数学・幾何の話題です。
前回の記事では、「ジョンソン立体第2類の構成要素数」について表の形で示しました。
ジョンソン立体第2類の構成要素数 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
今回は、頂点構成です。
頂点構成(vertex configuration)とは、1つの頂点を取り囲む面が何角形であるかという数値を順に並べたものです。
(ちなみに英語wikiによると、頂点構成を表す英熟語は vertex configuration 以外にも多数存在するようです。当然その和訳も多数あるでしょうが、本ブログでは頂点構成を採用します。ただ、以前の記事が一貫しているかどうかは自信ありません。)
たとえば立方体Cであれば、1つの頂点を正方形の面が3個ずつ取り囲んでいるので [444] となります。
また、立方8面体 aC であれば、1つの頂点を正3角形と正方形が2枚ずつ交互に取り囲んでいるので、[3434] となります。
半正多面体では、頂点構成により多面体の性質が確定することを以前示しました。
半正多面体のご紹介1 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
頂点構成は、立方体のような正多面体や立方8面体のような半正多面体、また正角柱、反正角柱では1種類しか存在しません。
しかし、それら以外の多面体では頂点構成は複数存在します。
ある頂点構成をもつ頂点がn個あるとき、その頂点構成の前に「nx」を付けることにします。
「x」は掛け算記号の半角版のつもりです。
たとえば、立方体Cの頂点構成は 8x[444] 、立方8面体aCでは 12x[3434] となります。
頂点構成が複数ある場合の例として、側錐5角柱 5=+ であれば、
6x[445], 1x[3^4], 4x[3345]
となります。
Augmented pentagonal prism - List of Johnson solids - Wikipedia
これは、[445],[3^4],[3345] という3種類の頂点が存在すること、そしてそれぞれが6個、1個、4個あることを意味します。
[3^4] の「^」はべき乗の記号で、同じ種類の面がくり返す場合の略記法です。
(本ブログでは、べき乗や指数に上付添字を使うと小さすぎて見にくいため、「^」を多用します。)
[3^4] は [3333] と同じ、[3^5] は [33333] と同じですが、いずれもより短い前者を用います。
ただ、[3^3] と [333] は同じ文字数なので、後者を用います。
なお、頂点の周りを右回りに進むか左回りに進むかの区別はありません。
このため、頂点構成は逆順にすることも途中から始めることもできるので、[3344] を
[3443],[4433],[4334]
と表記することもできます。
しかしそれでは、見た目が違い過ぎて同じ頂点構成には見えないので、次のルールを設けます。
・一番小さい数字から始める
・小さい方の隣に進む
そうすれば、上の4種類のなかでは [3344] に決まります。
二桁の数字があるときは、混乱を避けるため数字の間を「,」で区切ります。
複数の頂点構成がある場合は、短い順、同じ長さなら小さい順で並べます。
頂点構成からは、価数別の頂点数が得られます。
正5角錐柱 5=> 5x[445],5x[3344],1x[3^5]
∴ V3 = 5,V4 = 5,V5 = 1,V = V3+V4+V5 = 11.
以下では、2A~2Eのグループ別に頂点構成を表の形で示します。
その際、ジョンソン立体番号、新記号、構成要素数(F, V E) も記載します。
また、表の後にそのグループの頂点構成を表す一般式を載せます。
・ 2A m側錐n角柱
番号 記号 F V E 頂点構成
3= 5 6 12 6x[344]
J49 3=+ 8 7 13 2x[344], 1x[3^4], 4x[3334]
J50 3=++ 11 8 17 2x[3^4], 4x[3334], 2x[3^5]
J51 3=+++ 14 9 21 3x[3^4], 6x[3^5]
C 4= 6 8 12 8x[444]
J8 4=> 9 9 16 4x[444], 1x[3^4], 4x[3344]
J15 4<=> 12 10 20 2x[3^4], 8x[3344]
5= 7 10 15 10x[445]
J52 5=+ 10 11 19 6x[445], 1x[3^4], 4x[3345]
J53 5=++ 13 12 23 2x[445], 2x[3^4], 8x[3345]
6= 8 12 18 12x[446]
J54 6=+ 11 13 22 8x[446], 1x[3^4], 4x[3346]
J55 6=++ 14 14 26 4x[446], 2x[3^4], 8x[3346]
J56 6=+x 14 14 26 4x[446], 2x[3^4], 8x[3346]
J57 6=+++ 17 15 30 3x[3^4], 12x[3346]
一般式 (2n-4m)×[44n],mx[3^4],4mx[334n].
ただし、この式は J50 3=++ と J51 3=+++ には適用できません。
これら2つの立体では側錐が隣り合う2側面に付加されるためです。
・ 2B m側錐12面体
番号 記号 F V E 頂点構成
D 12 20 30 20x[555]
J58 D+ 16 21 35 15x[555], 5x[3355], 1x[3^5]
J59 D++ 20 22 40 10x[555], 10x[3355], 2x[3^5]
J60 D+x 20 22 40 10x[555], 10x[3355], 2x[3^5]
J61 D+++ 24 23 45 5x[555], 15x[3355], 3x[3^5]
一般式 (20-5m)x[555],5mx[3355],mx[3^5].
・ 2C m側錐欠損20面体
番号 記号 F V E 頂点構成
I 20 12 30 12x[3^5]
5z> I- 16 11 25 5x[3335], 6x[3^5]
5z I-- 12 10 20 10x[3335]
J62 I-/ 12 10 20 2x[355], 6x[3335], 2x[3^5]
J63 I--- 8 9 15 6x[355], 3x[3335]
(J64 I---+ 10 10 18 1x[333], 3x[355], 3x[3335], 3x[3355])
一般式 (12-6m)x[3^5],5mx[3335].
この式は、I~I-- の3種類についてのみ適用できます。
残りの2種類に適用できないのは、除去される側錐どうしが隣り合っているためです。
・ 2D m側台塔切頂n面体
番号 記号 F V E 頂点構成
tT 8 12 16 12x[366]
J65 tT+ 14 15 27 6x[366], 3x[3434], 6x[3436]
tC 14 24 36 24x[388]
J66 tC+ 22 28 48 16x[388], 4x[3444], 8x[3438]
J67 tC++ 30 32 60 8x[388], 8x[3444], 16x[3438]
tD 32 60 90 60x[3,10,10]
J68 tD+ 42 65 105 50x[3,10,10], 5x[3454], 10x[3,4,3,10]
J69 tD++ 52 70 120 40x[3,10,10], 10x[3454], 20x[3,4,3,10]
J70 tD+x 52 70 120 40x[3,10,10], 10x[3454], 20x[3,4,3,10]
J71 tD+++ 62 75 135 30x[3,10,10], 15x[3454], 30x[3,4,3,10]
一般式 (2E(n)-2mp)x[3,2n,2n],mpx[3454],2mpx[3,4,3,2n].
・ 2E n側台塔回転m側台塔欠損斜方20・12面体
番号 記号 F V E 頂点構成
eD 62 60 120 60x[3454]
J72 eD* 62 60 120 10x[3445], 50x[3454]
J73 eD** 62 60 120 20x[3445], 40x[3454]
J74 eD*’ 62 60 120 20x[3445], 40x[3454]
J75 eD*** 62 60 120 30x[3445], 30x[3454]
J76 eD- 52 55 105 10x[4,5,10], 45x[3454]
J77 eD-* 52 55 105 10x[4,5,10], 10x[3445], 35x[3454]
J78 eD-‘ 52 55 105 10x[4,5,10], 10x[3445], 35x[3454]
J79 eD-** 52 55 105 10x[4,5,10], 20x[3445], 25x[3454]
J80 eD-- 42 50 90 20x[4,5,10], 30x[3454]
J81 eD-/ 42 50 90 20x[4,5,10], 30x[3454]
J82 eD--* 42 50 90 20x[4,5,10], 10x[3445], 20x[3454]
J83 eD--- 32 45 75 30x[4,5,10], 15x[3454]
一般式 10mx[4,5,10],10nx[3445],(60-10n-15m)x[3454].
構成要素数では回転操作を捉えることができなかったのですが、頂点構成には回転操作も反映しているのが良いですね。
最後に、頂点構成の利点と限界に触れておきます。
利点としては、2Eグループにおいて削除操作だけでなく回転操作も反映される点です。
これは、構成要素数にはなかった利点です。
限界は、ほとんどのパラとメタの区別が付かない点です。
パラ メタ
J55 6=++ J56 6=+x
J59 D++ J60 D+x
5z I-- J62 I-/ ・・・ これだけ区別できる
J69 tD++ J70 tD+x
J73 eD** J74 eD*’
J77 eD-* J78 eD-‘
J80 eD-- J81 eD-/
5z I-- と J62 I-/ だけは区別できますが、それは構成要素数でも同じです。
次回は、ジョンソン立体第2類の対称性についてまとめる予定です。
対称性を使えばパラとメタの区別が付けられることを示します。
★ 今日は二十四節気の一つ啓蟄(けいちつ、二月節)。冬眠していた虫が穴から出てくる時季ということですが、実際は朝から冷たい雨が降り続き、もう3月なのに冬の寒さとなっています。
こういう日は景気のいい歌を聞きましょうということで、次の歌をご紹介します。
遊び庭 あしびなー 沖縄民謡 大きな歌詞付き (youtube.com)
沖縄民謡となっていますが、沖縄民謡歌手の前川守賢(しゅけん)の作詞作曲歌で1983年に発表されたものです。
連れ合いの生前行きつけだった沖縄料理店で、毎週末に来る歌の先生の弾き語りで覚えました。言葉の意味も当時教わったのですが、連れ合いが亡くなってからは足が遠ざかり、今はすっかり忘れてしまいました。
★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス169
ni‘o la .alis. uu zo‘u: lo nu mlana vreta gi‘e catlu lo purdi se pi‘o pa kanla cu jimte lo se zukte lo ka .abu kakne ce‘u
[新段落] かわいそうなアリス! できることといったら、寝そべって片目でお庭をのぞくことだけで精一杯。
zo‘u : 題目部終了。題目部の終りと命題部の始まりを表す。ZOhU類
mlana : 脇/横に位置する,x1は x2の (x3を正面に見る x4から見たとき)。x4はx2にとって前や後ろに位置していても良い。-mla-
vreta : 寄りかかる/もたれる/横たわる,x1は。-vre-
catlu : 見る/見つめる/見入る,x1は x2を。-cta- 「見極める」も
sepi’o : ~を使って。法制詞BAI*類 <- pilno 使う x2
jimte : 限度/限界だ,x1は x2の x3(性質)に関する。-jit-
zukte : 行為/実行する,x1は x2(行動内容)を x3(目的/目標)のために。-zuk-, -zu’e-
ce‘u : 抽象節内で焦点となる項の箇所にそのまま代えて置く。KOhA8類
最初から zo’u までは題目部で、その次から複雑な命題部が始まります。
命題部の主述語は { cu jimte } で、そのx1は出来事抽象節 { lo nu mlatu … kanla } 、x2が { lo se zukte } 、x3が性質抽象節 { lo ka … } です。
出来事抽象節 { lo nu mlatu … kanla } のなかは gi’e で結ばれた複文で、x1は .alis でしょうが省略されており、前半の主述語 { mlana vreta } 「寝そべる」です。
後半の主述語は catlu で、そのx2は { lo purdi } 、法制句 { se pi‘o pa kanla } 「片目を使って」も catlu に掛かっています。
出典は、