホール周辺の偏光から磁場の様子をとらえた - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>2019年に発表されたEHTによるブラックホールシャドウの観測から、ブラックホールを取り巻く光の偏光と磁場の様子が初めて明らかになった。

 

 >イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)は、地球上の各地にある電波望遠鏡を連携させて、口径が地球サイズに相当する仮想的な巨大電波望遠鏡を構築するプロジェクトだ。月面に置いたゴルフボールを見分けられるほどの超高分解能を実現し、「黒い穴」のように見えるとされるブラックホールの直接撮影を目指して開始された。

 

 イベント・ホライズンは「事象の地平」を意味し、一般相対論によりブラックホールの周囲に生じる時空の断面のことです。

 (宇宙論の方でも存在するのですが、直接の関係はないので、説明は略します。)

 物質も光(電磁波)も、それより内側から外に出てくることはできません。

 ブラックホールの直接撮影を目的とする地球規模の電波望遠鏡プロジェクトに相応しい名称です。

 

 >EHTは2017年に8つの望遠鏡をつないでおとめ座の方向5500万光年の距離にある巨大楕円銀河「M87」の中心ブラックホールを観測し、史上初めてブラックホールの影(ブラックホールシャドウ)とそれを取り巻くリング状の光の像をとらえることに成功した。この成果は2019年4月に発表されて大きな話題となった。

 

 M87は、最も近い銀河団であるおとめ座銀河団の中心に位置する巨大楕円銀河です。

 ウルトラマンの母星はM78とされますが、もともとはM87だったのが、転記ミスでM78になってしまったとのこと。M78はオリオン座の散光星雲なので、距離も大きさも天体の性質も全然違います。

 

 マスコミでも超話題になった、M87中心の巨大ブラックホールの影の撮影については、次をご覧ください。

 史上初、BHの輪郭撮影 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 >EHTプロジェクトチームは、このときに得られた観測データの解析を現在も続けており、ブラックホールを取り巻く光(電波)が偏光していることを突き止めていた。

 

 ブラックホールシャドウの画像を公開してお仕舞いというわけではなかったのですね。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 EHTで撮影されたM87のブラックホールシャドウ周辺の電波画像に、偏光の観測データを流線表示で重ねたものということです。

 流線の方向が偏光の向き、流線の明るさが偏光の強さを表しています。

 

 >可視光線や電波などの電磁波は、電場と磁場の振動が横波として伝わる現象だが、自然光のような普通の電磁波には様々な方向に振動する波が混ざっている。縄跳びの両端を二人で持ち、一方の端を振って波を作るときに、振り動かす方向を縦・横・斜めなどに変えると振動面の向きが違う波ができる。自然光はこのように様々な振動面の光が混ざった状態だ。だが、水面で反射した光やある種の物質などを通過した光は、特定の振動面を持つ光だけを含んだ状態になる。このように振動面の向きが揃った電磁波を「偏光」と呼ぶ。

 

 偏光の説明です。

 要するに、横波である電磁波(光)の振動面の向きが揃ったものということです。

 

 >宇宙では、磁場が存在する場所で発生した光や磁場を通過した光に偏光がみられることが多い。したがって、観測した光の偏光の向きがわかれば、そこに存在する磁場の情報が得られる。

 

 >EHTの研究チームがM87のブラックホール画像に記録されている偏光を解析したところ、リング状の像に沿って偏光の向きが渦を描くように分布していることが明らかになった。

 

 >EHTが撮影したブラックホール周辺の光は、磁力線に捕らえられた荷電粒子が高速で運動するときに出る「シンクロトロン放射」という光だと考えられている。シンクロトロン放射は、磁力線に巻き付く粒子の軌道面に平行(=磁力線に対しては垂直)な向きに偏光する性質がある。研究チームでは、M87のブラックホール画像に記録されている偏光の向きをモデル計算と比較した結果から、リング像をドーナツのように取り巻く磁場の分布(ポロイダル磁場)が存在するのかもしれないと考えている。今回の結果は、ブラックホールのすぐそばに強く整列した磁場が存在することを直接示した世界初の証拠といえる。

 

 シンクロトロン放射とは、光速近くまで加速された高エネルギー荷電粒子が磁場と相互作用して方向を曲げられたときに発する放射です。

 アストロアーツ引用文の説明に加えて、相対論的効果により次の特徴が見られます。

 (1) 狭い前方領域に非常に強い強度で放射される。つまり、放射は進行方向に偏る。

 (2) 荷電粒子のエネルギーと曲率半径で決まる、あるエネルギー以下のスペクトルをもつ。

 (3) 曲げられる平面内に偏光している。

 したがって、シンクロトロン放射は、極めて強い非熱的連続放射です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 M87の中心部を、分解能が異なる3つの電波望遠鏡アレイで撮影した偏光画像です。

 画像クリックで表示が拡大します。

 左上が、アルマ望遠鏡で得られたM87中心部とそこから伸びるジェットです。

 白線の長さが1300光年。

 中央は、VLBAで撮影されたジェットの根元のクローズアップです。

 白線の長さが0.25光年。

 右下は、EHTによるブラックホールシャドウ周辺部の画像です。

 白線の長さが0.0063光年(400天文単位)。

 3つの画像とも、流線の方向が偏光の向き、流線の明るさが偏光の強さを表します。

 

 >「EHTは急速な進歩を遂げており、ネットワークの技術的アップグレードが行われ、新たな観測所が加わっています。将来のEHT観測により、ブラックホール周辺の磁場構造がより正確に明らかになり、ブラックホール近傍の高温ガスの物理を詳しく知ることができると期待しています」(台湾・中央研究院天文及天文物理研究所 Jongho Parkさん)

 

 ブラックホール周辺の磁場構造が調べられるなんて、楽しみがぐっと増えましたね。

 ただ、M87の中心ブラックホールと一緒に、銀河系中心の巨大ブラックホールについても影を撮像する努力をしていたはずなのですが、そちらは例の大発表から2年以上経っても出てこないのはどうしたことでしょうか。相当苦戦しているのかな?

 

 

 ★ 今日のロジバン 談話系 da’i と da’inai その1

   ganai da’i do viska le mi citno mensi gi ju’o do djuno lo du’u ri pazvau

 「ガナイ ダヒ ド ヴィㇲカ レ゚ ミ ㇳノ ンスィ ギ ジュホ ド ヂゥノ ロ゚ ドゥフ リ ㇲ゙ヴァウ」

  あなたが、仮に私の妹を見るなら、確実に彼女が妊婦なのがわかるだろう。

 da’i : 仮定として、仮説によると。非現実世界の視点でのあり得る談話を意味する。心態詞(談話系)UI3類

 citno : 若い,x1は x2(基準)において

 mensi : 姉妹関係にある,x1は x2と x3(血縁)により;姉/妹だ,x1は x2の

 ju’o : 確かに、間違いなく。それについてよく知っている/確信できることを意味する。

       <- djuno「知る」。心態詞(修飾系)UI5類

 ri : 直前の体言を意味する。ra の仲間。代項詞KOhA5類

 pazvau : 妊娠している。<- paz+vau, paz<- panzi, vau<- vasru

 panzi : 生物学的子孫だ,x1は x2(親)の

 vasru : 内に含む/包む,x1は x2を;容器だ,x1は x2の

 

 前置型論理接続詞 ganai ~ gi を使った構文なので、「ならば」の意味になります。

   ¬A∨B ←→ A→B

 ただし、時間的順序や因果関係は必ずしも含まないので、ご注意ください。

 前提部分Aに da’i があるので、いわゆる「反実仮想」です。