『ベルサイユのばら』の作者である、池田理代子さんによるポーランドの悲劇物語。
ストーリーも絵も、漫画の枠を超えている。
■「少女漫画における池田理代子の美学」小沢澄子さんの解説より
(抜粋)
列強による相つぐ侵略と分割にさらされたポーランドという国の悲劇。
その独立をかけて闘った人々への共感がこの物語の根幹だからである。
自分の国がなくなってしまうという思いは、それを経験したことのない私たちには実感がないことは知っている。
だが、一時期の占領軍体験でさえ、さまざまの傷を残したことを知れば、他国に分割される無念さは想像の外ではないのである。
(抜粋)
ずっとあとのアウシュヴィッツやカチンの森を知る私たちにとって、 この 国土の闘いはいっそう悲劇的にみえるものだ。
(部分抜粋)
『天の涯まで』がポーランドの分割に対する抵抗を描くにあたって、主人公を、革命家のタデウシではなく、国王の血を引く貴族であるユーゼフにしたこと。
個人的な野望の影をちらつかせることはまったくなく、ひたすらポーランド独立に賭けたその生涯は、貴族とはこういうものとあらためて思わせるほど潔いのである。
著書:「天の涯まで」上巻、下巻
著者:池田理代子
発行:朝日新聞社 1991年第一刷