銀河団の中を漂う「はぐれ雲」 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ10月14日付記事、元はすばるです。

 銀河団の中を漂う「はぐれ雲」 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>銀河団の中で孤立して漂う、巨大なガス雲が発見された。ガス雲には温度が異なる2種類の成分があり、銀河団中のガスの進化について新たな謎を投げかけている。

 

 >100個程度以上の銀河が集まった構造である銀河団では、銀河同士の間に約1000万度の高温プラズマが満ちている。銀河が銀河団の内部を動くと、高温プラズマを「向かい風」として受け、銀河内の低温ガスが吹き流されて尾ができる。この尾が加熱されて1万度ほどになると、ガスの主成分である水素が陽子と電子に分離してイオンになり、再結合する際に発する光(Hα輝線)で観測できるようになる。

 

 銀河団ガスって、約1000万度でしたっけ?

 もう一桁くらい高かったような覚えがあるけど。

 いずれにしろこのくらいの高温だと、完全に電離してプラズマになり、後で出てくるようにX線を放射するのが観測できます。

 

 銀河が自らの運動により銀河団ガスの「向かい風」を受けても、銀河内の星はほとんど影響がありませんが、銀河内ガスは影響を受けます。

 これを動圧あるいはラム圧といいます。

 

 Hα輝線とは、水素原子の遷移による線スペクトル(輝線あるいは吸収線)のうちバルマー系列で最も波長の長いもの。

 バルマー系列は可視光領域にあり、Hα輝線は波長656.28 nmなので、可視光の赤です。

 

 >形成されたイオンは加熱を続けなければ冷えて低温ガスに戻り、加熱が続くと高温プラズマとなってHα輝線を出さなくなる。そのため、イオンの尾は銀河から流された後に一時的に見える不安定なものであり、元々の銀河のそばに見えるものだと考えられてきた。

 

 >ところが、こうした考えを覆す奇妙な天体が、すばる望遠鏡のHα輝線観測によって3.7億光年彼方のしし座銀河団で見つかった。「はぐれ雲(Orphan Cloud)」と名付けられたこの天体は、一番近いと思われる銀河から少なくとも26万光年以上は離れている。ガスが銀河から離れる速度を考えると、少なくとも8000万年もの間、プラズマにもならず冷え切りもせず、銀河団の高温プラズマの中を生き抜いていることになる。

 

 銀河団のなかで一番近いおとめ座銀河団までの距離が5900万光年です。

 3.7億光年というと、同程度の距離の銀河団はかなりあります。

 

 「少なくとも8000万年もの間、プラズマにもならず冷え切りもせず、銀河団の高温プラズマの中を生き抜いて」きたということは、適度に加熱される仕組みがあるということですね。

 

 念のために書いておきますが、星は低温の水素分子雲が収縮することにより誕生するので、X線はもちろん可視光を放射する温度(赤なら3000度程度)のガスの中でも星が誕生することはありません。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 すばる望遠鏡の広視野主焦点カメラで撮影したもので、赤く見えている広がったガスが「はぐれ雲」です。

 

 >はぐれ雲に興味を持った米・アラバマ大学ハンツビル校のChong Geさんたちの研究チームは、X線観測や可視光線の分光観測を行った。その結果、はぐれ雲は、はるかに大きく広がった高温のX線ガスのほんの一部であることがわかった。全体としては天の川銀河の大きさを超える巨大なガスの広がりであり、X線を放つ高温ガスとHα輝線を放つイオンという、異なる温度のガスが同居している状態である。

 

 銀河系より大きい巨大なガスの「ほんの一部」だったのですね。

 次の2点が確認できます。

 ・周囲の銀河団ガスと一体化していない

 ・異なる温度のガスが同居

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 X線(青)とHα(赤)で見た「はぐれ雲」とその周囲です。

 四角が上の図の範囲です。

 右上の銀河ははぐれ雲の「親」ではありません。

 背景の天体(白)は、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)の観測によるものです。

 

 >ガスの運動速度と金属量の解析から、はぐれ雲が確かにしし座銀河団の中にあること、ある程度大きく十分に進化した銀河の中からガスが出たこともわかった。しかし、はぐれ雲のそばに大きな銀河は見当たらず、「親」に相当するような動きの銀河も見つかっていない。一番近くに見える銀河が親ではないこともわかり、はぐれ雲は8000万年よりもさらに長い間、親銀河から離れて銀河団内を漂っていることが示された。このような、異なる温度からなる孤立した天体が銀河団の中で見つかったのは初めてのことだ。

 

 次の点が分かったということです。

 ・ある程度大きく十分に進化した銀河の中からガスが流出した(金属量解析から分かる)

 ・親銀河が見つかっていないため、8000万年より長い間、銀河団内を漂っていたと考えられる

 

 >今回の発見は数々の新たな謎をもたらしている。これまでに考えられていた加熱の仕組みでは、はぐれ雲の分光スペクトルを説明できない。周囲を高温ガスに囲まれた中で、様々な温度のガスが同居したまま1億年近く漂っていられる理由も不明である。広がった高温ガスの一部に、それよりも多少温度の低い電離ガスが同居しているという雲の形も説明できていない。

 

>今後は、はぐれ雲のような塊が周りと混ざらずに長期間漂っていられる原理の解明や、はぐれ雲そのものの正体を探るための観測研究が期待される。銀河団や銀河の進化の理解にもつながっていくだろう。

 

 かなり不思議な天体です。

 これからさまざまな謎が解明されていくのが楽しみですね。

 

 

 ★ 「はぐれ雲」というと、昨年2020年に亡くなった漫画家ジョージ秋山が青年誌に長期連載した時代漫画を思い出しますが、あちらは漢字表記の「浮浪雲」でしたね。

 

 

 ★★ 今日のロジバン 関係句とGOI類5

   le blabi gerku ne mi cu batci do

  白い犬、それは私の犬なのだが、が君を噛む。

 blabi : 白色だ,x1は。-lab-

 ne : 関係(句・非限定)。関係詞GOI類

 batci : 噛む,x1は x2(対象本体)・x3(対象箇所)を x4で

 

 関係節をつくる関係詞には限定的な poi と非限定の noi がありましたが、関係句をつくる pe (限定的)にも対応する非限定の ne があります。

 この例文は、どの白い犬が噛んだか、分かっている場合です。

 それが「私の犬である」ことは補足情報にすぎません。

 出典は、CLL 第8章 関係節: スムティをさらに複雑にする (ponjbogri.github.io) 3.16),