4色問題とヒーウッドの定理 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

コクセター『幾何学入門 上・下』の内容紹介第12弾です。

https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471780747.html

https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471781403.html

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球面上の地図(平面上でも同じ)については、どんな地図も必ず4色で塗り分けられることができるということが昔から経験上知られていました。
塗り分けというのは、隣り合う面を違う色で塗るということです。
しかし、この経験則を証明することは長年できず、「4色問題」と呼ばれ難問の一つとされてきました。
塗り分けに4色が必要な球面上の地図の例としては、正4面体に対応するタイル貼りが挙げられます。
これに対し、立方体は3色、正8面体は2色など他の正多面体は3色以下で済みます。

その後、オイラー数と塗り分けに必要な色数との関係について次の定理が証明されました。
   ヒーウッドの定理(P.J.Heawood)
・オイラー数がχである曲面上の地図を塗り分けるには、高々たかだか [H( χ )] 色で十分である。
   H( χ ) = (7+√(49-24χ ))/2
ここで、記号 [ ] は、その「小数部分を切り捨てて整数部分だけをとる」という演算を表します。
ただ、χ=2, 1, 0,-3,-5,-10 などについては、H( χ ) 自身がきれいな整数となります。
χ=2の球面の場合にはもちろん H( χ ) =4 となり、4色が出てきます。
「高々」とは「最大でも」「多くても」という意味で、数学でよく使います。
H( χ ) は χ の単調減少関数です。

 名称     オイラー数 塗り分けに必要な色数  [H( χ )]
 球面       2       4         4 
 射影平面      1       6         6
 円環面      0       7         7
 クラインのつぼ -1       6*        7
 2穴円環面    -2       8         8

実は本書においては、ヒーウッドの定理は χ<2 の場合に限定されています。
これは、本書の原著の出版時点において4色問題が証明されていなかったからです。
しかし、その後1976年にコンピュータを駆使して証明されました(p.306-7訳注**)

なお、クラインのつぼ (χ=-1) については塗り分けに必要な色数が [H( χ )] =7 ではなく、6で足りることが証明されています。
しかし、他の不可符号曲面については、すべて塗り分けに [H( χ )] だけの色数が必要な地図が証明することが示されています。
一方、可符号曲面についても同様のことが無限数の χ について示されているとのことです(すべてとは書いていない。)。
ヒーウッドの定理は、直感的にはピンときませんが、優れものの公式だと感じます。

射影平面上の地図で塗り分けに6色必要なものの例を示しておきます。
球面上の正12面体に対応するタイル貼り地図を考えます。
対極点を同一視すると面の数は6個となりますが、どの面も他の5つの面に囲まれているので、塗り分けには6色必要なことが分かります。
これに対し、球面上の正12面体に対応するタイル貼り自身は、塗り分けに4色しか必要としません(ヒント:1色で3面ずつ塗ればよい)。


長かった連載も今回で終わりです。
証明や計算が長く続く箇所はこういうところでの紹介に適していないと思い、省略しました。
その前に、私自身がきちんと理解できていないということもあります(^^
多少とも興味をもたれた方はぜひ書店でお買い求めになることをお勧めします。