演奏会本番のハプニング(第3弾) | 空庵つれづれ

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もう一度、演奏中のハプニングの話に戻る。

小さなミスは気づかれることは少ないが、相当大きなミスであっても、
クラシックの場合は、その曲をよく知っている人でないとわからない場合が

けっこうある。

どうしてもわかってしまうような大きなミスというのは、やはり、

・曲の流れが変なところで止まってしまったり

・あり得ないような不協和音の響きが突然現れた

ようなケースが多いのではないだろうか。

逆に言うと、

・だれもその曲を知らなかったり

・曲自体の流れが自然な音楽のそれと違って
 極度に人工的であったり、
複雑であったり

・もともと不協和音ばかりであったり

するような音楽の場合には、たとえ大きな間違いをしても

誰にも気づかれない、ということになる。

クラシックの演奏会のプログラムには、たまにそういう曲もあるのだ!

そう、

いわゆる「現代音楽」(無調のもの)

しかも、初演

となれば、その曲が(正しく演奏された場合には)どのように響くかを

聴衆はまったく知らないし、想像しようもないからである。

(聴衆どころか、実際に演奏している奏者にすらわからないことがある)


これに関しては、傑作なハプニング談をプロの指揮者から聞いたことがある。

ある指揮者(私が話を聞いた本人ではない)が、日本のプロオケと

ある現代曲を初演した時のこと。

練習時に、いくらやってもオケが合わない箇所があり、一旦ずれ出すと、
そもそもどのようにずれているのか、各パートがわからなくなり(たぶん

小節線とかももともとアバウトか、あるいは各パートで異なっていたりする

楽譜なのだろう)、しまいにはみんながバラバラになってしまうので、何が

正しいかもわからず、自分がどこを弾いたり吹いたりしているのかすら

わからなくなってしまったそうだ。

本番までにそれを合わせる時間がどうしてもない、ということがわかった

指揮者は、オケの奏者全員に、指示を与えた。


もし本番、ここからここまでの箇所で、途中でどうしても収拾がつかなく

なった場合は、私が合図をするから、その合図とともに、みんな一斉に

「練習番号2」に入るように、と。

(オーケストラの楽譜には大抵、1、2、3・・・・とかA、B、C・・・・・などと

いった練習番号というものが振ってあり、練習の時に、曲の途中のある

箇所からもう一度繰り返したいときなど、指揮者が「Bの3小節前からもう

一度」などと指示したり、「Cの2小節目のホルン、音程低いよ」などと

注意したりするのに便利)



ところが本番、
まったく別の箇所で、練習の時にあまりうまく行かず何回も練習を繰り返した

箇所がとてもうまくいったので、この指揮者、うれしくなってしまい

思わず左手で Vサイン を出してしまった 
からたいへん!

この「Vサイン」を数字の「2」と勘違いして、
みんなが
一斉に「練習番号2」に戻ってしまったとサ。

もちろん、聴衆にはまったくそんなことはわからなかったでしょうね♪


(TVの放送用に録画などしていれば、その瞬間に、指揮者の驚いた顔

が観られるかもしれませんが)