スタインウェイのピアノ | 娘が自殺…母への恨みを残して・わが子を死に追いやった悔恨の日々

娘が自殺…母への恨みを残して・わが子を死に追いやった悔恨の日々

19歳のひとり娘が自死・残された母のこの世の地獄・生きる希望を求めて・それとも後を追う?

何年も前からしていた催しがコロナ期一時休止されていたが、今年再開したので、試しに応募したら受かってしまった。

 

ある都市の演奏会場・ホールにて、一般人にも「気ままに」高級ピアノを演奏させてくれる、という企画。

 

とても購入できるような金額ではないフルコンサート用グランドピアノだ。

 

うちにもあるような小型グランドピアノとは違い、長さがすごい。

 

象牙白鍵盤に黒檀の黒鍵。

指の滑りが適度なのが特徴。

ピアノは指がすべってしまってはいけないので、ピアニストによっては「小麦粉」を撒く、という人もいた、という噂があるほど…。

私は、ピアノの蓋か端っこに付いているホコリを指にすくって弾いたりする。現代の鍵盤はすべてプラスチック製のものだ。うちの物は運よく、「象牙風」「黒檀風」の合成だが、とてもよく出来ている。

昔、50年ほど前、実家にあったのは本物の象牙黒檀のヤマハのフルコンだった…

 

ドキドキしながら、会場に行くと、なんとプロの演奏家のように「控室」を案内された。

予約時間まで数分を待機するための部屋だった。プロのピアニストの気分を存分に味わってみた。

 

舞台のそでに、会場の担当者の若い女の子が三人いて、「人に聴かれたくない」と思っていたので、「え?ずっといるのですか?」と聞くと、最後の数分前に戻ってきます、と言って、案内後に外に出て締めてくれた…音はドア外にも漏れてますが…

 

本物のステージ…証明や舞台の高さ、客席が見える…意外に観客席数は多いので、ちょっと恥ずかしいものがあったが、無人なのですぐに安心した。

いつものような調子で、「あがり症」は関係なくできる。

私の関心は、ピアノの音と音響のみ。

 

二台のスタインウェイを好きなように使用できるという。

意外に古く、ピアニスト?のサインが1968年とある…読めない

蓋も艶が失われていたし、メーカーロゴも少しかすれているが、「夢の中のような」、まるで古い録音のような音がしたが、これは一流のピアニストなら不満だろうか…まあこのホールに有名コンクールの覇者は来ないだろう。彼らは福岡市内にある有名大ホールだろうから。

 

私のような一般人には、贅沢すぎるほどの、古き良き時代のピアノの音…

しかも信じられないほどに軽くて弾きやすい。コロコロと玉を転がすような高音部に重厚な低音部。

二台はまったくそれぞれ違う音で、同じメーカーとは思えないほど…

 

娘の遺影を楽譜立ての横に置こうと思ったが、あの子の顔と目が合うと涙が出て、どうも駄目だったのでバッグの中に…

 

誰もいないステージ独占は、もう二度とないだろう…と思う。

 

素晴らしい音を録音すべきだったかもしれないが、自分の録音を聴くのは、自分の録音の声を聴くくらい嫌なので、写真のみ。

 

これは、もう生涯に一度の「母の日、誕生日の贈り物」として自分へのプレゼントだ。

 

普段、弾き分けることの出来なかった声部も、少しの力の入れ方で表現できる素晴らしいピアノだった…スタインウェイが世界一の地位にあるのが頷ける…と、いっても日本製のピアノしか弾いたことはないが…。ベヒシュタインやベーゼンドルファーという三大巨頭があり、いつか弾いてみたいが、そんな奇跡は起きないだろう…

 

高級ピアノを弾いてわかったのは、今まで不満だったある部分が私の技量が足りなかったのではなく、ピアノの能力にあったのだ…と驚いたことだ。その点、少し己惚れることもでき、本当に有意義な二時間だった…きっと亡き娘からのプレゼントだ、という気がした。

 

ここに来られたことの感謝を伝えて、予約の切れる数分を会場の先ほどの若い女性たちに聴かれたことが気恥ずかしい気もした…彼女たちもにこやかに微笑み、演奏を「良かったですよ」と言うかのように温かい視線で見送られた。

 

娘が亡くなり、悲しくてどうしようもなく、youtube で偶然出会った曲が、まるで娘の鎮魂の曲のように聴こえ…それを最後にした…実は彼女たちに聴かれてしまうかもしれない、と思い選曲した。娘の思い出の香りとして、この音が彼女たちの記憶に一音でも残ってくれたなら、娘のことも伝わるのではないか…そんな気がした。

 

ババジャニアン作曲 エレジー悲歌 (ハチャトリアンの思い出に )

 

 

 

 

後から調べるとピアノのサインは1968年にピアニスト安川加寿子のもので、会館が購入したピアノの初のお披露目コンサート記念にサインしてもらったそうだ。

もうひとつは、20年ほど後に購入した1986年製ピアノということで、私はそちらの方が気に入ってほぼ二時間はそちらを使用した。やはり、ピアノはあまりにも古いと音質が…ということだろうと思う。古い方は明瞭な音は健在だけれど、ずっと聴いていたい夢の中のようなロマンチックな音がしたのは意外にも後発のピアノだった。どちらも同じように古い感覚、音だったのでそんなに製造年が違うのを知って驚いたが…。

 

ヴァイオリンはストラディバリウスのように古い方が良い音がする…ということだが、ピアノは当てはまらない。

貴重な経験をさせていただいた〇〇文化会館に感謝