ショートロープは、ガイドとクライアントとの間を短い距離で繋ぎコンティニュアスする確保技術。
滑落停止ではなく、クライアントがバランスを崩した時点で転倒を防止して滑落を防ぐ。
習熟を要するガイディング技術であって、安易な運用はしてはならない。
【ショートロープの基本的な考え方】
•バランスを崩したクライアントをロープの補助によってバランス崩壊を制止するのがショートロープの役割。バランスを崩して落下を始めたあとに止めることはほぼ不可能。
•クライアントとガイドの間のロープは常にテンションが維持された状態が必要。
1. ショートロープの準備
① ロープを肩に掛けて肩経由で上からスタッフバックなどにロープを押し込める。スタッフバックに押し込むロープの末端は絡まないようにバッグの外に結んでおく。
最後の末端をダブルフィギュアエイトノットで結びカラビナを通しておく。
② ザック上部に収納したスタッフバックからロープを外に出し、末端のカラビナをザックのショルダーストラップにかけて行動。
③ ショートロープに移行する場合は、ロープを15~20mほど(ルートに応じる)出してザックから出たロープをハーネスにクローブヒッチで連結。
④ 7m前後(クライアントからコイルを持つ手まで2m、コイルに4m、ハーネスからコイルまで1m)を残して、残りはチェストコイルにしておく。
2. チェストコイル
① 左手のひらを下にし親指をビレイループにかける。
② 首と手のひらを軸にロープを巻いていく。
③ 左腕をコイルに内側から通して、たすき掛けにする。
④ 右手側より、巻いたコイルの下側からロープを折り返しながら引き出す。
⑤ 折り返したロープをビレイループに通し、コイルを2~3回転させメインロープにオーバーハンドノットで固定。
⑥ 頻繁にロープを繰り出すことが予想されるルートは、⑤のようにオーバーハンドノットで固定処理するのではなく、コイルを3回転程度させてカラビナでビレイループに留めておく。
3. ハンドコイルの作り方
① クライアント側に繋がってるロープにテンションかけた状態で左手にロープを持つ。
(クライアント側のカラビナは反転防止機能付きの場合1枚で可)
② テンションを維持したまま、円周80cmほど(僕の場合は、腕を伸ばして弓を引くようにして指の爪先から胸の真ん中より少し奥までの長さ)のループを4巻き作る。
③ コイルを作り終えたら右手に持ち替える(クライアント側へのロープが手の外側となり、ロープが繰り出せる状態になる)。
④ クライアント側へのロープの上に、コイルを束ごと時計方向に回す。人差し指と中指の間にクライアント側へのロープ出してテンションを張る。
4. ハンドコイルの持ち替え
谷側の方向が左右変わるときは原則としてロープを谷側に持ち替える。
① 緩み止めを解除する。
② コイルを時計回りに180度回転させ、前後の向きを逆にし左手に持ち替える(ロープは小指下側からクライアント側に出て、クライアント側へロープが繰り出せる状態になる)。
③ クライアント側へのロープの上に、コイルを束ごと反時計方向に回す。人差し指と中指の間にクライアント側へのロープ出してテンションを張る。
5. ハンドコイルの持ち替え②
上記が基本的な解除手順だが、コイルの持ち替え中にフォールされることが弱点。
場合によっては、持ち替える側の手の平をそのままコイルを持ってる手の下に入れて持ち替える。
この場合、絞め殺しを解除しても、右手に持ち替えないとクライアント側へロープは繰り出せないことを承知する。
6. スリップノットによる持ち替え
もしくはコイルは持ち替えずにスリップノットの持ち手を作って谷側の手でロープを持つ。
①逆手でロープを持ってひねって輪を作る。
②輪の中に折り返したロープを片手で押し込んでスリップノットの持ち手を作る。
7. 登高時の場合
クライアントとガイド間の距離を短くし、ガイドは常にクライアントの上に位置する。
8. 下降時の場合
クライアントを先行させ、クライアントの動きに合わせてタイトにしたまま行動する。
9. 斜上(斜下降)時の場合
斜上する場合、コイルを持つ手は原則として谷側。山側の手で持ちクライアントが滑落すると、ガイドの体も反転して巻き込まれる恐れがある。
斜下降する場合、ロープは必ずクライアントの山側からガイド側へ出るようにする。
10. 方向転換(コイルを持ち替える場合)
・斜上の場合の方向転換は、ガイドがロープをまたぐ。または、クライアント側に振り向いて持ち替える。
・斜下降の場合の方向転換は、方向転換の際にクライアントからのロープが山側から出るように、クライアントへ反転方向を指示。
11. トラバースの場合
・トラバースの場合、ガイドはクライアントの真上のポジションを維持。谷側の手でロープを確保する。
・上のポジションを取れない場合は、クライアントの後ろについてハーネスを掴んで歩くぐらいの距離で。
12. タイトロープへの移行
危険個所ではロープが張った状態に移行して、可能な限り中間支点を取りながら進む(岩稜帯では岩角を利用)。手に持つコイルを全て流すと7mの長さ。
13. スタカットへの移行
・岩稜帯では岩角、もしくは杭などの人工物がある場合はグリップビレイが有効。
・ムンターヒッチ、肩がらみなど状況に応じて確保。
・下降の確保をスタカットで行った後は、テンションを維持してハンドコイルを作りながらクライアントまで下る。
・ロープの使用が終わったら、出した分のロープはチェストコイル。
14. クライアントが2名以上の場合
・メインロープからバタフライノットかエイトノットで30cmほどのヒゲを出し、安全環付カラビナ2枚でハーネスに連結。ヒゲを固定するためにクライアントのカラビナにクローブヒッチで固定してもよい。
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