波動関数と観測による収縮 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

量子力学の時間第1弾です。

量子力学では、「ものごと」は波動関数によって記述されます。
波動関数は、シュレーディンガー方程式という微分方程式にしたがって時々刻々連続的に変化します。
これを「波動関数の時間発展」といいます。
この時間発展は、ある時刻の波動関数が与えられればそれよりあとの時刻の波動関数は一意的に決まるという因果的なものです。
この辺の事情は古典力学とまったく同じ。
しかし、古典力学の場合と違い、波動関数は「ものごと」を確率的にしか記述しません。

ところが、「ものごと」の位置を観測すると、それまで波動関数により確率的に拡がっていた位置が瞬間的に収縮します。
(位置ではなく、運動量を観測しても同じ。)
この「波束の収縮」は、観測の瞬間に突然起こり、しかもその結果がどうなるのかは波動関数により確率的にしか予測できません。
つまり非因果的です。
しかも逆向きの変化は生じないので、非可逆的でもあります。

まとめると、量子力学には1.波動関数の時間発展と2.波束の収縮という2種類の時間的変化があることになります。
2番目の「波束の非因果的収縮」は観測のときにしか現れないので、量子力学では観測は非常に特殊な役割を果たすことになります。

別の見方をすれば、 量子力学では自然の記述は「2つのレベル」で行われます。
一つは「波動関数のレベル」で、そこでは相互作用は絶えず存在し、変化は一意的・連続的・因果的です。
もう一方の「現象のレベル」では、事象(「ものごと」の変化)は確率的にしか起こらず、事象と事象との間ではあたかも相互作用がないかのように見えます。

通常、量子力学で基礎的なのは現象ではなく、波動関数のレベルの記述だと考えられています。


以上、次の本からほぼデスマス調に変えただけの紹介です。
芸がない(^_^;
町田茂,原康夫,中嶋貞雄「いまさら量子力学?」丸善(1990年)

もちろん波束の収縮は本当に瞬間的に生じるのかなど論点は尽きません。

量子力学は奥が深いので、時間についてもいろいろな話が出てきます。
追々紹介します。


★ 2005/ 6/ 1に時間トピにmsg177として書き込んだものです。
量子力学の時間も面白いのですが、その後私は量子力学の勉強を怠っているので、もうすっかり忘れています(^^;