昨日の記事では身体的な癖の手放し方について書きましたが、今回からはいくつかの記事で思考の癖について考えてみたいと思います。1回目の今回の記事は心理学の分野から、この「思考の癖」をセルフモニタリング(自己観察)によって見つけ出して変容させることで身体の症状や言動などを改善する「認知行動療法」についてご紹介したいと思います。
認知行動療法の元である認知療法の創始者アーロン・ベックは 「ネガティブ認知トライアングル =世界や環境への否定的な考え⇔自己への否定的な考え⇔未来への否定的な考え」が相互に影響し合っており、それが心身や言動に悪影響を及ぼしているとしています。
人には誰でも、ネガティブであろうがポジティブであろうがそれぞれその人なりにものの見方、考え方に独自の癖や偏りがあります。このような個々人の持つ「思考の癖」のうち、心身や言動に悪影響を及ぼすネガティブなものを、認知行動療法では「認知の歪み」と表現し、ベックの弟子であるデビッド・d・バーンズがこの認知の歪みを10パターンに分類しています。
1)オールオアナッシング(過度な完璧主義)
2)過度な一般化(常に、絶対、みんな)
3)マイナス思考(良いことにも悪いことのように思い込む)
4)結論への飛躍(分からないはずのもの、他人の内面や未来に対する無根拠な決めつけ)
5)レッテル貼り(ステレオタイプ、先入観、思い込み)
6)過大評価・過少評価(自分に甘く他人に厳しい、またはその逆)
7)感情的な決めつけ(ものごとを自分の感情を根拠に断定)
8)「~べき」思考(~すべき、~でなければいけない)
9)個人化(過剰な自己責任化)
10)こころのフィルター(良いことは見えず悪いことばかりにフォーカスする)
認知行動療法の「セルフモニタリング」という手法では、モニタリングシートという用紙を使って
・起きた状況、出来事(誰と、いつ、どこで、何があったか)
・その時の気分(身体的反応も含む)
・その時の行動(行動できなかったことも含む)
・自動思考(その時に思い浮かんだ考えやイメージ)
・自動思考の根拠(なぜそう思ったのかの根拠にした客観的な事実)
・反証(自動思考とは違う考え方や見逃していることの可能性)
・適応的思考(反証を踏まえて認知的再体制化=意味付けを変える)
・気分の変化(上記のプロセスを踏んで気分がどう変わったか)
をそれぞれ書き込み、認知の歪みを可視化して変容させるという治療を行います。この手法は以前このブログでご紹介したことのある、アルバートエリスの論理療法とも通じるものがありますが、この論理療法もアーロン・ベックの認知療法と共に認知行動療法の元となる理論とされています。
認知行動療法の認知の歪みの10パターンはネガティブな自動思考の代表的なものですので、上記のような自動思考が自分に思い浮かびやすいのであれば、セルフモニタリングを試してみると何か気付けることがあるかもしれません。自分の思考の癖を手放した方がいいのかどうかを判断するためには、まず自分の思考の癖や傾向にどのようなものがあるのか、それが自分の認識をどう歪めているのか、その思考の癖が自分の心身や言動にどのような影響をどの程度与えているのかに気付くことが大切なのだろうと思います。
この認知行動療法の治療は前記事に書いた身体的な癖を手放す3ステップとほぼ同じような方法で、セルフモニタリングはステップ1にあたりますが、思考の癖は身体的な癖よりも「それがある」こと自体に気付きにくいものです。身体的な癖の手放し同様に、思考の癖も手放したいものが見つかった場合は、ステップ2の「その歪みは自分を守るために作られたもの」といったん認めて受け入れてから、ステップ3の 「置き換え=癖に新しい習慣を上書きする」段階、上記の認知行動療法で言えば「反証して認知的体制化=意味付けを変える」に進んでいけば心理的な抵抗が起きにくく、比較的スムーズに要らない癖からの影響を小さくしていけるのではないかと思います。
次の記事では「思考の癖」が起きているであろう脳の「潜在意識(無意識)」という領域についてと、思考の癖である「自動思考」とはどのように生じてどう私たちに影響しているものなのかについて、私の考えているたとえを用いながらもう少し掘り下げて考えてみたいと思います。
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