『日本列島の下では何が起きているのか』1 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 書評です。

 中島 淳一 著 『日本列島の下では何が起きているのか』 講談社 ブルーバックスB-2075 304頁 2018年10月発行 本体価格¥1,100(税込¥1,188)

 http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000315053

 副題は「列島誕生から地震・火山噴火のメカニズムまで」。

 

 中島淳一(なかじま・じゅんいち)さんは1976年生まれなので、今年44歳。

 ご専門は地震学で、主な研究対象は沈み込み帯の地震・火山テクトニクス。

 東北大に入学して同大学で博士まで取り、さらに准教授になった後、現在は東工大理学院地球惑星科学系教授。

 カッコいい肩書だと思います(^_^

 

 天文・宇宙については素人が勉強できる範囲は大体マスターしたと思うので(そこまで豪語していいか→自分)、近年は地球科学分野の本もかなり読んでいます。

 そのうち書評を書いたのは、次の5冊です。

 『海と陸をつなぐ進化論』1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471791000.html

 『三つの石で地球がわかる』1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471789278.html

 『日本列島100万年史』1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471789152.html

 『なぜ地球だけに陸と海があるのか』1:

https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471783177.html

 『四季の地球科学』1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471783787.html

 このうち最初の『海と陸・・・』は地球科学と古生物学の両方にまたがっています。

 また、『なぜ地球・・・』以外は、新書本です。

 

 もちろんこれら以外にも主にブルーバックスの類書を結構読んでいて、いずれもそれなりの内容があり読んだときは書評を書くつもりだったものの、連れ合いが亡くなった時期に重なったりして、結局上の5冊しか書けていません。

 (中にはお勧めできないものもあります。書評というよりはあら捜しに近い酷評ですが、次をどうぞ。

 『地球の歴史 上』:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471788430.html

 著者は京大の名物教授として有名な先生ですが、私はこの方の著書は信用しない方がいいと判断しています。)

 

 本書は、一言でいうと、「プレートの沈み込み」と「水の役割」に焦点を当て、日本列島の下では何が起きているかを紹介していくというものです。

 

 目次は次の通り。

  はじめに

  プロローグ 沈み込み帯に生まれて――変動し続ける日本列島

  第1章 プレートテクトニクス入門――地球を理解するための第一歩

  第2章 地球内部を視る方法――地球の大構造とプレートの運動

  コラム1 鉱物と岩石

  第3章 日本列島ができるまで

  コラム2 断層のタイプ

  第4章 日本列島の下には何があるか?

  第5章 プレートの沈み込みと水

  コラム3 県の石

  第6章 プレート収束境界で何が起こっているか?

  コラム4 宝永地震と宝永噴火

  第7章 沈み込むプレート内で何が起こっているか?

  コラム5 異常震域

  第8章 火山の下で何が起こっているか?

  第9章 内陸地殻で何が起こっているか?

  第10章 関東地方の地下で何が起こっているか?

  おわりに

  引用文献・推薦図書

  索引

 

 本の目次には小見出しまで全部載っていて、見ているだけでお腹がいっぱいになります(^_^

 今回の書評では、第5章までを要約します。

 

 

 第1章と第2章は、基礎的な知識を整理しています。

 第1章は「プレートテクトニクス入門」です。

 

 地球の内部構造区分には、化学組成に基づく地殻マントルという3層の球殻構造と、変形や流動特性など力学的性質に基づくものとがあります。

 

   地球内部の分類  深さの単位:km

  化学組成に基づく        力学的性質に基づく       

 ------------------- 0 ----------------------------地表

     地殻              リソスフェア

 --------------7~70

                  20~200--------------------

                      アセノスフェア

     マントル        200~300-------------------

                      メソスフェア

 ------------------2900----------------------------

                      外核(液体)

      核           5100-----------------------

                      内核(固体)

 ------------------6400----------------------------中心

 

 プレートテクトニクスの主役であるプレートは、地殻とマントル最上部を含む、温度が低く硬い岩盤(リソスフェア、岩石圏)です。

 その下には、温度が高く流動性に富むマントルの領域であるアセノスフェア(岩流圏)があり、より深いマントルの領域にはメソスフェアが広がっています。

 

 岩石の硬さは温度によってほぼ決まります。

 プレートの底の温度は、上部マントルを構成するかんらん岩が流動性に富むようになる1000~1200℃と考えられます。

 したがって、できたばかりの温かいプレートは薄く、古くて冷たいプレートは厚いことになります。

 

 プレートには、大陸プレート海洋プレートがあり、それぞれの地殻を構成する岩石と厚さは次のようになっています。

 

 .  地殻の種類      構成する岩石        厚さ    .

 大陸プレートの地殻 主に花崗岩やはんれい岩 約20~70km

 海洋プレートの地殻 主に玄武岩やはんれい岩 約7km

 

 花崗岩の方が玄武岩より高密度ですが、マントルを構成するかんらん岩はより高密度であるため、プレート全体としては、地殻の薄い海洋プレートの方が大陸プレートより高密度となります。

 (k:私はこれまでより軽い大陸プレートを構成する花崗岩の方が玄武岩より軽いのだろうと思い込んでいました。)

 

 異なる2つのプレートが隣り合うプレート境界では、プレートどうしが相対運動を行っています。

 これは3種類に分類できます。

 プレートが新しく生まれる海嶺では、海洋プレートどうしが互いに遠ざかっており、これを発散境界と呼びます。

 地球全体で生成されるマグマのおおよそ6割が、海嶺での火山活動によるものです。

 プレートどうしが水平にすれ違うプレート境界は横ずれ境界です。

 一方のプレートからみて他方のプレートが右に動く場合が右横ずれ、左に動く場合が左横ずれです。

 おもに海嶺と海嶺のあいだで観察される横ずれ境界をトランスフォーム断層といいます。

 2つのプレートが互いに近づく(一方のプレゼント他方のプレートの下に沈み込んだり衝突したりする)のが収束境界です。

 多くの収束境界では、密度の高い海洋プレートが密度の低い大陸プレートの下に沈み込み、日本列島周辺のような沈み込み帯が形成されます。

 一方、密度がほぼ等しい大陸プレートどうしが衝突すると、ヒマラヤ山脈のような隆起が起こります。

 

 現在のプレートの動き(運動方向と速さ)は、GNSS(Global Navigation Satellite System、全球測位衛星システム)で観測される地表面の動きや地震断層のすべり方向(変位データ)をもとに計算されます。

 GNSSとは、アメリカのGPSや他国の同様の衛星測位システムの総称です。

 

 世界の主要なプレートは十数枚あります。

 本書p.29図1-7から、プレートを大きいものと小さいものとに分けて列挙します。

 ・大きなプレート(7枚) : ユーラシア、北米、南米、アフリカ、オーストラリア、南極、太平洋

 ・小さいプレート(10枚) : インド、アラビア、フィリピン海、アムール、オホーツク、ナスカ、ココス、カリブ、ファンデフカ、スコシア

 このうち、海洋プレートは、大は太平洋だけ、小はフィリピン海、ナスカ、ココス、ファンデフカ、スコシアです。

 カリブプレートは中米とその東の海底を含み、海洋プレートか大陸プレートか不明ですが、他はすべて大陸プレートだと思います。

 

 名称だけからは場所が不明なものだけ解説します。

 ナスカ、ココス、ファンデフカの3枚は、いずれも太平洋東縁の海洋プレートで、ナスカは南米西、ココスはメキシコ・中米の西、ファンデフカはアメリカ合衆国の西に位置し、ナスカとココスは互いに接していますが、ファンデフカとココスは接していません。

 (ココスというファミレスがありますね(^_^)

 スコシアは、アルゼンチンの南端から大西洋を東に伸びるプレートです。

 アムールとオホーツクについては、後で触れます。

 

 プレートの数を増やすほど、観測された変位データをうまく説明できるようになります。

 しかし、データには常にノイズが含まれているため、プレートの数をやみくもに増やせばよいわけではなく、地学的な意味を明確にする必要があります。

 プレートの数はモデルによって異なり、上に挙げたもの以外に数十枚のマイクロプレートを提案しているものもあるということです。

 

 プレートの動きを考えることで、山地・山脈の形成メカニズムや地震・火山の分布など多くの地学現象を説明できるようになりました。

 たとえば、深い地震の震源は海側で浅く、陸に向かって深くなる傾斜した分布をしており、和達(わだち)-ベニオフ面と呼ばれています。

 これは、海溝から沈み込んだ海洋プレート内部で起こる地震と解釈されます。

 

 プレートが動くのは、マントル対流にのって動くからです。

 そして、マントルが対流するのは、地球の冷却過程で対流が重要な役割を果たしているからです。

 地球は表面から冷やされ(伝導により大気や海水に熱が奪われ)、冷えて硬くなった表面付近がプレートとして振る舞います。

 古くて冷たい海洋プレートはすぐ下の高温のマントルより密度が大きいため、重力的に不安定となって収束境界で地球内部に沈み込みます。

 一方、マントル最下部と核との境界は非常に温度差が大きく、マントル最下部は常に核により温められているため、そこから高温物質の上昇が起こります。

 つまり、冷えたプレートの沈み込みとマントル最下部からの熱い物質の上昇が、マントル対流の原因なのです。

 

 ----------------------------- 続 く -----------------------------

 

 『日本列島の下では何が起きているのか』2 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 ★ この書評は、実は昨年書いたのですが、うまく要約できず途中から丸写しに近くなってしまったため、お蔵入りにしていました。しかし、最近ラノベの読みすぎで頭が空っぽになったせいか(^^;、スランプに陥ってしまったため、蔵出しすることとしたものです。