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「新宿で待っていてくれ」
待ち合わせの時間に30分遅刻するので、
奴さんの行きつけの飲み屋に先に行き
待つことになったのだ。
7月27日、28日に公演する芝居のチケットを
買ってもらう手前、帰るわけには行かない。
「歌舞伎町の何とか言う路地を入った○○という店だ」
「よ~し、分かった」
・・・飲み屋やバーが林立する中だが
すぐに見つかった。
「いらっしゃいませ!」
「・・・・??」
奴さん、飲み屋といったはずだが、
つけまつ毛に紫色のアイシャドーを入れ、
ほっぺにタトゥをつけた女に腕をとられた。
「××さんから電話があったわよ」
帰ったりしないように濃厚なサービスを
して待たせておいてくれと言われた?
冗談じゃないよ。
逆に帰りたくなっちまうだろう・・・
が、我慢した。
「ね、海のものお好き?」
「好きだよ、大好き」
「あ~ら、それ、私に言って欲しいわァ」
だと。
で、出てきたのがホヤの刺身・・・!
ちっぽけなガラスのオチョコみたいな入れ物に、
3~4切れ。
それに四分の一のスダチ。
「お飲み物は?」
「お茶」
「まァ、ご冗談を!」
「おれ飲まないの」
「だって、ここバーよ」
「だって飲まないの」
「お車?」
「そう」
実は自転車・・・
「大丈夫、酔っ払ったら、わたしに乗せてあげるから」
この会話・・・正直ついていけない。
どこのバーもこうではないだろうが、
赤提灯の居酒屋ではこんな会話は出てこない。
ましてや我輩は飲むより食うほうだ。
どちらかというと、
無意識に飲み屋より食べ物屋を探すタイプだ。
面白くないので帰ろうと思ったところに奴さんが来た。
「なァ、おれ芝居の日、日本にいないんだよ」
20日から10日間香港に出張だという。
「悪いなァ」
を何回も繰り返して、1万円を出し、
「これご祝儀だ」
「冗談はよせ」
と言ってはみたが、
やはり貰ってきてしまった。
何ともいえないむなしい気持ちを味わった、
歌舞伎町のバーでのひとコマ・・・
これにて一巻のおしま~い!
チョンッ!