木星と土星の共鳴で地球型惑星と小惑星帯形成を説明 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・木星と土星の共鳴が鍵、地球型惑星と小惑星帯形成の統一シナリオ

 アストロアーツ4月3日付記事、元は国立天文台シミュレーションプロジェクトです。

 木星と土星の共鳴が鍵、地球型惑星と小惑星帯形成の統一シナリオ - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>かつて木星と土星の公転周期が2:1の平均運動共鳴に近い配置だったと仮定することで、地球型惑星と小惑星帯の形成を初めて同時に説明できる新しいシナリオが、数値シミュレーションで見つかった。

 

 >現在の太陽系では、内側に水星・金星・地球・火星という4つの地球型惑星があり、その外側には小惑星帯が広がっている。これらは全て、46億年前に誕生した太陽を取り巻いていた原始惑星系円盤の固体成分から形成されたと考えられている。しかし、地球型惑星と小惑星帯の両方が形成される過程を一度に再現した数値シミュレーションはこれまでなかった。

 

 「これらは全て」に含まれるのは、水星・金星・地球・火星と小惑星帯です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 現在の木星と土星、そして内側に広がる小惑星帯と地球型惑星のイラストです。

 太陽と惑星はサイズを拡大し、小惑星も強調して描かれています。

 ただ、こういうものを見て理解が深まるとは、私には思えません。

 

 >近畿大学のPatryk Sofia Lykawkaさんと国立天文台天文シミュレーションプロジェクトの伊藤孝士さんは、現在の地球型惑星や小惑星帯の軌道配置を統一的に説明できるシナリオを、数値シミュレーションによって見つけ出した。

 

 Patryk Sofia Lykawkaさんは、近畿大学総合社会学部総合社会学科社会・マスメディア系専攻准教授。男性です。

 所属がちょっと不思議です。

 SOFIA LYKAWKA Patryk (総合社会学部 総合社会学科 社会・マスメディア系専攻) | 近畿大学 教員業績管理システム (kindai.ac.jp)

 

 太陽系の過去の姿がどうなっていたかを探る方法としては、惑星形成以前の物質と近い組成の小惑星・彗星の分析がありますが、数値シミュレーションも重要であり、両者は補完的だと思います。

 

 >鍵を握るのは木星と土星だ。現在は木星の公転周期が約12年、土星が約30年なので、木星が太陽を5周する間に土星は2周する。言い換えれば、木星と土星の軌道周期は約5:2の関係にある。Lykawkaさんたちは、これがかつて2:1に近かったと仮定した。このように天体の軌道周期が整数比の関係にある状態を「平均運動共鳴」と呼ぶが、この状態では天体の運動に不規則性が生じて、周囲の小天体にも大きな影響を与える。

 

 次の掛け算ですね。

   12×5 = 30×2.

 

 古代中国では木星は別名として「歳星」と呼ばれていました。

 これは公転周期が約12年で、十二支と対応させられるからです。

 

 次は覚えておかなければいけないでしょう。

 ・天体の軌道周期が整数比の関係にある状態を「平均運動共鳴」と呼ぶ

 

 >研究チームは、木星や土星が誕生して原始惑星系円盤のガスが散逸した時点で、太陽から3.5au(1auは現在の地球~太陽間の距離)よりも内側に微惑星(固体成分が数kmまで成長した天体)が集まっていたと想定した。すると、木星と土星が時おり起こす不規則な運動によって微惑星の軌道がかき乱され、太陽から1.5~3.5auの微惑星が減ってしまう。こうして1.5auより内側では地球型惑星が成長し、2~3.5auの位置に残った微惑星が小惑星帯を構成した、というのが今回提唱されたシナリオだ。

 

 太陽系では中心に位置する太陽からの距離で水H2Oが凍って固体となるかどうかが決まります。

 ちょうどその境目となる距離をスノーライン(雪線)と呼びます。

 地球型の4惑星よりも木星や土星が先に形成されたのは、前者はスノーラインより内側、後者は外側にあり、集積すべき微惑星の質量が水の氷の分だけ後者の方が多かったから、と理解してよいのでしょうかね。

 

 火星軌道は 1.5 au なので、地球型惑星が成長できる最も外側です。

 一方、小惑星帯(メインベルト)は幅をもちますが、代表として準惑星ケレス(Ceres)をとると、軌道長半径は 2.8 au です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 今回提唱された地球型惑星と小惑星帯形成の新シナリオです。

 画像クリックで拡大表示します。

 ただ、拡大しても文字があまり見やすくないので、文字を書き出します。

 1.初期の太陽系(~45.6億年前)

  時刻=0 → ガスの散逸 → 原始惑星と微惑星を含む原始惑星系円盤

  2au~3.5auに資源的な小惑星帯(ローカル小惑星)がある。

  木星は5.5au、土星は~8.7auにあり、両者は2:1平均運動共鳴(MMR)に近い

 2.巨大惑星の軌道移動前に生じる木星・土星によるカオス的な励起

  時刻=500~1000万年 → 円盤中で地球型惑星が形成中 → 小惑星帯は激しく質量を失い、力学的に励起される

  木星と土星については、1と同じ

 3.巨大惑星の軌道の(不安定化)移動後の進化

  時刻=数1000万年 → 巨大惑星軌道の不安定化+その後に生じる惑星移動

  時刻<1億年 → 地球型惑星が形成完了する

  時刻~1-10億年 → (惑星形成)後期の集積

  木星と土星は、1・2の位置から現在の位置に移動します。

 4.現在の太陽系  時刻~40億年 → 長期にわたる進化

 

 >また、このシミュレーションによれば、水が豊富な微惑星は早いうちに集積し、地球には形成後1000~2000万年のうちに水がもたらされることになる。これは、既に観測から得られている事実と一致する。この他にも月の形成時期や、異なる組成の小惑星の分布なども今回のシミュレーションで説明できる。

 

 「水が豊富な微惑星は早いうちに集積し、地球には形成後1000~2000万年のうちに水がもたらされる」とありますが、その理由が分かりません。

 地球の水が「形成後」に「もたららされる」というのは、形成時の水がそのまま残るというのとは違うのかな?

 

 >今後は、これまでの観測で知られている様々な太陽系の特徴についての系統的な理解が進むと期待される。さらに、今回の成果は太陽系に限定されるものではない。

 

 >「今回のシミュレーションの設定は、原始惑星系円盤のガスが散逸した後に現れるごく自然な状態から出発しています。また、木星と土星が生み出す不規則な運動の影響も、太陽系のような天体が互いに重力をおよぼしながら運動する過程では普遍的に見られるものです。ですから、同様な過程で作られる惑星系は宇宙の中で他にも多くあるはずで、系外惑星系の形成過程に関する知見がこうしたモデルから得られる可能性があります」(伊藤さん)。

 

 シミュレーションでこうなりました、というのはもちろん現代自然科学の重要な方法の一つなのですが、一般向けにはシナリオないしストーリーを文章で説明していただかないと、納得はしづらいです。

 太陽系形成論において、今後このシミュレーション結果が広く受け入れられるのかどうか、ですね。