去年結婚した女性の一人から電話が来た。
結婚したのに、
独身時代になかった寂しさを味わっているという。
結婚の時に
ぼくが言った言葉を思い出して電話したのだそうだ。
婚礼司会をするとき、
司会の打合わせで二人と話すことがある。
たいていは三浦綾子さんの作品を通した話だ。
独りで寂しいのは当たり前だけれど、
人って、
二人でいても何人でいても寂しさから逃れられない。
だから二人なのに寂しいのは独りのときの数倍強いし、
寂しさというものは、一緒にいる人が多いほど深く大きくなる。
でも、それは誰でも味わうものだから、
自分だけが特別だと思わないほうがいい。
孤独が嫌なら結婚するな・・・
こんなことを二人を前にして話したのだった。
20年以上、まったく違う生活を送ってきて、
意見や価値観が合わないのも当たり前。
親兄弟とだって修復の困難な摩擦が起きるのに、
昨日まで他人だった夫婦が一心同体なんてあり得ない。
そんな幻想を抱いて結婚するととんでもない結果になる。
ならずに済んでいるとすれば奇跡の二人と祝福したい。
ぼくは慰めなかった。
彼女は電話の向こうで、一度泣いた。
でも、切るときは笑い声を響かせた。
旦那と一緒に三人で食事でもしようかと誘った。
「ハハハハ・・・君たちはいいねェ、
二人で手をつなげるんだからね。
ぼくは誰と手をつなげばいいの?」
すると彼女、わたしつないで上げる・・・だって。
いいなァ・・・人間って!