孟子「当節仕官をする人達はといふと、われこそは主君の為に領地を拡め、府庫を充たすのだといふけれど、さういふ今日の所謂良臣は、実は古への所謂民の仇敵なんだ。主君が道に向はず、仁にも志さぬのに、その人を富まさうとするのは、それこそ桀を富ますも同然なのだ。また当今仕官をする人達は、われこそは主君の為に同盟国を結束し、戦へば必ず勝たすといふけれど、さういふ今日の所謂良臣は、これまた実は古への、所謂民の仇敵なんだ。主君が道に向はず、仁にも志さぬのに、その主君の為に力戦しようといふは、これまた桀を援(たす)けるのも同然だ。今のまゝのやりかたで、今の風俗を変へないなら、仮りに天下を主君に与へても、恐らく一日としてその位に晏如たるを得ないであらう。」

(「現代語訳孟子」 小林俊夫)