デルタ18面体の不存在証明 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

デルタ18面体が存在しないことの証明

正3角形の面だけから構成される凸多面体をデルタ多面体といいます。
たとえば、デルタ4面体は正4面体、デルタ20面体は正20面体です。
以前の連載で、デルタ多面体としては
a.面の数が4枚から20枚までのものが存在すること、
b.ただし面の数が18枚のものは存在しないこと
を述べました。
整凸多面体などについてもろもろ2 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

その際、aの証明は載せたのですが(定理21)、bの証明は難しいようだとか言って逃げてしまいました。
ところが、『線形代数と正多面体』を読むと、bの証明が載っており、大して難しくなかった(^^;ので、ここでご紹介します。

定理 : デルタ18面体は存在しない。

証明の概略
デルタ18面体が存在すると仮定し、矛盾を導く。

デルタ18面体の頂点、稜、面の数をそれぞれV,E,Fとする。
面はすべて正3角形なので、面の数Fと稜の数Eの関係は、
  2E = 3F
これにF=18 を代入してEについて解くと、
  E = 27
オイラーの多面体定理から
  V -E +F = 2
これにFとEの値を代入してVについて解くと、
  V = 11
すなわち、デルタ18面体の頂点数は11個、稜の数は27本となる。

次に、頂点の内訳を求める。
3価の頂点数をV3、4価の頂点数をV4、5価の頂点数をV5とすると、整凸多面体(面がすべて正多角形からなる多面体)なので、
  V3 +V4 +V5 = V = 11 ・・・ (1)
  3V3 +4V4 +5V5 = 2E = 54 ・・・ (2)
(ある頂点がn価というのは、その頂点から出ている稜がn本あるという意味。同時に、その頂点に集まる面もn枚である。)
3価の頂点が1つ以上あると仮定する。
  V3 ≧ 1
残りの頂点数の平均価数を求めると、
  (54-3)/(11-1) = 51/10 = 5.1
価数が6以上の頂点は存在しないので、これは矛盾。
したがって、3価の頂点は存在しないことが分かった。
  V3 = 0
これを(1)、(2)式に代入して、
  V4 +V5 = V = 11
  4V4 +5V5 = 2E = 54
この連立方程式を解くと、
  V4 = 1,V5 = 10
すなわち、4価の頂点数は1、5価の頂点数は10である。

最後に、以上で求めた値を使って多面体の構成を試み、矛盾を導く。
唯一の4価の頂点をとり、その下方に4枚の正3角形をつなぐ。
底に4辺形(必ずしも平面上にない)の穴が空く。
4辺形の4つの頂点はすべて5価なので、4辺形の各面に1枚ずつ、また別に各頂点に1枚ずつ正3角形が接する。
下方に再び4辺形(必ずしも平面上にない)の穴が空く。
この4辺形の4つの頂点はすべて5価で、すでに3枚の正3角形が集まっているので、残りは4辺形の各面に1枚ずつ正3角形が接する。
これら4枚の正3角形は1点に集まり、これで完結する。
これまでに出てきた頂点数は4価のものが2個、5価のものが8個、合計10個、また正3角形の面の数は16枚である。
これは双正4角錐反柱すなわちデルタ16面体であって、頂点を11個、面を18枚もつデルタ18面体ではない。

したがって、デルタ18面体は存在しない。
//証明終り

要するに、実際に作ってみようとしたけど、やっぱりできないでしょ、ということですね。

 

 

多面体の連載など一覧 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)