宇宙の網が発するX線 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・巨大な「宇宙の網」が発するX線

 アストロアーツ1月12日付記事、元はカブリIPMUです。

 巨大な「宇宙の網」が発するX線 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>銀河団を網のように結ぶフィラメント構造に含まれる高温プラズマからの熱放射が、X線サーベイ観測の分析で検出された。宇宙の奥深くに隠された物質を探す手がかりになるかもしれない。

 

 >銀河は集団化して銀河団を形成し、その銀河団同士もフィラメントと呼ばれる細長い構造でつながっている。フィラメントの間には銀河が存在しない領域が広がっていて、このような宇宙の大規模構造は「宇宙の網」とも呼ばれる。

 

 「宇宙の大規模構造」は定着した用語です。

 「宇宙の網」は、cosmic web の訳ですね。

 フィラメントは filament で、電球のフィラメントと同じ単語です。

 

 >宇宙に存在する物質やエネルギーの大部分は、直接観測できないダークマターとダークエネルギーで占められているとされ、通常の物質(バリオン)は4.9%しかない。そうしたバリオンの所在地を宇宙の網で探すと、銀河に含まれているのは1割だけで、残る9割は銀河団内部などを満たすガスであることがわかっている。ところが両者を含めても、宇宙に存在するはずのバリオンの半分から3分の1は見つかっていない。

 

 ここで、発表元からミッシングバリオン問題の注を引いておきます。

 >>ミッシングバリオン問題 宇宙は通常の物質(バリオン)(4.9%)、ダークマター(26.8%)、ダークエネルギー(68.3%)で構成されるが、4.9%しかないバリオンも半分以上が検出できていないという問題。 ミッシングバリオンは宇宙の構造形成シミュレーションから網の目のような宇宙の大規模構造に沿って分布しているのではないかと予想されている。<<

 

 まず、宇宙の過半数を占めるはずのダークエネルギーの正体が全く分かっていません。

 次に、1/4程度を占めるダークマターも、物質であること以外は何も分かっていません。

 最後に、普通の物質(バリオン)についても半分以上検出できていません。

 要するに大事なことが全く分かっていないというダメダメな状況が宇宙論の現状です(^_^;

 

 >カブリIPMUの谷村英樹さんたちの研究チームは、この「ミッシングバリオン(消えたバリオン)問題」に取り組んでいる。消えたバリオンの所在地として有力視されているのは、フィラメントに含まれる比較的高温でプラズマ化したガスだ。これまでの研究で、30年前のX線観測衛星ROSATによる全天サーベイデータを分析し、フィラメントの高温プラズマの熱放射によるX線を初めて検出したとする成果を2020年に発表していた。

 

 フィラメントには銀河はほとんど存在していないのでしょうから、バリオンとしてはプラズマだけが存在していることになります。

 なお、星が誕生するのは水素分子雲であって、プラズマでは熱を放出して収縮できないため星は誕生しません。

 

 ROSATは、1990年6月に当時のドイツ航空宇宙センターが打ち上げたX線観測衛星。

 ドイツの物理学者レントゲンの名前に因んで、Rőntgensatelitレントゲンサテリットと命名され、その略称がROSATです。

 1999年2月に運用停止され、2011年10月に大気圏再突入により燃え尽きたとのこと。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の画像をご覧ください。

 宇宙の網からのX線放射です。

 明るい部分が銀河団で、宇宙フィラメントが黄色い線で示されています。

 

 >今回研究チームは、露独のX線天文衛星Spektr-RGに搭載されたX線望遠鏡「eROSITA」の観測結果を分析した。分析に使われたのは、eROSITAによるX線サーベイで最初に発表された140平方度(全天の約300分の1)のデータで、463個のフィラメントからのX線が検出された。X線は高温プラズマからの熱放射であることが確認され、プラズマの密度や温度をとらえることにも成功している。

 

 Spektr-RGは、ロシアとドイツが2019年7月に打ち上げた高エネルギー宇宙物理学天文衛星。

 ラグランジュ点L2に位置しています。

 名称は、Spectrum-Rőntgen-Gamma を略したものなので、X線とガンマ線を観測しそうに思いますが、搭載されているeROSITAはX線望遠鏡です。

 ロシアと西側の国の協力は、今だったらできなかったかもしれませんね。

 

 463個のフィラメントを分析したのであれば、それを基に宇宙全体を語ってよいかと思います。全天の約300分の1であったとしても。

 

 「X線が高温プラズマからの熱放射であることが確認され」たというのは、重要な発見です。

 

 >プラズマがフィラメントの中でどのように分布しているか、熱放射の起源がどこにあるかについては明らかになってない。今後公開されるeROSITAの観測データや次世代のX線観測装置がフィラメントのプラズマに迫り、消えたバリオンの全容解明につながる情報が得られると期待される。

 

 「X線は高温プラズマからの熱放射である」ことが分かっても、その熱源が不明のままです。

 銀河団と比べ、フィラメントの研究は遅れていたのでしょうが、そこに本当に星が存在していないのかどうかも含め、さらなる研究を期待しましょう。

 

 

 ★ 今日のロジバン

   pe’i lo rivli’a cu se tolsi’a 「ペヒ ロ゚ リヴリ゚ハ シュ セ トㇽ゚スィハ」

  逃げるのは卑怯だと思う。

 pe’i : 考えたところによると。心態詞(認識系)UI2類 <- pensi

 rivli’a : 逃げる,x1は x2から x3(経路)を通って。<- riv+li’a, riv<- rivbi, li’a<- cliva

 rivbi : 避ける/回避する/逃れる,x1は x2(事)を x3(事)によって。-riv-

 tolsi’a : 軽蔑する,x1は x2を <- tol+si’a, tol<- to’e, si’a<- sinma

 sinma : 尊重/尊敬する,x1は x2を;x2は尊い

 

 主述語は { cu se tolsi’a } で、そのx1は { lo rivli’a } 「逃げる人」です。

 出典は、

 ma'oste bau la'o by 日本語 by ji'u la <a href='http://jbovlaste.lojban.org'>jbovlaste</a> de'i li 2022-02-01 (guskant.github.io) pe’iの項