JAXAの本日2月17日付発表です。
http://www.jaxa.jp/press/2016/02/20160217_h2af30_j.html
>三菱重工業株式会社及び国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、種子島宇宙センターから平成28年2月17日17時45分00秒(日本標準時)に、X線天文衛星(ASTRO-H)を搭載したH-IIAロケット30号機(H-IIA・F30)を打ち上げました。
>ロケットは計画通り飛行し、打上げ後約14分15秒にASTRO-Hを正常に分離した事を確認しました。
これだけでは短すぎますが、解説文をJAXAのサイトからかき集めるのは煩わしいので、よくまとまっているNHKオンラインから引きます。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160217/k10010412901000.html
・天体観測衛星の打ち上げ成功 「ひとみ」と命名
>ブラックホールなど宇宙の謎に迫る日本の新しい天体観測衛星が17日午後5時45分、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケット30号機で打ち上げられ、打ち上げは成功しました。JAXA=宇宙航空研究開発機構は、これまで「アストロH」と呼んでいた衛星の名前を17日夜、新たに「ひとみ」と命名しました。
>新しい天体観測衛星を載せたH2Aロケット30号機は、1段目のメインエンジンに点火したあと、2本の補助ロケットにも点火し、午後5時45分、ごう音とともに発射台を離れました。
>そして、燃焼を終えた補助ロケットや1段目のエンジンを次々に切り離したあと、2段目のエンジンで飛行を続け、打ち上げのおよそ14分後、高度579キロ付近で衛星を予定どおり、地球に回る軌道に投入し、打ち上げは成功しました。
>JAXAでは、衛星側と通信を行って異常がないことを確認し、これまで「アストロH」と呼んでいた衛星の名前を17日夜、新たに「ひとみ」と命名しました。JAXAは、「ひとみ」と名付けた理由について、宇宙を見る新しい目としてさまざまな発見を期待したいという思いを込めたとしています。
>「ひとみ」は、「宇宙の天文台」ともいえる衛星で、JAXA=宇宙航空研究開発機構が、NASA=アメリカ航空宇宙局などと協力して開発しました。
>地球上では大気に吸収されて観測できない「エックス線」を、これまでより最大100倍高い感度で捉えることができ、ブラックホールの成り立ちなど宇宙の謎の解明につながると期待されています。
>「ひとみ」は今後、試験観測を行って、順調にいけば、ことし11月ごろから本格的な観測を始めることになっています。
ニュースの動画も載っているので、お時間のある方はご覧ください。
打上げが成功してから命名するのは、先に命名してしまうと万一失敗した場合に「ひとみ」がダメになったことになり、「ひとみ」という名称が使えなくなるからでしょう。
「ひとみ」という名称の由来は、次の3点から。
a.「ひとみ」(ASTRO-H)が「熱い宇宙の中を観るひとみ」であること。
b.画竜点睛(竜を画いてひとみを点ず)の故事において、ひとみを描きこんだ途端に、竜が天に昇ったことから示されるように、物事の最も肝要なところという意味に使われる。「ひとみ」(ASTRO-H) は、X線天文学において、物事を知るのに最も肝要なミッションになってほしいという願いが込められている。
c.瞳は、眼の中で光を吸い込む部分でもある。ブラックホールは「宇宙の瞳」であるともいえる。「ひとみ」で「宇宙の瞳」を観測する。
http://www.jaxa.jp/press/2016/02/20160217_hitomi_j.html
「ひとみ」(アストロH)の諸元を写しておきます。
>
打上げ時期 2015年度
打上げ場所 種子島宇宙センター
打上げロケット H-IIA
全長 約14m(観測時)
質量 2.7t
電力 3500W
目標寿命 3年
軌道(高度・傾斜角・周期) 円軌道(約575km・31度・96分)
テレメトリ 8Mbps(X-band)
2Mbps(S-band)
記憶容量 12Gbits
搭載機器 軟X線分光検出器(SXS)
軟X線撮像検出器(SXI)
硬X線撮像検出器(HXI)
軟ガンマ線検出器(SGD)
軟X線望遠鏡(SXT)
硬X線望遠鏡(HXT)
<
高度は、ハッブル宇宙望遠鏡とほぼ同じです。
軟X線と硬X線は、X線のなかで波長の長い(エネルギーの小さい)ものと同じく短い(大きい)ものの違いです。
撮像と分光の違いは、撮像は天体の形などを捉えるのに対して、分光はそれは捉えない代わりに波長の細かい違い(この場合はX線光子のエネルギーの大きさ)を捉えるものだという点です。
望遠鏡と検出器とは対になっていて、衛星の一方の端にある望遠鏡で集光を行って、それを衛星の反対側に設置された検出器で検出することになっています。
ただし、軟ガンマ線については集光は行いません。
「ひとみ」の科学目標は次のとおり。
A. 宇宙の成り立ちを調べる
a. 巨大ブラックホールはどのように成長し、周囲にどんな影響を与えたのか?
b. 銀河団はどのように形成され、進化してきたのか?
c. 宇宙では各種の重元素が、いつ、どれだけ作られて来たのか?
B. 極限状態での物理法則を検証・解明する
a. 超高密度・超強地場の極限状態で、どのような物理現象が起きているのか?
b. ブラックホール近傍では、確かに時空は歪んでいるのか?
c. 宇宙線は、どこでどのように作られているのか?
これらの詳細については、JAXAの次のpdfをご覧ください。
http://fanfun.jaxa.jp/countdown/astro_h/files/astro_h_presskit.pdf
図解されているので、一読の価値はあります。
本格観測は今年11月頃からということですが、観測成果が待ち遠しいですね(^_^