『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイヤモンド を読んだ | Talking with Angels 天使像と石棺仏と古典文献: 写真家、作家 岩谷薫

『銃・病原菌・鉄』ジャレド・ダイヤモンド を読んだ

銃・病原菌・鉄 注文している本が届かないので、たまたま場繋ぎで読んでみた。ピュリッツァー賞作品ですし、かなり昔に読んだジャレドさんの『文明崩壊』が良かったので。
 2冊ひっつけて一枚の絵になる装丁はいいね!

 この絵は、1532年、80000人もの兵隊に護られていたインカ帝国の皇帝アタワルパが、なんとたった186人のならず者集団であるスペインのピサロの部隊に負けてしまう、象徴的な絵です。

 ピサロが特別な奇襲攻撃をしたわけでもなく、昼間に両軍、相対してたった数分で勝負がついたそうです。 普通では考えられません!
 しかも開戦のきっかけが、アタワルパが聖書を投げ捨てたからだそうです。
 ヤツラはいつも、キリスト教を侵略の道具にしています。それは現在も続いており今も昔も同じ! (そう言えば、『アギーレ 神の怒り』も同じことを語っている。映画  58:24から60:00あたり。金に目がくらむ宣教師、宣教師自ら蔑んだ虫けらのような上から目線で原住民を刺殺してしまうところ。)

 大雑把に言えば、ジャレドさんは、この闘いの勝因は題名の、銃・病原菌・鉄、さらには文字の4要素を持ったヨーロッパ文化にあると言います。 
 この4要素を何故持つに至ったか解説すると供に、これらを手に入れたヨーロッパ文化圏が、この4要素を持っていない文化圏をいかに、野蛮に征服してきたかを書いています。
 正に「野蛮」で悪業の数々が私の目には付きます。インカ、インディアン、アボリジニの虐殺など。
 (勿論、本書は感情論ではなくて、科学として、それら様々な要因を、土地の生産力や、地形、気候等を通して分析的に解説しています)

 でも、非難されるべきは、ヨーロッパ文化圏だけでもなくて、私の敬愛するサモアの人々も、実は、武力を持たない島々を、征服していた事実をこの本で知り、ちょっとがっかり。そう言えば、サモアのダンスって武力を誇示してるものね。

 人類の悲しい、情けない業のようなものが感じられる読書です。
 ちょうど、クラークの『幼年期の終わり』の宇宙人、オーバーロードのような目線で、地球上の欲にまみれた愚かな営みを宇宙から嘆きながら何万年も観察しているような心境になれる本。

 地球上の人類がみんな、アボリジニやインディアン、エスキモー、縄文人やアイヌピー・トング・ルアング族ピダハンのようだったらいいのに…とあり得ない幻想に浸れる本。

文明崩壊
 『銃・病原菌・鉄』は、過去から現在に至る、人類史を語っていますが、後に書かれた『文明崩壊』は、過去に生まれた様々な文明を検証し、何故、亡んだかを語っており、むしろその思考は『銃・病原菌・鉄』よりも未来方向で、読んでいて興味深かった印象。 なにぶん、10年近く前の読書の記憶で、消えかかってはおりますが。
 確か、森を潰す文明は必ず亡ぶと書いてありました。
 あの本を読むと、「銃・病原菌・鉄」文字などを扱っている文明に、未来なんかあるか! と言われている気がします。まったく「No Future」です。
(ピストルズのGod Save The Queenのように。No Future No Future for you. No Future No Future for me. デス!笑)

 結局、『アギーレ 神の怒り』のように、自然の無言の手酷いしっぺ返しを受けて、人類は亡ぶのでしょう。みんな、そのことはうすうす解っているのに、ゆっくりした河の流れの筏のように、誰にも止められないのです。この辺があの映画のいいところです。
 『文明崩壊』にありましたが、イースター島の島民は、自らの島の木々が減っていくことに「ヤバい」と感じつつ、誰も止めることができなかったのです。そして無人島になりました。 おおかたの人類はいつまでも「幼年期」なのです。
 先に書いた、アボリジニやインディアン~ピダハン達の方がよほど「青年期」あるいは円熟期だと思うのです。
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