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今様をうたうことを専門とした女性芸能者として、遊女、傀儡くぐつ、白拍子の3者がいた。
遊女と傀儡の女は、今様をうたい、枕席に侍る。
違いは、
・遊女は女性だけで集団を作っているが、傀儡は男女で集団を作り男は主に狩猟を行っている。
・遊女は、水上交通の要路に住んでいて、小舟に乗って旅客の船に近づき遊芸をする。
・傀儡は、陸路の要衝を本拠としつつ漂泊流浪し、歌舞をする。
白拍子は、立烏帽子や紅長袴を身に着けて男装した舞妓が、今様などを歌いながら舞った。素拍子しらびょうしともいい、これは無伴奏で即興で舞うことをいう。
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著書:「日本舞踊舞踊劇選集」
著者:川端康成 他全作家31人による戯曲 39作品
監修:西川右近
発行:㈶西川会 2002年
■「船遊女」川端康成
1954年(昭和29年)9月10日~27日・御園座にて公演されたもの
「草稿」と「上演台本」のふたつが載っていて、見比べることができる。
ストーリーは、平家の時代。あの乙前にもまさると噂されるほどの今様の名手であった呉竹の娘むらさきが、源平の戦に翻弄され、身を落とす。船遊女となっても、自分で稼いだ金で生きる。そして、離れ離れになった父親景清を探し求める。父親は盲目となり、琵琶法師となっていた。
【冒頭部分】
呉竹の家。京の町なか。庭に櫻咲き満ちてゐる。
春の夕近く。
今様の合唱のうちに幕あく。
(唄)佛は常にいませども 現ならぬぞあはれなる 人の音せぬ暁に ほのかに夢に見え給ふ
呉竹、五人の若い白拍子に、歌を教へてゐるところ。庭の櫻とともに花やか。
■「古里の音」川端康成
1958年(昭和33年)1月29日~2月1日・新橋演舞場にて公演されたもの
「船遊女」に比べて、舞踊が多いものとなっている。
ストーリーは単純明快で、それだけに感情移入がすなおにできる。
盲目の息子を思う母親の愛情がテーマ。
【冒頭部分】
〈人無く機織る音遠く聞える〉
(唄)海山を超えてぞ聞ゆ、あした夕べに夜な夜なに、古里に機織る母の…
〈唄のうちに盲法師登場〉
