最初に収録されている短編「独白する愛の犠牲獣」が興味を惹いた。
2~3行の文が、空白を挟みながら、連なっていく。
内省的な声から始まる。
この、わけのわからないところが、おもしろかった。
内側の声から、次第に外側の形が見えてきだす。
まじめに優秀に生きてきた主人公の葛藤が切実だ。
世界の中心にいるんだと言われ、
世のためにと自己犠牲を刷り込まれ、
皆が生きていくために必要な唯一の存在だと納得している。
だが、唯一と言われながら、自分がいなくなれば、すぐにこの場所は埋まる。
”これ以上、思考を進めるべきではない。私が私でなくなってしまう。”(抜粋)
著者:金子薫
著書:「愛の獣は光の海で溺れ死ぬ」 (短編「独白する愛の犠牲獣」他全6編)
装画:PASS
発行:河出書房新社
