アイスクライミングの基本技術 | 奇跡の今日一日

奇跡の今日一日

山岳ガイド
宮崎薫ブログ

◆基本的な登り方

両足を広げ二等辺三角形の底角に置いて、支持するアックスを体軸に合わせるY型が基本。

①  打ち込む側の膝と腰を内側にひねって壁に入れながらアックスを打ち込む。

 

・アックスは脇を締めて肘を水平に固定。できるだけ腕をまっすぐ伸ばして最後に手首のスナップを効かせてピックの先端が氷に刺さるようなインパクトを与える。

・氷を良く見て、出来るだけ氷の凹面や段差を狙って打ち込む。丸く膨らんでる氷は脆く、打ち込んでも氷が割れやすい。
・肩の延長上から頭上の間の出来るだけ高い位置が基本。

・体の外側にアックスを打たないといけない場合は、脇を締めた状態維持しながら体の向きを変える。
・アックスに荷重して完全に効いてることを確認する。


② 打ち込んだアックスが左手なら、右足、左足の順に少しずつ上げる。最初に上げる足はできるだけ体の中心寄り。一気に足を上げない。

 

・最終的にアックスに体軸を合わせた肩幅より広めの二等辺三角形を作って親指に全体重を乗せるイメージ。

・体と氷の間に空間を作りよく足元を見ながら、フロントポイントが水平に刺さるように踵を下げて蹴り込む。

・フロントポイントの上に押さえつけて乗るイメージで、軸足にしっかり荷重してお尻を軸足上に持ってきてから次の足を上げる。

 

◆両足を置けない状況やバーチカルでのダイアゴナルムーブ

左手でアックスを打ち込んだ場合は、右足を出来る高く左手下に近い位置に蹴り込み、腰の横を壁にピタリとつけて乗り込んでいく)。


③ 両足の親指に全体重を乗せ膝を内側に入れて、骨盤から立ち上がり腰を壁につける(下半身の重心を壁側に移動)。

 

・アックスはバランス取りやすければ上のシャフト部分に握リ替える。

・立ち上がるとき、アックスは手前方向ではなく真下方向に荷重されるように。

・立ち上がるときに拇指球と膝とヘソが一直線になるように。膝が外側にでたら力が抜けてダメ。両膝を締めて内股気味にじわーっと乗っかる。

・壁に下半身をぴったりと近付けて背中を反らして、踵は水平か少し上がる。


次のアックスを打ち込む。以下、繰り返し。

 

 

◆X字型の登り方

 

Y字型を基本としながら、状況によっては、腕→腕→足→足の順に登るX字型を使い分ける。

 

X字型は手数が増えるのと、X字型のまま片手を離してスクリューを打ち込むと二等辺三角形のバランスにならないことを理解する。

 

 

 

◆スクリューのセットの仕方


厚く均質な氷を選ぶ(軟らかい箇所や、気泡や亀裂が入っている氷は避ける)。雪を払い、氷の表面を整えたら、氷の厚さに合わせて適切な長さのスクリューを選択。

①アックスを打ち込んだら、しっかりアックスを握り腕を伸ばしリラックスした姿勢を取る。


②空いてるアックスは落としてしまわないように、スクリューをセットする位置から十分離す。


③ハーネスからスクリューを取り、最も力の入れやすい腰の高さに90度でセット。(スクリュー回収も腰位置で)


④スクリューの刃先を食い込ませる。最初のグリグリ半回転はスクリューを逆手で持ち手のひらで押さえつけながら右左へ2~3回で決める。刃先が食い込んだ感覚があるまで強く押す。


⑤しっかり食い込んだ感覚を得たら、回転を繰り返してねじこむ。


⑥ねじ込みがスタートしたらクランクを回して、ハンガーが氷にぴったりつくまでねじ込む。
・スクリューは最後まで入れる。氷がデコボコで入りきらない場合は、ピックかハンマーで削る。


⑦セットが終わったらクランクを閉じて、クイックドローをかけてロープをクリップ。
・氷に雪が付いていて見えないときは、手で払ってからスクリュー打ち込み。

 


スクリューで中間支点取っても、氷の状態によっては不確定要素が残るため、フォールしてはならないのが基本。  


◆スクリューでのビレイポイントのセット

①ビレイ点は強度があり、安全でビレイしやすい位置であることが重要。


②最初のスクリューをセットしてカラビナをクリップ。


③クローブヒッチでセルフビレイを取る。


④十分離れた場所に2本目のスクリューをセット(50cm以上は離す)。荷重が適切に分散されるよう60度以内に。


⑤2本目のスクリューにカラビナをセットし、もう1本のロープもクローブヒッチ。


⑥両カラビナにスリングを通して固定分散で支点構築。


⑦ビレイ解除。


⑧ビレイデバイスセットしフォローのビレイ。



◆アックステンションについて
アックスが抜けるリスクを考えると、レストはアックステンションではなくスクリューをまずセットしてしまってテンションしたほうがよい。

◆V字スレッド(アバラコフ)

懸垂支点が取れない場合、氷に穴を開けて支点とする技術。

 

アイススクリューでバックアップを取るべきだが、最後の人はバックアップがなくなる。強度に不安があって代替ルートで下降できない場合は、スクリューの残置も躊躇すべきではないと思う。

必要な装備
・スリング(ロープスリングは7mm以上)
・V 字スレッド用フック
・22cmアイススクリュー
・ファーストショット(あれば便利)

① 60度の角度で1つ目の穴を開ける。


② 2つの穴の始点をスクリューの長さと同じくらい離して2つ目の穴を開ける。こうすると正三角形の形になり、約60度の角度ができる。


③ フックを使いスリングを通して引き出す。


④ スリングを結ぶ。