天文などの俳句・短歌から(20/2/16~24) | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

読売新聞2020年2月24日(月)

 俳壇

  矢島渚男 選

    藤壺の総べる橋桁月冴える       (川崎市) 沼田 広美

 ・橋桁の水際にびっしりとフジツボが付いていることを「総(す)べる」と表現。河口に近い橋なのでしょう。

 

  宇多喜代子 選

    大寒のビルより低く朝の月       (坂戸市) 沼井 清

 ・大寒は1月20日だったので、月齢25、下弦をとうに過ぎて細った月です。大寒の朝の寒さがいや増してくるようです。

 

 歌壇

  小池光 選

    副作用にて眠れぬ夜はふかまりぬ 二十六夜の月が出てゐる                            (仙台市) 加藤 祐子

 ・ご病気と薬の副作用の両方と戦っておられる作者。「二十六夜待ち」とは、陰暦正月・7月の26日の夜、月の出るのを待って拝むこと。今年は2月19日だったので、あらかじめ作って投稿されたのかもしれません。

 

  俵万智 選

    テクノロジー駆使して作る音楽の冒頭の詞は森へ帰ろう                            (三島市) 芹沢 詩子

 ・選者評:最近は、音楽の世界でもコンピュータなどの活用が多くなされている。そういった技術を使いつつ、生み出される歌の歌詞が、自然回帰であることの、ほっとするような感覚。結句が一首全体に響いてくる。

 

 

 毎日新聞2020年2月24日(月)

 俳壇

  鷹羽狩行 選

    冬星や離れて思ふことあまた      (和歌山市) 名手 慶一

 ・故郷を離れ家族を離れた作者。思いが次々と湧き上がってきます。

 

  小川軽舟 選

    動くもの己が影のみ寒月光       (国分寺市) 越前 春生

 ・静寂の中、厳寒の空から月の冷たく冴えわたった光が作者の影をつくります。

 

 歌壇

  伊藤一彦 選

    振り向けば明かりが消えた病室をのぞきこむかのようなオリオン                            (郡山市) 佐藤 しょうや

 ・選者評:消灯後の病室の人を想う歌。「病室をのぞきこむかのようなオリオン」の表現が作者の優しさを十分感じさせる。

 

  米川千嘉子 選

    「ママ、数は終わらないよね?」歯の抜けた吾子は笑顔で永遠を問う                            (東京) 杏野 カヨ

 ・永遠というより無限かと。ちょうど今「無限の算術」という記事を準備している私は、元気をもらった気分になります。乳歯が抜けるのは6歳くらいから。

 

 篠弘 選

    早朝の西空に白き丸き月ごみ出しにゆくわれを見ている                            (伊達市) 本望 愛子

 ・1月であれば11日が満月だったので、その前後かと。朝に弱い私は尊敬します。

 

 俳句月評 写生と主体形成  岩岡 中正

 ・岩岡氏:小暮陶句郎『陶冶(とうや)』(朔出版)もまた、写生から出発する。・・・まず著者の造形家としての眼、つまり色彩と形への鋭い感覚と圧倒的な身体感覚に注目。

    冬帝の振り上げてゐる月の斧

 ・冬帝(とうてい)は冬将軍とほぼ同意語。半月より少し前くらいの月齢かと。なお、夏は代わりに炎帝(えんてい)がやって来ます。どっちも長居してほしくありませんね。

 

 

 朝日新聞2020年2月23日(日)

 歌壇

  永田和宏 選

    こののちは緒方貞子のいない日々乾いた月が山から登る                            (福岡市) 松本 千恵乃

 ・国連難民高等弁務官などで活躍した緒方貞子さんは、昨年2019年10月22日に亡くなりました。「乾いた月」が効果的だと思います。

 

 俳壇

  大串章 選

    学生に銭湯ありし冬の月        (岡山市) 奥西 健次郎

 ・作者自身の学生時代の回想か。狭いアパートの一室に暮らす貧乏学生にとって、近所の銭湯が憩いと安らぎの場だったのでしょう。

 

 

 読売新聞2020年2月17日(月)

 俳壇

  宇多喜代子 選

    冬茜金星一つ残しけり          (呉市) 藤岡 賢

 ・冬茜とは、冬の空にオレンジ色に輝く夕焼けのこと。夕焼けが消えていき空もあたりも暗くなる中で、宵の明星だけが明るく光っています。1月の光度はマイナス4等。

 

 歌壇

  栗木京子 選

    会の名は満場一致の冥王星 廃線辿り城を巡りぬ

                            (堺市) 野口 康子

 ・選者評:廃線を辿(たど)ったり城を巡ったりする仲間がいる。会の名を「冥王(めいおう)星」と決めた。太陽系外縁天体に属する冥王星。黄泉(よみ)の国の神のプルートーにちなむ名称が魅力的である。

 ・私は、惑星から外されたことからの連想かと思いましたが、穿ちすぎか。

 

 

 毎日新聞2020年2月17日(月)

 俳壇

  小川軽舟 選

    理科室の広き窓辺のヒヤシンス     (伊勢市) 奥田 豊

 ・理科室というと、まず物理や化学の実験を思い浮かべますが、生物実験もありますね。

 

 

 朝日新聞2020年2月16日(日)

 歌壇

  高野公彦・馬場あき子 選

    酒粕のエサで酔つぱらふ鯖そだて宇宙食となる若狭のサバ缶

                            (越前市) 内藤 丈子

 ・高野選者評:自注によれば酒粕を飼料の一部に入れて養殖した鯖を「よっぱらいサバ」と言うらしい。

 ・馬場選者評:何とも面白い。酒粕で魚は酔い良質な魚肉になるのだろうか。

 ・宇宙でも、無重力で宇宙酔いするかも。

 

  高野公彦 選

    ところどころ雁木(がんぎ)途切れにみる月の昔も今も冴え渡るなり

                            (黒石市) 檜森 てい

 ・黒石市は青森県の市で、青森市の南隣に位置します。豪雪地帯なので雁木が連なり空を隠していますが、途切れている個所から冬の月が見えるのでしょう。

 

  永田和宏 選

    まんげつのトリケラトプスたんじょうびさんぼんのつのろうそくになる

                            (東京都) 松原 尚央

 ・選者評:松原さんは六歳。

 ・人気のある恐竜トリケラトプスの誕生日のお祝いを楽しく想像。

 

 俳壇

  長谷川櫂 選

    白魚は火に雪山は月にぬれ       (津市) 中山 通治

 ・雪山が月にぬれるという表現がいいです。それと対比している前半は、白魚が調理される様子でしょうか。