初期宇宙で衝突合体中の赤ちゃん銀河 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・120億年前の初期宇宙で衝突合体中の赤ちゃん銀河

 アストロアーツ10月5日付記事、元は京都大学です。

 120億年前の初期宇宙で衝突合体中の赤ちゃん銀河 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>120億年前の初期宇宙で2つの赤ちゃん銀河が衝突合体する様子が、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡によって観測された。

 

 >誕生してから間もない、現在から見ればはるか昔の宇宙には、作られたばかりの銀河が多数存在したと考えられる。こうした「赤ちゃん銀河」は遠くて暗いため観測が困難であり、銀河が初期宇宙でどのように成長進化を遂げたのかはよくわかっていない。

 

 赤ちゃん銀河が暗くて見えにくいのは、極めて遠いからだけではなく、極めて小さいからでもあります。

 

 >大規模国際観測プロジェクト「CAnadian NIRISS Unbiased Cluster Survey」(CANUCS)では、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)と重力レンズ効果を組み合わせた観測により赤ちゃん銀河の様子を調べて、銀河の宇宙論的進化の様子を明らかにしようとしている。初期宇宙の天体からの光は宇宙膨張に伴う赤方偏移によって波長が伸びるため、発せられた可視光線は赤外線として観測される。JWSTはこの赤外線での観測に高い能力を発揮し、優れた解像度や感度で銀河をとらえることが可能だ。さらに、遠方天体からの光が、地球から見てその手前に存在する銀河や銀河団の重力によって本来よりも明るく観測される「重力レンズ効果」を利用すると、いっそう詳しく銀河の様子を調べることができるのだ。

 

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)は、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の後継機で、2021年12月にNASAが打ち上げ、2022年7月から観測を開始しました。

 六角形の鏡を18枚組み合わせた直径 6.5 m の主鏡をもち、赤外線の波長( 0.6~28 μm )で天体を観測します。

 地球から約150万km離れたラグランジュ点L2付近に位置します。

 L2は地球から150万km の位置にあり、重力的に安定で、太陽とは地球を挟んで反対側のため太陽光の直射を受けません。

 詳細は次の記事をご覧ください。

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)、いよいよ打上げへ | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡、主鏡などの展開完了 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 一般相対論によれば、天体の質量は時空を歪めるため、より遠方の天体からの光を増幅する効果をもちます。

 これが重力レンズ効果で、この場合は銀河団の質量を利用しています。

 ただ、人間が作る光学レンズとは異なり、効果が銀河団の質量分布に依存するため、遠方天体の形状が大きく歪んだり、何重にも分裂したりして見えます。

 

 >京都大学の浅田喜久さんたちはCANUCSプロジェクトの観測で、エリダヌス座方向に広がる銀河団「MACS J0417.5-1154」の背後の領域を調査し、およそ120億年前(宇宙誕生から約10億年未満)の時代に存在する2つの銀河が衝突している様子を発見した。どちらの銀河も天の川銀河の1万分の1以下という超低質量で、形成されて間もない天体と考えられている。

 

 エリダヌス座(Eridanus, Eri)は、南天にあるトレミーの48星座の一つで、神話では空を飛んだアポロンの息子パエトンが落ちて死んだ川とされます。

 冬の星座で、オリオン座のリゲルの右側から始まって、蛇行しながら延々と南に流れ、最後は1等星のα星アケルナル(Achernar)にたどり着く、全天で6番目に大きい星座です。

 ただ、アケルナルは、りゅうこつ座のカノープスよりさらに少しだけ南にあるため、東京あたりの緯度では残念ながら見えません。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の画像をご覧ください。

 発見された「赤ちゃん銀河」のペアです。

 手前の銀河団の重力レンズ効果により、ペアが二重像として観測されています。

 また、重力レンズ効果で本来の15倍も明るく見えています。

 右上は重力レンズ効果を解説した概念図です。

 残念ながらクリックしても拡大しません。

 

 >また、2つの赤ちゃん銀河では活発な星形成が進んでいることも明らかになった。銀河衝突によって星形成活動が誘発されているとみられる。研究チームでは、これらの銀河の進化の大部分が衝突で進むと予想しており、両銀河が合体して1つになると星質量が元の銀河の4倍以上になると推測している。

 

 「合体して1つになると星質量が元の銀河の4倍以上になる」という点ですが、銀河内に存在している分子ガスが合体をきっかけに星形成を始めるということですね。

 

 個人的には、合体後にどのような銀河になると予想されるのかも興味深いです。

 立派な銀河には大別して渦巻銀河と楕円銀河がありますが、どちらも今回紹介されているような赤ちゃん銀河から衝突合体を繰り返して進化してきたはずですが、形状が全く異なるので。

 

 >「銀河同士の衝突とそれに伴う活発な星形成活動が、銀河進化の初期段階において重要な成長メカニズムである可能性が観測から示唆されました。このような遠方にある超低質量銀河の進化の解明はJWSTが目指す一大科学目標の一つであり、今回の成果は今後のJWSTによる観測的研究の先駆けとなります」(浅田さん)。

 

 JWSTの素晴らしい観測成果の一つです。

 

 

 ★ 11月に入り朝晩は冷え込んできましたが、日中は25℃以上の夏日です。11月8日(水)は立冬ですが、どうなることやら。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス114

   .i mi kucli lo du’u mi ma kau simsa va’o da’i la’e di’u li’u»

  「そうなったらあたし、どうなっちゃうんだろ」

 kucli : 好奇心がある/興味を覚える,x1は x2に対して;x1は詮索好き

 simsa : 似ている/相似的だ,x1は x2に x3(性質)の点で;x1はx2のようだ。-smi-

 va’o : ~を環境/状況として。法制詞BAI類 <- vanbi 環境/周囲

 da’i : 非現実 「もし~なら」「仮に」 心態詞(談話系)UI3類

 

 一つ前の文の続きで、

 主述語は kucli 、そのx1が mi 、x2が抽象節 { lo du’u mi … di’u } です。

 抽象節内の主述語は simsa で、そのx1が mi 、x2が ma です。

 simsa は英語の similar に対応します。

 法制句 { va’o da’i la’e di’u } は反実仮想の「仮にそうなったら」です。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)