「浸透する」と、吉本隆明は表現している。

 

 

『雪国』は、話の筋などほとんどない。

あるのは、自然の四季の移ろいのような、情緒、抒情。

 

雪のない夏。雪がどっしりと積り吹雪く冬。紅葉のなか雪が降り始める秋。

 

 

男女間の恋愛は、いい人間性だから好きになるのでなく、

お互いがお互いをどれだけ浸透していくか、浸透されるか。

 

 

その「浸透力」を川端は、つややかさを、親密さを、

話の流れではなく、言葉で表現している。すごい作家だと。

 

 

(抜粋)

:『雪国』はモダニズム的な作品から日本の古典主義的な美意識に連なる作品へと転換していく最初の優れた小説。長編『山の音』『古都』へとつながっていく。

:小説においては、筋よりも美的な感覚を重要と考える。

 

 

 

著者:吉本隆明

著書:「日本近代文学の名作」*(2000/4~2001/1)川端康成ほか全24名の作家論

発行:毎日新聞社 2001/4発行