あやしきことを耳にきくとも、目に見ざることの、たしかならざるをば、口にいふべからず。必ず、虚説多し。人のみだりにかたりつたふる神変奇怪なることを、我も亦、かたれば、世につたはりて、人をまよはすこと多し。おろかなる人は、聞くことにまよひて、いつはりを信じやすし。すべて、あやしきことは、かたるべからず。たしかに見たることにも、心目の病によりて、あやしきことみゆ。又、あやしとみゆることも、ゆゑありて、あやしからざることおほし。     

(貝原益軒)