さて、興奮していたのだろうな、
今朝は6時前に眼を醒ましちまった。
ところが興奮していたのは我輩だけではなかったようだ。
主人も7時前に朝食を持って出てきたからだ。
今朝も食通を唸らせるようなご馳走の数々だ。
卵かけご飯に、身のついたシマホッケ、
メンチカツにジャーマンポテト、アーモンドスライス添えですよ。
10時になると主人につれられてお出かけです。
「これだなァ!」
しみじみと「幸せ」という心を噛み締めながら
主人と並んで歩いた。
「犬のインプロってどういうものだ?」
もう、幸せすぎて、
そんなことはどうでもいい気になってきた。
時折行き交う犬がいた。
「あっはっはっは・・・、みんなドッグフード族だろうなァ」
昨夜から、
「我輩の食生活はかわったのだよ」
こよなく人類に近い食事をしているのだ。
みんなに吹聴したい思いだった。
飯倉片町の交差点を過ぎて、
小さなビルの入り口で立ち止まった主人が、
「あはようございます」
と、声をかけた。
ドア横に立てかけてある金属バットに
無性にション便をかけたくなったが、
直ぐに「は~い!」という女性の声がしたので諦めた、
ドアが開いた。
「お待ちしてました」
どうぞと招かれた。
「まあ、お利巧そうなワンちゃんね」
中年のご婦人は、
前からの知り合いのような触手で我輩の頭を撫でてくれた。
「お利巧なんて、我輩は子どもじゃないよ」
いささか不満だったが、嫌な顔はしなかった。
一、二回尻尾を振って容認の姿勢だけは見せておいた。
すると、
「まぁ、いい子ねェ」・・・ますます子ども扱いする。
主人を見上げると、
その目は明らかに「我慢しろ」といっている。
「大丈夫だよ。我輩は大人だよ」心に呟いてやった。
続く・・・