「ひとひらの羽」より

 

”会いに行こう、と決めたものの、たいした用事はない”でこの物語は始まる。

職場を離れても用事のついでに年一回会う程度の仲。

それがコロナ禍で、しばらく会っていない。

県をまたいで、用事もないのに、会いに行くのはお互いためらってしまう。

”会いに行こう”と思ったのは、古い友人を急な肺炎で亡くしたことからだった。

お互い、現役を引退し、前期高齢者だ。

会える時に会っておかなければ後悔する。

そう思ったからだった。

 

世間の枠の中でしか自分の立つ場所がわからなかった志津夫と、

自分の中のなにかを大切に守った遥はるか

 

 

 

 

 

 

著書:「嵐をこえて会いに行く」(短編五編収録「ひとひらの羽」「遠回り」「あたたかな地層」「花をつらねて」「風になる」)

著者:彩瀬まる

発行:実業之日本社 第一刷2025年2月