著書:歌集「アスパラの芽立するころ」 かりん叢書第458篇

著者:馬場あき子

発行:角川文化振興財団 2026/3/25初版

 

 

(歌集より)

引き算のやうにご近所のひと消えて何もともなし無しといふことの

 


***

自分の人生にはなんの接点もないのだけど

顔も知らないが

近所に住んでいるのは知っている

 

朝のごみ捨ての帰り、散歩がてらにいつもとは違う道を通ると、

ご高齢の独り住まいの方の家が、すっきりとなくなっている。

根こそぎ浚われて「売り地」看板を掲げている。

 

墓掃除に行くと、隣にあった墓が無くなっている。

 

そんなことが続けざまにあり、

ああ、順番か、と。

なんともさみしいものだ。

 

 

***

たまに雑草を抜く程度で、放任している桔梗が咲いている。

まるで桔梗自身が雑草のように。

好きな形に咲け、と思っている。