思考の動きを覚える? | 空庵つれづれ

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宗教学と生命倫理を研究する中年大学教師のブログです。



話題は、日々の愚痴から、学問の話、趣味(ピアノ、競馬、グルメ)の話、思い出話、旅行記、



時事漫談、読書評、などなど四方八方に飛びます。

またしばらくブロサボ気味ですみません。


先週末、所用で大阪に行っていたのだが、

夜、ホテルの部屋でTVをつけたときに、たまたまゴルフのレッスン番組をやっており、

ちょうどレッスンが終わって先生役のプロ(顔は見たことあるような気がするが、誰かは

わからない)が「今日のまとめとワンポイントアドバイス」を話しているところだった。


別に見ようと思って見たわけではないのだが、そのプロの話を聞いていて、

思わず引き込まれてしまった。


彼が言うには、

ゴルフで上達しようと思ったら、まず「自分で自分の先生になれ」と。

よく打ちっ放しなどで練習しているとき、自分よりゴルフの経験も長く、そこそこ

の腕をもった人が、自分のフォームなどについてやたらアドバイスをしてきたり

することがあるが、ああいうのは、あまり聞いてはいけないと。

(たとえば、横で見ていて、「左肩が上がっているから、もっと下げろ」とか、

「スタンスの位置がボールに近すぎて窮屈なフォームになっているから、

もっとボールから遠ざかってゆったりと構えろ」とか)

「アマチュアであれプロであれ、他人のアドバイスをその都度真剣に聞いて

フォームを直そうとしたばっかりに、自分のリズムがむちゃくちゃになり壊れて
いった人、という
のを私は数え切れないほど知っている」とそのプロは言っていた。

一番大切なことは、

「自分の身体の動きの全体に意識を集中して、どういう身体の動きによって
どう
いうスイングが作られ、結果としてどういうボールが飛んでいくのかを
自分の身体
で覚え込むこと」

だそうだ。

たとえば、打ちっ放しで練習しているときはボールがまっすぐに飛ぶのに、
ゴルフコースに出ると、いつもフック気味になり、ボールが左へ左へ曲がっていく、

というような人の場合、練習場でボールをまっすぐ飛ばす練習をいくら繰り返しても

ダメだと。

こういう場合はむしろ、わざとフックを出したり、逆にスライスを出したりするような

打ち方をしてみて、そのときに自分の身体がどういう動きをしているのかを身体

に覚え込ませる、そのことで、練習場でもコース上でも自分の身体を同じように

コントロールできるようになる。それが上達の秘訣だと彼は言っていた。

いやー、なるほど~~!!と感心してしまった。


学問や研究でもほとんど同じことが言えるのではないか!

学問の場合は、身体の動きというよりは、思考の動きやプロセスということに

なるのだろうが、よい発想が出てくるときの思考の動きというのにはけっこう

共通したパターンがあるように思う。また、その発想が次の一歩、そのまた次の

一歩につながっていき、(私のような人文系の学者の場合)それがすーっと
言葉になっていくときに、どのように思考が連なって進んでいくか、ということに
ある種の「体感」のようなものができてくると、パッと何かがひらめいたり、

ヒントが得られた段階で、「あ、これは行けそうだ!」とか、「これで書ける!」

といった勘が瞬時に働くようになる。

逆に、どういう場合に思考がストップしてしまったり、泥沼に入ってしまったり

するのか、ということも自分の「体感」として覚え込んでいくことも結構大切だ。


人によって文体が違うのと同じぐらい思考パターンも違う。

このゴルフプロが言うように、違った身体(→違った思考パターン)をもった他人

に下手にアドバイスされ、それに素直にしたがったばかりに、自分の身体(→

思考)の動きが妨げられて、それがバラバラになってしまう、というような例は

多いのだろう。

この歳になってくると、20代、30代の若い研究者にちょっとはアドバイスを
してやらねば、という殊勝な気持ちになることもしばしばあるのだが、
相手が素直すぎるような人の場合は、下手にアドバイスすることでかえって
相手を壊してしまう危険性がある、ということを常に意識しておかなければ
ならないな、と思った次第。


グルメ自慢ばかり続いたので^^、今日はちょっとマジメなお話でした。