宇宙再電離と「あかつき」再投入 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

別々の2つの天文ニュースです。

・宇宙は誕生5.5億年後に再電離 従来の説より1億年遅く
アストロアーツ2月9日付記事、元は欧州宇宙機関(ESA)です。
http://www.astroarts.co.jp/news/2015/02/09reionization/index-j.shtml

概要>欧州の天文衛星「プランク」の観測により、宇宙の再電離が起こったのは宇宙誕生から5.5億年後であることがわかった。これまで考えられていたよりも1億年遅い時期となる。

「プランク」は2009年に打ち上げられた欧州宇宙機関の天文衛星で、ドイツの物理学者あのプランクにちなんで命名されています。
一口に天文衛星といってもいろいろ種類があり、プランクは宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測を目的としています。
その意味でアメリカNASAのCOBY、WMAPの跡を継ぐものですが、2013年に運用終了しています。

>生まれたばかりの宇宙は電子や陽子やニュートリノが密集して飛び交う高温のスープのような場所だったが、誕生から38万年後、宇宙が膨張して冷えるにしたがって電子と陽子が結びつき中性水素が作られた。空間を通り抜けられるようになった「宇宙最初の光」が放たれ、これが現在の空に広がる「宇宙マイクロ波背景放射」(CMB)として観測されている。

電子や陽子といった荷電粒子が飛び交っているプラズマ状態だと、光子(電磁波)はそれらとしょっちゅう衝突して直進することができません。
宇宙誕生から38万年後に宇宙空間を満たすガスが中性になって初めて、光が直進できるようになったのです。
これを日本では「宇宙の晴れ上がり」といい、佐藤文隆さんによる美しい命名ですが、残念ながら国際的には採用されていません。

ところが、今の宇宙ではガスは電離しています。
この再電離がいつ起こったのかは、宇宙進化を解明する上で重要です。
再電離を起こすためには紫外線が必要であり、紫外線を発する天体が十分な数存在するようになったのがいつかという点が問題になります。

>欧州の天文衛星「プランク」による観測から、このCMBに刻まれた原始宇宙のさまざまな出来事が明らかにされている。その1つとして今回、宇宙の再電離と呼ばれる現象が宇宙誕生から5.5億年後に起こっていたことがわかった。宇宙で最初の星々の光によって中性ガスが電離され、自由になった電子がCMBのもととなる光とぶつかった痕跡が、CMBの偏光(光の振動の向きが揃うこと)パターンとして見つかったのだ。

CMBを含め一般に電磁波(光)は横波です。
つまり進行方向に対して垂直に振動しています。
われわれが日常接している太陽光などは振動の向きがバラバラになっていますが、振動の向きが揃っているのが偏光です。

>これまで、再電離が起こったのは宇宙誕生から4.5億年後とされていたが、ハッブル宇宙望遠鏡で観測された宇宙誕生3、4億年後の銀河では、再電離を起こすにはじゅうぶんではなかった。今回の成果は、この矛盾を解消するものだ。

ハッブルで135~134億年前の銀河がすでに観測されていたのですか。(138-3=135)
知りませんでした、というか記憶にないのですが、ここ一年ほど天文ニュースのチェックを怠っていたので最近の発見かもしれませんが、単にいつもの健忘症かもしれません(^^;

>遠方のクエーサーや銀河の観測から、再電離は宇宙誕生から9億年後に完了したことがわかっている。

再電離という現象は、かなり時間がかかっていて、宇宙誕生5億年後に始まって9億年後に完了したということです。


・「あかつき」、12月7日に金星周回軌道へ
アストロアーツ2月6日付記事、元はJAXAです。
http://www.astroarts.co.jp/news/2015/02/06akatsuki/index-j.shtml

概要>金星探査機「あかつき」が今年12月7日、金星周回軌道への投入に再び挑戦する。2010年12月にメインエンジンの不具合で失敗しており、代替エンジンを利用して予定と異なる軌道に入る。

日本の探査機というと小惑星探査機「はやぶさ」の成功ばかり注目されますが、1998年に打ち上げられた火星探査機「のぞみ」は2003年に火星軌道に投入できず失敗しています。
この「あかつき」も同様の運命かと思われたのですが、かろうじて首の皮一枚でつながっているというレベルです。

>JAXAは6日、金星探査機「あかつき」の金星周回軌道への投入を今年12月7日に行うことを発表した。
2010年5月に打ち上げられた「あかつき」は同年12月7日に金星周回軌道に入る予定だったが、メインエンジンの不具合により失敗。以降は金星軌道付近で太陽を回っており、金星軌道よりも内側に入るという予定外の高温環境に耐えながら、再び金星に近づくチャンスを待っていた。

満身創痍になっても何とか任務を遂行するというのは、「はやぶさ」を擬人化した美談が一般に感動を与えたストーリーですが、本来は故障や失敗がないのが一番です。

>今年12月の再挑戦では、姿勢制御用のエンジン4基を約20分間噴射する。推力はメインエンジンの2割ほどしかないので、当初の予定軌道(30時間周期)に比べて金星から大きく遠ざかる8~9日周期の軌道に入ることになる。
>金星到着後は3か月間かけて観測機器のチェックを行い、2~4年のミッション期間で大気の動きを観測する予定だ。近金点(「あかつき」と金星が最も近づく点)での高度や速度はほぼ当初の予定軌道と同じだが、遠近点では金星から大きく遠ざかる。そのため詳しい観測ができる時間が限られ、大気の動きを追跡しながらの観測ができなくなったが、大規模な現象を長期にわたって追いやすいというメリットがある。また金星到着が遅れたことで、昨年12月に運用を終了した欧州の探査機「ビーナスエクスプレス」の最新成果を観測に活かすことができる。

一般論としては金星を観測するのだから周回軌道は近い方がよいに決まっているのですが、遠いことによるメリットもあるよ、というわけです。
ただ、5年も遅れたので、観測機器などが相当劣化していることも懸念されます。

>前回からちょうど5年後の軌道投入日となるが、これは全くの偶然とのこと。中村正人プロジェクトマネージャは「お祭り騒ぎではなく、粛々と責任を果たしていきたい。たまたま同じ日になったが、感傷的になることなく冷静に事を進めたいと考えている」と話した。

中村正人さんもドリカムと掛け持ちですから大変ですね。


というのはもちろん冗談ですので本気にしないでください。単に同姓同名の別人です(^_^