著書:「悪い血」

著者:鈴木涼美

発行:文藝春秋 2026/7第一刷

 

作者の経歴がすごい。

1983年生れ

慶応義塾大学環境情報学部卒

東京大学大学院社会情報学修士課程修了

修士論文は後に『「AV女優」の社会学』として書籍化

 

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自分のなかに”偏見”があるのだと、この経歴を見て思う。

きっとこの経歴が記載されてなかったら(自分にコンプレックスがあるからだが)、

もっと違う感じでこの小説を読んでいた。

 

 

 

自分にとっての家族が、老人施設に入っている祖母ひとりで、それまでの家族は父親のせいでめちゃくちゃで、破綻していたとしたら、

 

どうやって生きていくか。

女性でなくても、未成年でなくても、基盤のないところから独りで人並みな生活を維持するのは、なにかを思いきるしかない。

 

主人公は、勉強はきちんと修め、何年後かには、自分の知識で食べていっている。

 

 

どうにか落ち着いた頃、妊娠する(妊娠するにはぎりぎりの年齢で妊娠する)。

葛藤する。

今は”普通”に生きている。

この期に及んで、過去が突きつけられるのか。

”普通”にはなれないのか。

 

 

 

 

この著書の中の主人公が「妊娠」についての考えるところが興味深かった。

 

 

(抜粋)

妊娠は奇妙だ。積極的な選択をしたつもりがなければ多くの事柄はない方、手に入れない方に留まるのに、妊婦が何も選択をしなければ、そこにあることが確定していく。そんなところに巻き込まれているにもかかわらず、傍から見れば私は何かを望み、何かを待ちわびる女に見えるというのだから、それに抵抗しなければならない。血液の中の不純物が、私が手を伸ばしかけた未来にそぐわないものだと断定されたくない。血液の潔白を証明するのではなく、手を伸ばしかけた事実をなかったことにする形で。資格がないとか不相応だとか、そんな言葉を聞くことなしに、できれば私はこの幸福ともつかない人生をそっとしておきたい。私は十分にかつての愚かな若い顛末を自覚しているし、それにわざわざ形を与えて、自分の量刑を言い渡される必要がないとも思う。