暴力を逃れて・・・ | 演劇人生

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「・・・離婚の話をしました」

結婚5年目を迎えたばかりのMがポツリと言った。

「結婚していたの?」

そうだ、彼女からは結婚生活を送っていると女性とは思えなかったからだ。

一昨年の一月のことだった。


結婚前から気配はあったらしいのだが、

彼のDVに気付いたのは、披露宴の後だったという。


それは披露宴後宿泊したホテルで始まったそうである。


披露宴から解放され、寛ぎながらコーヒーを飲んでいる時、

披露宴の時の彼女の態度が気に入らなかったという話から、

暴力を受けたというのだ。


高校を卒業して、すぐに上京して大学を東京にした理由が、

父親の暴力から逃れるためだった彼女だったこともあり、

忌まわしい過去の思い出が押し寄せ、恐ろしい父の形相と重なり、

打たれるまま、自分は、暴力から逃げられない運命にあると思っいたそうである。


DV…配偶者暴力


顔にだけは暴力を加えないのは父親と違っていたそうだ。

顔はたいてい平手打ちで、腕や腿が多かったことと、

翌日は一変して優しく、髪をなでてくれ、尊いものを愛でるような扱いになる。


これ等のことから、彼の本体は優しいほうの彼に違いない…と思いながら

5年の年月を刻んでしまったと言うのだ。


だが、「このままでは殺される」と感じ始めたのは、

暴力がエスカレートした3年前からだったそうだ。

「だったら、殺されるつもりで離婚を切り出そう」

と、思い切り心の内を打ち明け、

当面は友人の家に一緒に住まわせてもらうことも話した。

何も言わずに家を出た彼だったが、

それ以後は、職場と言わず、彼女の行く所、至る所に付きまとい、

友人の家の前に張り込まれたり、

悪質なストーカー行為を受けたという。


男性と喫茶店にでも入ろうなら、

何処かで覗き見していたのだろう、

その真夜中に、友人の家のドアを叩いては「女房を出せ!」と怒鳴り散らし、

近所に迷惑がかかるからと出てくれば、

その場で殴る蹴るが始まる。


結局は弁護士を立てた。

出来るだけ直接会うことを避け、

やっと裁判で決着をつけたという。


田舎の父が亡くなった知らせを受け、

故郷へ帰るという。


ところが、話では、

離婚した彼への未練が消えたわけではないというのだ。

確かに暴力は受けたが、

あんな優しい人もなかった・・・・というのである。


そんな話をして、恥ずかしそうに笑みを漏らす彼女は、

来月東京を離れる。