我輩は犬である(2) | 演劇人生

演劇人生

今日を生きる!

さて、興奮していたのだろうな、

今朝は6時前に眼を醒ましちまった。


ところが興奮していたのは我輩だけではなかったようだ。

主人も7時前に朝食を持って出てきたからだ。


今朝も食通を唸らせるようなご馳走の数々だ。

卵かけご飯に、身のついたシマホッケ、

メンチカツにジャーマンポテト、アーモンドスライス添えですよ。


10時になると主人につれられてお出かけです。


12月は O・ヘンリー原作「最後のひと葉」

「これだなァ!」


しみじみと「幸せ」という心を噛み締めながら

主人と並んで歩いた。

「犬のインプロってどういうものだ?」

もう、幸せすぎて、

そんなことはどうでもいい気になってきた。


時折行き交う犬がいた。

「あっはっはっは・・・、みんなドッグフード族だろうなァ」

昨夜から、

「我輩の食生活はかわったのだよ」

こよなく人類に近い食事をしているのだ。


みんなに吹聴したい思いだった。


飯倉片町の交差点を過ぎて、

小さなビルの入り口で立ち止まった主人が、

「あはようございます」

と、声をかけた。


ドア横に立てかけてある金属バットに

無性にション便をかけたくなったが、

直ぐに「は~い!」という女性の声がしたので諦めた、


ドアが開いた。

「お待ちしてました」

どうぞと招かれた。


「まあ、お利巧そうなワンちゃんね」

中年のご婦人は、

前からの知り合いのような触手で我輩の頭を撫でてくれた。

「お利巧なんて、我輩は子どもじゃないよ」

いささか不満だったが、嫌な顔はしなかった。

一、二回尻尾を振って容認の姿勢だけは見せておいた。


すると、

「まぁ、いい子ねェ」・・・ますます子ども扱いする。


主人を見上げると、

その目は明らかに「我慢しろ」といっている。

「大丈夫だよ。我輩は大人だよ」心に呟いてやった。


続く・・・