「べらぼう」で旬の、山東京伝の作品。
山東京伝は、1761年に江戸の深川で生まれた。
1775年頃に、浮世絵師に入門し、北尾政演まさのぶと名乗る。
初期は表紙画や黄表紙の挿絵を描いていた。
後に黄表紙や洒落本の作者として本格的に活躍する。
黄表紙『御存商売物』は1782年刊行され、当時の黄表紙評判で最高位と称賛された。
洒落本の第一作目は1785年刊行、翌年に第二作目、『通言総籬つうげんそうまがき』は第三作目で1787年刊行の作品。
『仕懸文庫しかけぶんこ』は1791年蔦谷重三郎から出版された。
前年(寛政二年)には出版物の取り締まりが厳しくなっていた。
『仕懸文庫』の本体を包む袋には書名に添える形で「教訓読本」と書かれている。
同年に蔦谷から刊行された『金之裏』『娼妓絹籭しょうぎきぬぶるい』の合わせて三作は、
風紀紊乱とされ、発禁となる。
そして山東京伝は50日間の手鎖を命じられる。
それ以降は洒落本は書いていない。
寛政五年、京伝は、京橋銀座一丁目に煙草入れを商う店を開いた。
年々商品の種類が増え、多くの客で賑わったことが、歌川豊国の浮世絵「山東京伝の見世」で描かれている。
山東京伝は、お上にたてつく気持ちはさらさらない。
面白いものを、かっこいいものを、好んだだけだった。
洒落本は、風紀紊乱として発禁となったが、
男女の営みは直接は書かれていない。
洒落てて、言葉に勢いがあって切れがよく、
流行りのものや、文学絵画の素養がないと、わからない。
わからない自分のような人のために、この著書は文庫見開きの、
右ページに山東の文書、左ページにその注釈、で進む。
(それでもよくわかっていないが)
夢中で読み進めて行けるのは、いとうせいこう氏の訳のおかげだろうと思う。
どちらの作品も、”遊郭流行ガイド”みたいなものだが、
『通言総籬』は、官許の新吉原の半ドキュメンタリーのようなもので、
『仕懸文庫』は、法的には存在を許されていない岡場所・深川の様子を微に入り細をうがつタッチで書かれていて、売る側の様子がよくわかる。
罰金を命ぜられ、二年後には手鎖をくらった山東京伝。
江戸の美、洒落、風刺、ナンセンスなどなどが最高潮を迎える中で、この”遊郭流行ガイド”が生まれた。
『何がかっこいいか』
(以上は著書あとがき 参考)
著者:山東京伝
訳者:いとうせいこう
解説:佐藤至子(近世文学研究者)
発行:河出書房新社 2024年12月初版
*『通言総籬』は2015年に刊行済。『仕懸文庫』は訳おろしし、文庫化されたもの。
