苛めやリンチが話題になっている。
いま相撲界は様々な話題で賑やなさなか、
今度は、痛ましい事件が起きている。
なんとも言いようのない事件である。
体は大きいかの知れないが、
17歳の少年から青年へ成長過程にある若者が、
殺された(らしい)のである。
小学校や中学校での苛めではない、
国技(勝手な規定にせよ)といわれる相撲の世界で、
陰湿な苛めが行われていたのだ。
これはリンチ殺人事件に近い。
過失致死罪などという軽いものとして扱って欲しくない気がする。
僕も小学1年の頃苛めを受けた。
受けた苛めもそうだが、
苛めにかかわったことも忘れられないのではないかと思うが、どうなのだろう・・・
苛められたのは、
小学校へ上って翌月からだった。
級長に選ばれ、副級長はYさんという女性だった。
教室の飾り付けや清掃の責任を二人で責任を持たなければならず、
授業終了後二人して点検して帰った。
苛めは、その帰り道に受けたのが最初だった。
戦争の終わる年だったから、
空襲などでしょっちゅう休校になったが、
田舎のこと、思い出したように空爆があるだけで、
休校になるのは月一、二回だったと思う。
何時敗戦になっても可笑しくないのだが、
僕を苛めている2年生の親は職業軍人らしく、
人伝てに、陸軍大将だとか聞いたことがある。
そのガキが、昼休みになると苛めに教室に来るのである。
「学校おわってから、女と残って何をしてる」
「アレしてるの見た」とか大声でわめいては、
押し倒し、ズボンを脱がせたり、上に机や椅子を積み上げて、
「死ね、国賊!」
・・・と言っては、周囲にいる同級生に、
一緒に 「上に乗れ」 とけしかけるのだ。
従わないと、
「おれ、お前の親父の名前、おれの親に知らせてやる。
国賊育てたといって、牢屋入りだ!」
などと、訳のわからないことを言っては脅しをかけるのだ。
しぶしぶ僕の上に積まれた机などにのってくるのだ。
「おれは殺される・・・」
正直、何度となく、そう思ったものだったが、
生延びてきた・・・気絶したこともあったが・・・
副級長のYさんは、直ちに教員室に助けを求めに走ったのを知っている。
「分かった」
という先生だが、一度も教室に来たことはなかった。
苛めをしている子どもが、陸軍大将(?)の倅だったからである。
「子どもはそのくらいでへこたれちゃいかん」と言っていたのを聞いたことがある。
胸が苦しい、腹部が潰れそうに痛い・・・
これが毎日続くのである。
学校に行きたくない・・・
「腹が痛い」
・・・と布団から起き上がらずにいると、
「嘘言って学校休むようじゃ、ろくな大人になれない」
たたき起こされ、追い立てられた。
時津風部屋の齋藤君はどんなだったのだろうか・・・
相手は、もののわからない子どもではない、
絶対の権力を持つ親方と、
逆らうことのできない兄弟子たちなのである。
閉鎖された相撲部屋だ。
そこがすべて・・・の閉鎖社会なのだ。
17歳という若い彼を、
絶望のうちに死なせた責任は重いぞ!