演劇人生 -94ページ目

演劇人生

今日を生きる!

「君には外見(そとみ)にはわからない歴史があるんだよ」

人間、孫悟空じゃあるまいし、

突然、石から生まれてくるわけじゃないんだ。

劇団生活
    退屈な話なので妹の画を・・・1

「ぼくから歴史は始まるんです」

などと息巻く、かつての教え子から電話があった。


「じゃ、これまでは何だったの?」

「母を養わなきゃならない、家も見なきゃならない。

そこには自分自身がなかったんです」


「う~ん、この話に付き合うには覚悟が

要りそうだ。数日してから、また電話くれ」

「わかりました」

劇団生活

           2

これで終わりかと思いきや、

「ところで、いま仕事はどうですか?」

話題を移してくる。いっそう憂鬱になって、

「眠いから今日はこの辺で」

と電話を切った。


ひとまず間をおきたかった。

この続きの電話はきっとないだろう。

棘のように心に刺さったものを抜きたいと思ったとき、

このような電話をかけてくるのだろうと思えるふしがある。

しかし次にかかってきた電話に、

「この前の話はどうした?」

と聞くと、

「えッ、何でしたっけ」

と、ケロリと忘れているからだ。

劇団生活
           3

ところで、この彼とは関係ないが、

今日これから「表現講座」の教室がある。

三浦綾子さんの短編「清い溝川」を読んでもらう。

溝川・・・「えッ、これでどぶ川って読むんですか」

みんなが「へェ!そうだったの」と驚く。

「水清ければ魚棲まず」というが、そうだろうか。

今の世の中を考えさせる作品である。

先ほど神田まで自転車で行ってきた。

途中ファーストフードに入りコーヒーを飲む。


週日の昼過ぎで食後の息抜きに立ち寄り

仲間同士お茶をしているビジネスマンや

OLもいたが、中に子供づれの母親らしき

女性もいた。


「らしき」とは失礼かもしれないが、

そうとしか言いようがなかった。

4~5歳の子どもは、所在なさそうにポテトを

つまみ、母親はわき目も振らずメール打ち。

子どもは退屈して母親に寄りかかる。

「・・・・!」

母親は、その方を見もせず無言で押し返す。

子どもは下唇を突き出して不満を示し、

またポテトを口に入れる。

が、明らかに食欲は失せている。


何回か、それの繰り返しの後、

子どもとはいえ堪忍袋の緒も切れようというもの。

母親のコートの袖を思い切り引っ張った。


パチンッ!

母親は子どもの頭を平手で叩いた。

顔を向けもせずに・・・


「おい母親ッ、そりゃあないよ!」

言いたくなるが、堪えた。

        汗

耐えている子どもほどには我慢が出来ない。

半分近くしか飲んでいなかったコーヒーだが、

気分が萎えて、手が行かない。

いや~な思いを抱いたまま店を出て・・・

神保町から大手町へ抜けた。

+++++++++++++++++

終戦後、ぼくは母と妹の3人暮らしだった。

小さな家での倹しい暮らしだった。

この頃はみな貧しかった。

猫の額ほどのりんご畑と、自給自足の作物を

家の周りの畑から採って来ては食卓に

並べる・・・そんな食事だった。

        汗

早めに床に入り、

何十回聞いたか知れない母親の語る話に

耳を傾ける。・・・いつの間にか、話が途切れ

母親の寝息に変わる・・・「ねぇ、お母さん!」

妹の催促で「はいはい」との返事に続いて

「あれっ、何処まで話した?」

幼い頃の、こんな生活を思い出す。

        汗

ある夜のこと、寝入ったぼく等は突然起こされた。

「へい、ママさん、ここ開けなさい」

「開けないと壊すよ」

木戸をドンドン叩き続ける。

数人の米兵の声がする。

明らかに酔っている声だ。

そして時折下卑た笑い声と甲高い口笛が響く。

「開けろ!」

「ママさん!」

母はぼくと妹を抱きしめ、

「いいか、入ってきたらお前たちは逃げて行って

“助けて”って大声で叫べ」

そういうと、囲炉裏にくべる薪を握りしめた。

ぼくは、その時の母の腕に浮き上がった

血管を今でも記憶している。

       汗

「もうダメだ」と思ったのだろう、母は、

「いいかッ!」と言うなり入り口に突進していった。

・・・と、その時叩く音が止んだ。

ぼくも妹も息を止めた。

       汗

米兵たちは諦めたのだろう。

笑い声と奇声が遠のいていった。

「お母さん!」

母に近寄ると母は泣いていた。

「よかった。何もなくてよかった」

母の指差した入り口の戸を見ると、

閂代わりに差し込んだ釘が半分抜けかかり、

あとひと叩きで落ちそうになっていた。

       汗

翌日、隣り村で一軒の家が荒らされ、

娘が数人の米兵に乱暴されたという話を聞いた。

       汗

ファーストフードにいた母親にむかつき、

ペダルを踏みながら虎ノ門に抜けながら

こんなことを思い返していた。

       汗

気丈に危険に立ち向かっていた母は、

既に世を去っていない。

劇団生活
    母・・・民(みん)

今さっき千駄ヶ谷駅から神宮外苑を

抜けて帰ってきた。


途中、国立競技場と絵画館の間を通り抜けようとすると、警視庁機動隊が数百人隊列を作っていた。

道路整備をしていた隊員の一人に

声をかけて聞いてみた。

「今日何かあるの?」

「観閲式があるんです」

という。

「あゝ、それでみんなの制服もきれいなのか」

 (にっこり笑って)

「えッ、あゝ、そうです。はいッ!」

こんな応答をしていると、

鹿爪(しかつめ)らしい機動隊も

「人の子だなァ」と思えてくる。


ところが一時期、「国民の敵」と言われたこともあった。

警棒で滅多打ちにされた友人もいた。

国会近くで、ぼくも蹴りを入れられた。

(ことがあった)


三浦綾子作「母」で、

主人公の小林セキが幼い頃の想い出として、

家の近くの交番のお巡りさんを、

「立派なひげを生やしたお巡りさんが、

おセキはメンゴイなぁと言っては、

頭をなでてくれたり、大っけな飴玉を

口に入れてくれた」

と、語ります。

劇団生活
彼女が警察に持っているイメージは、

貧しい家の女の子の口に飴玉を入れてくれ、

ニコニコして頭をなでてくれる存在だったのです。


ところが、息子の小林多喜二は、

その警察から拷問を受け、虐殺されるのです。

劇団生活
「まさか、あの巡査と同じ警察に・・・」

いくら考えても結びつかなかったはずです。


仙石官房長官が、

自衛隊を暴力組織(機構)といったことで

参院で問責決議を受け、その処遇が

云々されています。

政治学、軍事学でいえば全く違和感の

ない話だが、予算委員会の、あの場で、

出すべき話ではなかった。(必要性もない)

・・・が、民衆のデモに襲いかかる機動隊が

権力の犬よろしく姿を一変させるように、

自衛隊が暴力組織に姿を変えることも

ありうるのは間違いない。


権力はあらゆるものの姿を変える危険性を

常にはらんでいる?


「優しくて虫も殺せないような人」が、

戦場に行き数百人の敵を殲滅し、

英雄としてふるさとへ凱旋。

その後、冷酷で血も涙もない軍師になった・・・

こんな話はざらにある・・・


「人はすべからく弱いのです」

という人もいる。


・・・とんでもない。

弱いままでいないのも人間なんです。

三浦綾子さんの「母」の脚色について、

神尾哲人氏の話。


三浦綾子さんは、「氷点」の作家だという以外は

ほとんど知識を持っていませんでした。

ただ「氷点」を呼んだとき、この作家は実に

酷い女だと思ってしまったんですね。

どこまで、人に重荷を負わせれば気が済むのか

ってね。それに曽野綾子さんとごっちゃになった

りして、夫君も三浦朱門さんと勘違いをしたり、

ほら、どちらもクリスチャンじゃないですか。

「氷点」は、民藝時代に、テレビ朝日(当時の

日本教育テレビ)の「氷点」に出演していた

芦田伸介さんからもらった本だったんです。


そして豪さんから脚色してくれと頼まれたのが、

その作家、三浦さんの「母」だったんです。

それを読んで、先ず三浦さんに対して抱いて

いた気持ちが一変しました。

それをきっかけにして三浦さんの作品を

片っ端から読み漁りました。

すると演劇作品にしたい小説がたくさんあって、

挙げるだけでも、「青い棘」「泥流地帯」

「壁の声」「新しき鍵」「細川ガラシャ夫人」

「嵐吹くときも」「天北原野」「この重きバトンを」

等々・・・・10篇ほどすぐあがるんです。

ま、かなり難しい脚色になるとは思いますがね。

そこで、これまでやっと「母」「新しき鍵」

「壁の声」「この重きバトンを」を舞台に上げ、

いま「母」の再脚色にかかっているんです。

大胆に手を入れようと思います。

ただ、演出って薄情ですからね。いくら懸命に

書いても、バッサバッサ切られますからね。

劇団生活
 カットされた場面・・九段坂で話し合う兄多喜二と弟三吾
劇団生活
 
   カットされた場面・・「ここを圧すとね・・・」

劇団生活
    「こなどおもしゃいな」流木を燃やすのは勿体ない。
劇団生活
      三吾は旭川での演習
劇団生活
 人生これ、あざなえない「縄の如し。

        これもカット!

情けも何もあったもんじゃない、切捨てごめん!

これでしょう?脚色家なんて哀れなものですよ。

「母」だって、最初は3時間30分の芝居ですよ。

「これは終電に間に合わないから」といっては、

虎刈りですよ。あっちこっち刈り取られ、

2時間30分になっちゃったんですよ。

でも不思議ですよ・・・同じ芝居を観てくれた

お客さんが、「あら、そうだったんですか?」

気付いていない。じゃ、何だ?おれは必要の

ないものを書いていたの?・・・と豪さんに

言ったさ。すると、いや、おれの演出がうまい

だけさ・・・こうだよ。憎いっていうか・・・

傲慢だと思わないか?作者あっての脚本

じゃないの」


・・・とまぁ、

語るも涙、聞くも涙の物語でありました。

劇団アドックの特徴として、

公演間近になると合宿稽古があります。


厳しいが楽しい。


以前は伊豆での合宿、

川崎市の宿泊施設での合宿を続けてきましたが、

昨年は鶴ヶ島に場所を移しました。

adhocのブログ
      別荘前で集合!これから稽古場へ!(伊豆)
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            担当者を決めて自炊(同)
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       毎日毎晩宴会並みの料理が並ぶ(鶴ヶ島)
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      「野菜は食べないと」って山盛りだァ!(同)


不足部分の稽古は勿論だが、

合宿稽古は細かい・・・それこそ

細か~いところまでがチェックされ、

目線一つの動きまでが何度となく繰り返されます。


その結果は感想文にも現れてきます。


■演技が丁寧でセリフが素晴らしかった。

抑えたセリフや演技が抜群で、

これを本格的な芝居っていうんだろうと
思いました。



アドックの演劇はホント~に微にいり細に亘り

「人」をつくり上げていきます。

その結果が、

このような思いをお客さんに抱かせる

のかもしれません。

http://www.ad-hoc.jp/gekidan/gallery_haha_k1.html


■人生最初に味わった本物の感動を

ありがとうございました!