華氏451度 レイ・ブラッドベリ著を読んで | Talking with Angels 天使像と石棺仏と古典文献: 写真家、作家 岩谷薫

華氏451度 レイ・ブラッドベリ著を読んで

 このブログを読んでいる人で、今頃か!と思った人は、スミマセン…汗。私の『華氏451度』のこれまでの知識は、ここで知った、
>今、NHKの『100分で名著』で『華氏451度』を紹介していますが、正にあの現象が、このブログ会社においても存在しています。
 です。とは言え、前回のブログでも書きました伊集院光さん司会の『100分で名著』はよくできていて、あの番組だけで、読んだつもりになれます。(つもりは、イカンのですが…華氏451度の中にも書かれています…汗)ただし、こと小説『華氏451度』に関しては、その粗筋を理解するだけでも、充分、現代を知る気もしないではないです…
 ただ、8月8日の新聞広告で『華氏451度』が出てきており、めちゃくちゃドッキ!とし、「あぁ、読まなければな…」と思っていたものです。

 日置教授からも、こう評していただき、「あぁ、自分の誠実さの為にも、読まなければな…」と思っていたものです…大汗… そう、『亡くなる心得』はイメージ豊な本です…いつもスバラシイ書評、ありがとうございます…謝
 
 実に浅はかな、コンプライアンスの基、ブログの削除や制限など、現代はも、充分、『華氏451度』の世界です。また真面目な書籍がもはや出版社でさえ理解できません… 私の作品も随分、焚書、殺されてしまいました…(これはもういちいちリンク、させません。よく読んでくださる読者さんが御理解いただければすむことです…)この小説では「海の貝」と呼ばれる、耳に付けるメディアや政府の洗脳器具が紹介されていますが、現代中国(例えば、福島、処理水報道)を見れば解るでしょう。また、私はSNSも充分「海の貝」現象だとは思っていますが…
 昨日だったか、西野亮廣さんが「自転車をこいでいる時間だけが唯一スマホから解放され独りで考えられる時間だ…」とTVで言ってました。勿論SNSも、絶大な力になり得る事もあるでしょうが…
 現状、積極的にSNSに参加しない私は思うのです…「あんな短文で、どうしてその発言に責任が持てるんだ…」と… 社会学者の襲撃事件もありましたが、短文で責任がとれない現象です… まぁ、口が悪かったのも事実ですが…

●ここは、声を大にして言いたいですが、現代人は、正直、この長文を理解する能力がカナリ欠けていると実感します……
 ここ15~14年生きてきて感じる事は、何か大きなトラブルがあった時、私は「怒ってないですよ…」「ただし、問題点はここにありますよ…」と丁寧に説明、指摘しているだけなのに、相手側から「岩谷が怒った!」とか感情的に怒り出した…という経験が今、思い出しただけで3件はある……
 SNSの短文メインの弊害か、長文を理解出来ずその「印象だけで、刹那的に感情に走る」現象を、何度か経験しています。
 これって、この『華氏451度』の世界と同じです… 浅はかです…
 上から目線で申し訳ないですが…テレビが出た頃「一億総白痴」という言葉がありましたが、それを感じます……長文や、文章の裏に隠れた真意を理解できない人が増えたように感じます…
 以下もそのTV情報なのは皮肉ですが、笑、あるユーチューバーは「都市伝説は、金をかけずに読者が増えるからやっているそうです…」 こんなのは、私から見れば本末転倒で、害悪ですらあると思うのですが…笑 こうした物語、「海の貝」で人々がアホになっていく未来予言の小説でしょう… フェイクニュースが原因で家族分断なども今やよくある話です…

 でも、私は、作者、レイ・ブラッドベリのような本、至上主義でもないのですが… 本なんか無くったて偉大な人類はいます。
 ピダハン
 インディアン
 アイヌ
 パパラギ(この書は、まだ検討中ですが、価値転換という意味で)

 でも、上記4件は私が「本によって知った事実」
 本の大切なところ、情報の大切なところは実は「知」ではなく「智」であることです。 
 現代の弊害は、ネットやAIの「知」で、知ったつもりになり、「智」がおろそかになってしまっている気がしないでもありません…
 PCで喩えると、「知」はあくまで使用ソフトやアプリで、実は「智」のOSが壊れている人が多いように感じます…
 実際、(出典は、どこだったか、もう忘れましたが)「現代の幸福のイメージは、資本主義や広告主の金儲けのイメージでしかない」と言っていたのは、とても名言で、まるで『華氏451度』そのままです。
 上記4つのリンク先の、本来の幸福感も必ずあったハズなのに…というか本来の幸福感とはそれであったハズなのに…
 本なんか無くったって本来は、いけるのですよ…『亡くなる心得』で紹介したインドの聖女、アーナンダマイ―・マ―も、学校教育などほとんど受けていません… 大切なのは人類としての「智」です。「知」ではないのです。
 そもそも、ピダハンやインディアン、アイヌが本など持っていない事実。

 実際というか… 『華氏451度』は、レイ・ブラッドベリ33才の作品です。
 33才では、まだまだ人生経験は… と半世紀以上も生きてしまった私は思うのです…
 この発言も興味深い…
 ただし、作家、シャーマンとしてのレイ・ブラッドベリの才能、予知能力は、スコブル長けていたと思います!! 1953年のテレビやラジオの時代に、それに気付いているのですから! そしてその後に続くであろう戦争という結末をも…
 レイ・ブラッドベリは、この戦争という業火、大量死亡で、不死鳥のようにやり直そう!、生き残った知識人達で、新しい未来、社会を造っていこう!みたいな終わり方になっているのですが、少なくとも、この認識では、仮に文明が戦争後再建されたところで、同じ事の繰り返しになるだろうな…と私自身は思った作品でもありました…間違いなく他にも生き残っている人達もいるので。
 「どうして、繰り返してしまうのか?」それは『亡くなる心得』でも説明、解説いたしました… 前回のブログテーマにも関わる内容です。
 この『華氏451度』というSF。現代社会とその未来を象徴的に知るには、とてもいい本だと思います…… でもSFとして私が、すごいな…と思ったのは、『幼年期の終わり』や もっとスゴイのは『ソラリス』です! その真意、解説は『亡くなる心得』でも重要な比喩として紹介しました。

図書館で借りた本なので、良い言葉、抜き出しておきます。
そのまま返し、忘れてしまうのはもったいないので。
とやかく言いながら、我ながら、以下ここまで書くのは、それなりに印象があったからなのですが… というか、現代社会を知るには、1953年に既に、予言的で語りやすく解りやすいからです…
 ちなみに私は、電子書籍は苦手です…PCで読むとなぜか頭に入りません…紙の本は燃やさず残してほしいと思います…まぁ、今のこんな時代、紙の本もなかなか出せない事情も重々、重々知っておりますが…


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P26 (妻が短絡的にすぐ、自殺未遂するのは、まるで現代的)
P43 (ロボットのシェパード犬は、現実化している。気味悪いね。笑 軍事利用も。)
P88 「いいえ、その女は、わたしににとって、なんでもない相手よ。本なんかもっていたのがわるいんじゃないの。そんなめにあうのも、自業自得だわ。本は焚かれるのにきまっていますもの。そんな女、わたしきらいよ」
〇そうそう。私もそう思われているのでしょう。笑
P98 「そして、大衆の心をつかむことは、必然的に単純化につながらざるをえない」
P94 人口は倍になり、三倍になり、四倍になった。映画、ラジオ、雑誌の氾濫。そしてその結果、書物はプディングの規格みたいに、可能なかぎり、低いレベルへ内容を落とさなければならなくなった。
〇既に1953年の時点でそうで、現代においてもクダラン本の多いこと…そして私が真面目な本をわかり易く書くと、出版社から「むつかしい」と言われる、低レベル…)
P96 人間の思考なんて、出版業界、映画界、放送業界──そんな社会のあやつる手のままにふりまわされる。
〇先に述べた、「現代の幸福のイメージは、資本主義や広告主の金儲けのイメージでしかない」と同じ こんな幸福は実は幸福でないと思う…
P99 大衆は自分たちの好きなものを知っているから、陽気に立ちまわりながら、漫画本だけはのこしておく。立体的(性)雑誌はもちろんのこる。
P101 高い山がポツンとひとつそびえていたんでは、大多数の人間がおじけづく、いやでも自分の小ささを味わわなければならんことになる。といったわけで、書物などというしろものがあると、隣の家に、装弾された銃があるみたいな気持ちにさせられる。そこで、焼き捨てることになるのだ。銃から弾を抜き取るんだ。考える人間なんか存在させてはならん。
〇まるで中国共産党のようだ…
P134 野のユリは労せず、紡がさるなり…
〇 聖書のこの言葉を、レイ・ブラッドベリが注目したのはイイなぁ…
私は『新釈 中国古典怪談』でもこの言葉を紹介した。労働は決して美徳ではありません…
P139 いまのキリストは、ペパミント菓子に代表される崇拝者の要求があるから、ある種の商品のかたちをとっておるようなものの、しょせんはただの砂糖であり、サッカリンであるにすぎない。
〇 私はキ教徒ではないが、イエスの偉大さは知っているつもり、ただ、その伝承においてゆがんでしまった気がします…
P140 「わかりません。ぼくたちが幸福でいられるために必要なものは、ひとつとして欠いていません。それでいて、ちっとも幸福になれないでいます」
〇レイは「本が無いからだ」と言いたいのですが、本はある面、必要条件で十分条件ではありません。本がなくても立派な人は居ます。でもこの言葉は現代を表しているように思えます。
P146 すぐれた著者は、生命の深奧を探りあてる。
〇 そうさ。私の著作はすべてその気合で記してきた。特に『亡くなる心得』は。
P143 テレビジョンは<現実>そのものだからだ。直接的であり、大きさももっておる。こう考えろと命令してくる。正しいことであるはずだ。そう思うと正しいように思われてくる。
P149 わたしたちの文明は、いずれは戦争で、粉々に打ち砕かれてしまう。
〇 ますます、現実味をおびている。ジャレド・ダイヤモンドさんも人類は2050年までには人類は核戦争で滅びるだろうと言ってる。
P152 この男が発行しておった新聞も、巨大な蛾が死んでいく状態で滅び去った。
P198 本さえあれば、水の上でも歩けるとでも思っているんだろう。ところが、現代社会はそんなものがなくたって、りっぱにやっていけるんだ。
〇こういう事を言ってるから核戦争になるのです。智の欠如。ちなみに本があれば水の上でも歩けるかもしれません…笑 勿論、浮きや舟という意味でなく…そんな過去の伝承が記されています…
P252 わたしたちはみな、写真のような正確な記憶をもっておる。
〇そう、記憶は実は永遠のハズ…『亡くなる心得』で解説した…
P259 顔つきを見ただけで、じゅうぶんなのさ。
〇そう。顔は履歴書。開高健さんも言ってた。写真家の私も言う。太宰の顔はダメ。笑
P267 彼女はからだをのり出して、色彩とうごきがきらめく巨大な壁へ、感覚の全てを集中している。そこでは例の<家族>が、彼女に話しかけ、話しかけ、話しかけ、はなしかけている。<家族>はたえまなく、彼女に呼びかけ、彼女に微笑をむけている。近づいていてくる爆弾には、ひとこともしゃべろうとしないで。
〇この辺が、現代のSNS社会を象徴しているんじゃないでしょうか……<家族>はSNS的には「友達」というところでしょうか…
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