幽霊トンネルの住人 | 演劇人生

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千駄ヶ谷トンネル



僕らの劇団の稽古場は、

原宿駅に程近い神宮前と千駄ヶ谷にあります。

この地域は、面白いほど様々な伝説が残されています。

僕の住んでいる赤坂から六本木近辺もそうですが、

これらを調べ歩いたら面白いだろうと思います。

一時、「時代に合わない」とか、

「旧弊を排除する」などといわれ、

新しいものを追い求める時代に入った

・・・などと言われていましたが、


積み重ねた歴史を土台にしない新しいのものは、

実は、存在しないということに気づかなければなりませんでした。

考えてみれば、わたし達人間の生活は、

全てがリアクションであることに気づかされたということでしょうか・・・


アクションを起すのは神様なのかもしれませんね。

(僕はノンクリスチャンですが、そんな風に思うのです)


さて、僕らの劇団が稽古する場所から5分くらいのところに、

幽霊トンネルなどと言われるトンネルがあります。


近くに、首無し地蔵もありますが、今回はトンネルの話です。


僕は稽古のために、週一回は、

自転車でこのトンネルを往復します。


心霊スポットと騒がれて久しいのですが、

神宮外苑側からトンネルに入った直ぐのところに、

一人のホームレスが住んでいました。

いました・・・と言いますのは、

いなくなって2ヶ月ほど経つからです。

照明のせいもあるのでしょうが、目

トンネル内を通る人の顔は灰色に見えるのです。

そのホームレスの男性の顔をはっきり見たのは、

3~4回であったと思うが、その度に、顔色の悪い男だなァ・・・

あれじゃ、幽霊スポットにピッタリじゃないか・・・

こんなことを思ったものでしたが、

一度だけ声をかけたことがあるのです。

「身体、大丈夫なの?」

・・・このひと言です。

小便のアンモニアの臭気も漂っているので、

気分のいい声かけではありませんから、

愛想の良い返事でも返ってくるなら、いざ知らず、

「・・・?」

胡散臭そうな顔を向けられて、

二の句も継がず、

そのまま立ち去ったのでした。

それからというものは、

その場所は自転車で通過するだけ、

横光利一じゃあありませんが、

路傍の石のように、もく殺する場所になっておりました。


それが、

ある日から・・・彼の姿は、ないのです。


そして彼の定居していた場所に、

ささやかな花が、ビンに挿されて置いてありました。


・・・あゝ、死んだな・・・

即座に感じました。


それから、数回行き来していますが、

ず~っと、

彼の姿を見ることはありませんでした。


また・・・

花を見たのも、その時の一度だけでした。


心霊スポットに住み続けていた彼は、

身内もなかったのだろうか・・・


いまごろは、

時々さまよい出るという霊と一緒に、

トンネルにすみ続けているのかもしれません。


今日もこれから、そのトンネルを通って稽古場に行きます。



<写真:千駄ヶ谷トンネル>

えッ・・・もしかしたら今日、会えるかも知れないですって?