・天の川銀河中心の100億歳の星は別の銀河からやってきたか
アストロアーツ12月8日付記事、元はすばるです。
天の川銀河中心の100億歳の星は別の銀河からやってきたか - アストロアーツ (astroarts.co.jp)
概要>天の川銀河の中心にある恒星をすばる望遠鏡で観測したところ、この星の年齢が100億歳以上で、別の矮小銀河で誕生したものらしいことが明らかになった。
>天の川銀河の中心には太陽の400万倍の質量をもつ超大質量ブラックホール「いて座A*(エースター)」が存在する。いて座A*が存在することやその質量は、銀河の中心近くにある星々の動きを30年にわたって観測した結果から確認されたものだ。この観測研究に対しては2020年のノーベル物理学賞が授与されている。
2020年度のノーベル物理学賞は次の3人に授与されました。「」内は受賞理由。
・ロジャー・ペンローズ博士(オックスフォード大学) 1/2
「ブラックホールが形成されることは一般相対性理論の確固たる予言であることの発見」
・ラインハルト・ゲンツェル博士(マックスプランク地球外物理学研究所及びカリフォルニア大学バークレー校) 1/4
・アンドレア・ゲズ博士(カリフォルニア大学ロスアンゼルス校) 1/4
「天の川銀河の中心に巨大質量のコンパクト天体を発見した」
>>3人の受賞対象は、いずれも宇宙におけるもっともエキゾチックな存在であるブラックホールに関わるもの、としてまとめられています。
>大質量ブラックホールの近くではとても強い重力がはたらいているため、星の材料となるガスや塵が集まることができず、星が形成されることはない。つまり、いて座A*の近くに星々が存在すること自体が大きな謎でもある。
確かに、「いて座A*の近くに星々が存在すること自体が大きな謎」です。
>この謎を解決するため、宮城教育大学の西山正吾さんたちの研究チームは、いて座A*のすぐ近くにある星「S0-6」をすばる望遠鏡で観測した。S0-6は暗く、多くの星が混み合った領域にあるため、研究に必要なデータの収集には8年間をかけた計10回の観測を要した。
S0-6という名前には覚えがあるような気がしたのですが、私のブログで検索するとヒットしません。アストロアーツの画像の中に出てきたのかもしれません。
ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。
すばる望遠鏡の補償光学装置(AO188)と近赤外線分光撮像装置(IRCS)で撮影された天の川銀河の中心領域です。
S0-6はいて座A*から約0.3秒角離れた位置にあります。
いて座A*本体は、ブラックホールなので当然光り輝いていないわけです。
>最初に確認したのは、S0-6が見かけ上ではなく本当にいて座A*の近くにあるということだ。西山さんたちは2014年から2021年にかけてS0-6の運動を測定し、S0-6がいて座A*の強い重力を受けている、つまり実際にS0-6がいて座A*のすぐ近くにあることを確かめた。
「見かけ上ではなく本当に」というのは、当たり前のようですが天文学では重要です。
何しろ天体というのは、近くに行って見てくることはできないし、横や後ろから眺めることもできないのですから。
>研究チームは次に、S0-6の明るさや温度、星に含まれる鉄の量などを調べて、その観測値を理論的なモデル計算と比較した。その結果、S0-6が100億歳以上の老いた星であることがわかった。
巨大ブラックホールの近くを公転するという物理学の実験室的限界環境にあるのであれば、若い天体に決まっている!と思えるのですが、なんと「100億歳以上の老いた星」だったのですね。
>最後に、S0-6に含まれる様々な元素の量が調べられた。星の内部で合成される元素の種類や、それらがどの時期にどれくらい作られるのかは銀河によって異なるので、元素の量を調べることで星の生まれ故郷がわかる。研究の結果、S0-6に含まれる元素の比は、天の川銀河の近くにある小マゼラン雲やいて座矮小銀河の星ととても似ていることが明らかになった。S0-6の生まれ故郷が、過去に天の川銀河の周りを回っていた矮小銀河である可能性が高いことを示す結果だ。「S0-6の生まれ故郷の銀河は天の川銀河に取り込まれ、S0-6は天の川銀河の中心にある大質量ブラックホールまで100億年以上の長い旅を経てきたのでしょう」(西山さん)。
「含まれる様々な元素の量」を調べることにより、「星の生まれ故郷」が分かるのだと。
その結果、S0-6は「小マゼラン雲やいて座矮小銀河の星ととても似ている」ことが分かったのですね。
「S0-6の生まれ故郷は過去に銀河系の周りを回っていた矮小銀河で、銀河系中心の巨大ブラックホールまで移動してきた」という推測が成り立つということです。
ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。
S0-6と複数の領域の元素組成の比較図です。
赤丸がS0-6、水色の丸がいて座矮小銀河の星、△が小マゼラン雲の星、緑の丸が銀河系円盤部の星、黄色の丸が銀河系のバルジ部の星です。
S0-6は、天の川銀河の円盤部やバルジ部の星よりも、小マゼラン雲やいて座矮小銀河の星と似ていることが分かります。
>一方、S0-6が天の川銀河で生まれた可能性もゼロではない。S0-6の特徴は、天の川銀河の中心から6000光年に広がる「バルジ」と呼ばれる構造にある、少し変わった星とも似ているからだ。「S0-6は、本当に天の川銀河の外で生まれたのか。仲間はいるのか、それとも一人旅だったのか。さらなる調査で、大質量ブラックホールの近くにある星の謎を解き明かしたいと思います」(西山さん)。
図を見る限りでは、バルジの大部分の星々とは似ていませんが、「少し変わった星」とは似ているというのですね。
今回の研究に関する私の感想です。
銀河系が過去100億年の間にさまざまな矮小銀河を吸収してここまで成長してきたことはすでに定説でしょう。
しかし、よりによってその中の星が1つだけ巨大ブラックホールの近くまでやってきて現在は周回していると言われても、正直いって納得できません。
別の原因でこのような元素組成になったと説明される方が説得力があると思います。
★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス150
(to sa’a lo jamfu ca’o binxo lo tai darno ja’e lo nu jy jibni fi’o te simlu .abu lo na ka’e se viska toi)
(だって足を見おろしたら、どんどん遠くなっていて、もうほとんど見えなくなっているのでした)。
sa’a : 編集挿入。発話者や編集者が挿入した語句であることを示す。心態詞(談話系)UI3a類
ca’o : 進行。~している。~の間/において。相制詞ZAhO類 <- cabna 現在
tai : ~に似た形をした。法制詞BAI類 <- tamsmi 似ている
darno : 遠い,x1は x2から x3(性質)に関して -dar-, -da’o-
ja’e : ~を結果として/となって。法制詞BAI類 <-jalge 結果
jibni : 近い/近似している,x1は x2に x3(性質)に関して。-jbi-
fi’o : 法制詞生成。述語をその場限りの法制に仕立てる。FIhO類
simlu : 見受けられる,x1は x2(性質)であるよう x3(者)に x4(状態条件)の下で;x1はx2らしい気がx3にする
ka’e : できる/あり得る。内在的可能性。間制詞(様相)CAhA類
{ to ・・・ toi } という括弧で括られた文ですが、sa’a を使うのであれば編集括弧の { to’i ・・・ toi } の方が適切だと思います。
主述語は { ca’o binxo } 「になっていく」で、そのx1が { lo jamfu } 「足」、x2が { lo tai darno } です。
後ろから ja’e が率いる法制節が掛かっていて、その主述語は jibni 、x1が jamfu の代項詞 jy 、x2が { lo na ka’e se viska } 「見えないもの」です。
法制句 { fi’o te simlu .abu } 「アリスに(とって)は」が挿入されています。
出典は、