前回の記事「罪悪感と無価値感②」の続きです。
今回は、乳幼児期子供に対する、養育者のどのような対応や態度が罪悪感や無価値感に繋がりやすいのかについて考えてみたいと思います。
肉体的、精神的な虐待があった場合、乳幼児のメンタルに問題が起こるのは一般的に広く知られていることだと思いますので、今回は養育者なら誰でもやってしまいがちな、ごく当たり前に思えるような言動や態度についていくつか挙げてみます。
「良い子」「悪い子」という言い方
この言い方をしてしまうと、子供は自分の言動について言われているのではなく、自分の存在自体について評価されるように感じてしまうかもしれません。褒める時も叱るときも、子供の言動について言っているということをきちんと伝え、あなた自身は何があってもOKなのだと、そのつど言ってあげるといいかもしれません。
○○したら××してあげる
こういった、何かをしてあげることや認めることに条件を付けてしまうことで、子供の受け取り方によっては「あなたはありのままではいけない」というメッセージとして伝わってしまう可能性があります。また、養育者が望むようなことは毎回できることではないのがむしろ当たり前なので、○○できないことに罪悪感を覚えたり、無価値感を感じたりする可能性が高いです。
思い通りにしたくて褒める
子供は褒められれば喜ぶと思いますが、実際は言葉の内容だけではなく表情、態度、声のトーンなどの非言語コミュニケーションの情報の方が大きく伝わってしまいます。養育者の褒めたりおだてたりが純粋な本心でない場合、または褒められた内容と自分は違うと子供自身が感じた場合、罪悪感を感じてしまったり、褒められる子にならないと受け入れられないというメッセージとして伝わる可能性があります。
比較する
なにげない言葉であっても、兄弟や同年齢の友達などと何かを比べるような言葉は、子供にとってはひじょうに大きく響いてしまう可能性があります。その比較された対象の子供よりも、もっと認められないといけないと感じたり、そうでない自分はダメな子だと思ったりなど。ただ、そういった感情をまだ言語化できないので、そのままモヤモヤした感じを内面化してしまうということもあるでしょう。
枠にはめる
お兄ちゃんだから、お姉ちゃんだから、男の子だから、女の子だから、など、自分で選んだものではない枠にはめて、「だからこうしないといけない」といった伝え方をすると、それらしくない自分には価値がない、それができない自分は悪いのだと感じさせてしまうことがあります。
表情、態度、声のトーン、動作などで子供を動かそうとする
子供は言語がまだ未発達な分、養育者の非言語コミュニケーションによる情報に敏感です。特に子供が好ましくない行動をした時に、何がどう悪かったのかを説明しても伝わらないからといって、睨んだり、ため息をついたり、大きな声を出したり、無表情になったり、無視したり、ものを乱暴に扱って見せたりなどといった非言語コミュニケーションによって子供を罰する、もしくは脅してしまうと、子供はその後の人生で同じようなことをする人に支配されやすくなるか、もしくは同じ方法で他人をコントロールするようになってしまうかもしれません。
争いを見せる
養育者間の喧嘩、言い争いなどが起こりやすく、それを子供が目にしやすい場合、子供は自分が悪い子だからだ、自分のせいだ、と思うことがけっこうあるようです。自分にとって安全で安心できる場であって欲しい家庭があまりそうではないことに対して、他の事情は何も分からないので、原因を自分だとする極端な思い込みをしてしまうことが起こりやすいのかもしれません。
このような言葉や態度は世代間連鎖といって、自分の親(養育者)がしていたことを自分が親になったときに同じように繰り返すという傾向があります。その場合は、親である自分自身が無意識下に罪悪感や無価値感を抱えていることも考えられるので、子供を上手く育てないといけないと過剰に責任を感じてしまうということもあるかもしれません。そして、この場合の「上手く」というのは、子供自身にとってというよりも、実は周囲の評価を気にしてということもありがちなのかもしれません。
ただ、乳幼児期の子育ては本当に体力が必要で、睡眠不足や肉体疲労が慢性化してしまいますし、人間にはバイオリズムがあるのでずっと心身が安定した一定の状態でいるということは不可能です。罪悪感や無力感を抱えている人は他人に頼るのが苦手だったり、体調が良くないときも頑張り過ぎてしまうことが多いだろうと思います。体調が悪いときは素直に子供にそう伝えて、「それはあなたのせいではない」と言葉にして言ってあげると子供も安心するかもしれません。
次回の記事「罪悪感と無価値感④」では、乳幼児期に植え付けられた罪悪感と無価値感が、その後の人生でどのように影響するのかを考えてみたいと思います。
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