サラリーマンの微妙がわかる作家。

 

全国に拠点がある大企業の社員は、転勤が盛り込み済みだ。

男性はそれで繋がれていったり、実績になったりして、土台を作っていく。

女性は同じように仕事をしても壁に阻まれる。

結婚出産という人生の場所の選択という壁。

男どうしという壁。

 

82歳の母ひとりの実家に娘が同居することになった。

兄弟みな独身。

兄は、住所不定無職、自由人。

上の弟は、1LDKのマンションを購入し、日常は和装をしている。

下の弟は、早期退職して文化を浴びたいと京都に移住した。

自分は55歳。メーカー所長。独身。地元。  (…よく頑張ったねぇ^^)/

母親から趣味を持てと言われるが、やめてほしいと思う。

平日くたくたで帰宅する。休日は体力回復で精一杯だ。

趣味なんて体力とお金と時間と心に余裕のある人のやることだろうと思う。

でも庭に勝手に生えてる、なんだかわからん木が心を繋いだ。

「なんだかわからん木」

 

 

しかし、転勤しその土地の風土に身を置くのは興味深い。

神も同じで、人間として暮らしてみたい。神では味わえないことを知りたい。

架空の土地に、神が個人として、その土地に暮らす。

「神と提灯行列」

 

架空の土地の架空の方言…じゃんがじょうにねてくわる=よく眠っている

 

神はしばしば、中年男性の姿で現れる。

全知全能の神と言うけれど、この神は半知半能といったところだ。

「忸怩たる神」

 

 

一度しかない人生へのいとおしさが込められた短編小説。

 

 

 

 

著者:絲山秋子

著書:「神と黒蟹県」(読切短編8作品)

発行:文藝春秋 2023年11月発行