△金星って地球とどう違うの? | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

Q 金星は地球とよく似ている惑星といわれますが、どこが似ているのでしょうか。また、どこが違うのでしょうか。

 

 

 A1 太陽系に8つある惑星のうち、地球型岩石惑星と呼ばれているのは、内側から順に、水星、金星、地球、火星の4惑星です。

 このうち、水星は質量が地球の1%程度と小さく、表面に月と同様のクレーターが多数あり、地球に似ているとは到底いえません。

 金星と火星は軌道が地球と隣り合っていることもあり、地球の妹弟のように見られています。(ビーナスの金星が妹、マーズの火星が弟ですね。)

 しかし、質量をみると、火星は地球の0.11倍と約1割しかありません。

 これに対し、金星の質量は地球の0.82倍とさほど違わないことが分かります。

 このため、金星は「地球の双子星」と呼ばれることもあります。

 

 それでは、金星の質量、半径などを、地球を基準にして表示してみましょう。

           地球   金星  

 質量        1    0.82

 半径        1    0.95

 太陽からの平均距離 1    0.72

 公転周期      1    0.62

 

 いずれも地球より少し小さい値に収まっていることが分かります。

 

 ただ、自転だけは違っています。

 金星は地球などとは異なり、公転とは逆向きに回転しています。

 そして、その自転速度が極めて遅いため、自転周期は243日、日の出から次の日の出までの一日は117日と非常に長くなっています。

       一  年     一  日            

      公転周期   自転周期 日の出から次の日の出まで

     (年)   (日)   (日)    (日)

 金星  0.62  225   243    117

 地球  1.00  365.24  0.997   1.000

 

 

 2 それでは、金星は地球とよく似た惑星といえるのでしょうか。

 いえいえ、質量や半径といった大きさは似ていても、気温、気圧、大気成分など環境面では地球とはまったく異なるのです。

            地球    金星   

 地表面温度(摂氏)   15℃    460℃

 (絶対温度ケルビン) 288K    730K

 地表面気圧      1hPa    92hPa

 主な大気成分    N2(78%)  CO2(95%)

           O2(21%)  N2(3%)

 

 金星の地表面温度は460℃という高温であり、また地表での大気圧は92気圧で、1000mの海底の水圧に相当します。

 大気成分のほとんどは、二酸化炭素(CO2)です。

 地球から酸素や水を大量に持っていっても人間が生存できる環境ではないことは、これだけでも分かりますね。

 一言でいえば「焦熱地獄」であり、美の女神とされるビーナスのイメージからはほど遠いといえます。

 

 さらに、上空では濃硫酸(H2SO4)の雲が全球をすっぽり覆っています。

 この点も、いかにも「地獄」らしいです。

 また、自転速度の60倍の速度で大気が回転する「スーパーローテーション」という現象が生じています。

 これは、赤道付近の高度70kmで最高となり、秒速100mの風が吹きまくっているということです。

 

 金星の地表が高温となっている理由だけ説明しておきます。

 金星は地球より太陽に近いのですが、全球を覆っている濃硫酸の雲がやって来る太陽光の大部分を反射してしまいます。

 このため、地表に届くのは太陽光のわずか数%であり、むしろ地球よりも少ないといえます。

 しかし、金星の分厚い大気のほとんどを占める二酸化炭素が強力な温室効果ガスとなって熱をほとんど逃がさないため、460℃という高温になるのです。

 

 

 3 これまで火星の着陸探査は比較的うまくいっており、何度も着陸を成功させて長期間の地上探査も行ってきています。

 これに対して、金星の着陸探査は非常に難しくて、地上に到達するまでに通信途絶となる場合も多く、着陸に成功しても着陸機の寿命はせいぜい30分~1時間程度で、1回だけ2時間程度もった例(旧ソ連のベネラ13号)があるだけです。

 こうした違いは、上に述べたような金星の過酷な環境によります。

 このため、近年は金星の着陸探査は行われていません。

 

 

 ★ 予定していた記事がいずれも途中までしか書けなかったため、昨日アップした科学ニュース記事を加工してQ&Aに仕上げました。雑文ですが、たまには仕方ないか。