中性子星合体によるショートガンマ線バーストの駆動機構解明 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ2月26日付記事、元は京都大学です。

 中性子星合体によるショートガンマ線バーストの駆動機構を解明 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>スーパーコンピューターを用いたシミュレーション研究により、連星中性子星の合体が引き起こすショートガンマ線バーストはダイナモ機構と呼ばれるメカニズムで駆動されることが明らかになった。

 

 >2017年8月、中性子星同士の合体で放出された重力波「GW170817」が初検出された。この事象に対応する天体も様々な電磁波で観測され、重力波と電磁波を組み合わせた「マルチメッセンジャー天文学」の扉が開かれた。

 

 GW170817については、重力波の最初の報告はこのブログでは見逃しています。その後だと次の記事があり、またその後も何回か取り上げています。

 重力波で分かった中性子星半径 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 >この際にショートガンマ線バースト(継続時間の短いガンマ線バースト)と呼ばれる宇宙最大規模の爆発現象が付随したことで、長年謎であったショートガンマ線バーストの起源が連星中性子星の合体であると示された。しかし、依然としてその駆動メカニズムはよくわかっていなかった。

 

 GW170817の検出によりショートガンマ線バーストの起源が連星中性子星の合体であることが示されたが、その駆動メカニズムは不明であったというのですね。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 重力波「GW170817」を発生させた連星中性子星の合体を描いた43秒の動画です。NASA作成とあります。

 

 >また、連星中性子星合体がショートガンマ線バーストとして観測されるには、光速に近いスピードで伝搬するジェットが駆動される必要がある。連星中性子星が元々持つ磁場強度ではジェットの駆動には不十分なため、合体時に何らかの過程で中性子星の磁場が増幅されると考えられる。しかし、このジェット駆動の過程もこれまでは不明だった。

 

 ショートガンマ線バーストは地球方向を向いた光速に近いジェットから放射されるものなので、当然ジェットが駆動されているはずですが、その過程も不明だったというのです。

 

 >京都大学基礎物理学研究所/独・マックスプランク重力物理学研究所の木内建太さんたちの研究チームは、過去20年以上にわたり独自のコンピュータープログラムを開発し、連星中性子星合体の問題に取り組んでいる。連星中性子星合体の最大の特色は、一般相対論的重力、強い相互作用、弱い相互作用、電磁相互作用という4つの基本相互作用全てが本質的になるという点だ。木内さんたちはこれら基本相互作用の効果を全て取り入れたプログラムを作成し、スーパーコンピューター(マックスプランク重力物理学研究所の「Sakura」、および理化学研究所の「富岳」)で計算した。その結果、連星合体後の1秒間について、世界最高空間解像度の一般相対性論シミュレーションに成功した。合体後1秒間という長さは従来の10倍で、世界最長のシミュレーションである。

 

 マックス・プランク(1858~1947年)は量子論の父と呼ばれるドイツの物理学者で、1918年にノーベル物理学賞受賞。

 マックスプランク研究所の名称は、もちろん彼の名に因んでいます。

 マックスプランク研究所に属す研究機関はドイツ国内に全部で84もあり、その中には天文学を研究しているものがいくつかあり、過去に本ブログにも登場しています。

 (ドイツは東京一極集中の日本とは異なり、分散型の国家となっています。)

 ただし、マックスプランク重力物理学研究所(Max Planck Institute for Gravitational Physics)は本ブログ初出です。

 ホームページを見ると、括弧書きでアルベルト・アインシュタイン研究所(Albert Einstein Institute)という別名が付いています。紛らわしいからそっちで呼んで欲しいな・・・

 Home | Max Planck Institute for Gravitational Physics (Albert Einstein Institute) (mpg.de)

 施設は、ハノーファー、ポツダムなどに所在しているようです。

 

 スパコンの名称ですが、「Sakura」って明らかに日本語の「桜」からですよね。

 

 「連星合体後の1秒間について、世界最高空間解像度の一般相対性論シミュレーションに成功」ということです。

 連星合体後の一般相対論シミュレーションというのは非常に複雑なので、1秒間でも極めて「長い」のですね。

 実際にそれだけ短時間のうちに極めて複雑な現象が生じているのでしょう。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。

 シミュレーション結果の画像が示されています。

 左は放出物質の電子モル比、中は密度等高面と磁力線、右は磁場強度等高面です。

 色付けはきれいですが、よく理解できていません。

 

 >データを解析したところ、連星中性子星合体後に形成された超大質量中性子星の内部で、自転方向の磁場であるトロイダル磁場を生成する「Ω(オメガ)効果」と自転軸を含む面(子午面)内の磁場であるポロイダル磁場を生成する「α(アルファ)効果」とが交互に働く「αΩダイナモ機構」により、高度に揃った強磁場が生み出されることがわかった。連星中性子星合体により、強く磁化された超大質量中性子星(マグネター)が形成され、ショートガンマ線バーストが駆動されるとする説を支持する結果だ。

 

 連星中性子星合体後に超大質量中性子星(マグネター)が形成されると読めますが、これは合体直後だけのことです。

 中性子星として維持できる質量を超えているため、すぐに崩壊してブラックホールとなります。

 

 トロイダル磁場とポロイダル磁場については、天文学辞典に解説が載っているのですが、解説文を読むよりも画像を見る方が手っ取り早いです。

ポロイダル磁場 | 天文学辞典 (astro-dic.jp)

 右側の画像をクリックすると、トロイダル磁場とポロイダル磁場の画像が出てきます。

 ただ、これが交互に働くといわれても、想像できません。

 

 >また、この強磁場によってほぼ光速で伝搬するジェットが駆動され、それに伴って中性子を過剰に含む物質が太陽質量の10%程度放出されることも見出された。金やウランなどの元素が連星中性子星合体で合成されて電磁波で非常に明るく光り輝くことを示唆する結果であり、マグネターがショートガンマ線バーストを駆動するという仮説を観測的に検証可能であることを示している。

 

 ジェットはマグネターの回転軸にほぼ垂直な両方向に噴出します。

 

 中性子星の噴出物ですから、「中性子を過剰に含む物質」であることは当然でしょうね。

 

 今回シミュレーションで「マグネターがショートガンマ線バーストを駆動するという仮説を観測的に検証可能である」ことが示されたのですから、今後はそれを裏付ける観測がなされることを期待しましょう。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 今回行われたシミュレーションの紹介動画(28秒)です。

 大変きれいですが、残念ながら私には解説不能です。

 

 

 ★ 本日4月7日(日)、藤井聡太叡王に伊藤匠七段が挑戦する第9期叡王戦五番勝負第1局が名古屋市「か茂免」で行われました。21歳の同学年対決の3回目開始です。藤井叡王の先手で角換わり腰掛銀となりましたが、107手で叡王の勝ち。極めて難解な終盤戦で、棋士の先生が解説するのを聞きながら観戦していても意味不明の手の連続で終局しました。この後、解説動画をいくつか見て理解を深める予定です。NHKの大河ドラマは明日録画で見ることにします。

 

 この時期の曲を一つ。

 アン・ルイス 六本木心中 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com) 「動画を見る」をクリック

 ♪櫻吹雪にハラハラすがり~

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス186

   «lu pe’u doi ractu li’u» .i la ractu cu suksa se jenca gi’e …

  「ウサギさん、お願いですから――」ウサギは、いきなりビックリして・・・

 pe’u : 要求。「お願いします」。心態詞(呼応系)COI類。e’oと違い、頼む相手が聞き手であることを明示

 doi : 呼びかけ。「あのう」「ねえねえ」聞き手を特定しながら呼びかける。COI類が先行していれば不要。心態詞(呼応系)DOI類

 suksa : 突然/唐突/急/いきなり,x1(事/状態)は x2(時点)において x3(性質)に関して。-suk- [過程] 「不意」「無骨」も

 jenca : 驚愕/動転/気絶させる,x1(事)は x2を。-jen- [生命・感情] 「spaji」と違い、心理的衝撃が含意される

 

 アリスの発言だけでは短いので、それと次の文の最初の部分まで含めています。

 { lu … li’u } の中は心態部だけで、命題部はありません。

 次の文は gi’e で結ばれた複述構文で、x1は { la ractu } 「ウサギ」、最初の主述語は { cu suksa se jenca } です。

 こういう場合の ractu に掛かる冠詞は、 la (名付けられたもの、渾名系)ではなく le (形容されたもの、主観系)が正しいような気がしますけど・・・

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)