この著書の最後の言葉

 

Ars longa, vita brevis.

芸術は永く、人生は短し

 

 

 

坂本さんが「未来」に遺したもの

 

 

たとえば、この表紙のピアノ

 

この写真は、たぶん息子さんの空音央(そら ねお)さんが撮られたのだろう、

ニューヨークのご自宅の庭に置かれたもの

 

(抜粋:)

決して広いわけではないこの自宅の庭には、ポツンとピアノが佇んでいます。

 

2015年、療養のために訪れたハワイの風土を気に入ったぼくは、勢いで中古住宅を買うのですが、その家には90年近く前に作られたというピアノがありました。

 

家そのものはすぐに手放してしまったものの、古びた雰囲気がなんとも素敵なこのピアノだけは、ニューヨークの自宅へと持ち帰ることにした。

 

そして、試しに「自然に還すための実験」と称して、野ざらしの状態で庭に置いてみることにしました。

 

それから数年が経ち、幾度となく風雨にもさらされて塗装もすっかり剥がれ、今ではどんどん本来の木の状態に近づいていっている。

 

このままどう朽ちていくのかー それは、ぼくたち人間のあるべき老い方とも繋がるように感じます。

 

 

 

■2023/5/15 鈴木正文「著者に代わってのあとがき」より

 

3/14,15,16作業し、約20分の音源を録音する。

「使ってもいい、使わなくてもいい。使うんだったら切り刻んでもいい、なんでもいい、好きにしてね」といって、二人に渡す渡す。坂本さんの最後の音源となる。

 

*参考

「Special Live 大友良英+小山田圭吾 1st set、2nd set」
2セットを開催。即興演奏という性格上、まったく違った内容。

2023/4/8 御茶ノ水 RITTOR BASE
会場限定30席、オンライン視聴可

 

 

 

3/17数値よくなっている。

 

3/19呼吸困難となり、救急搬送される。

 

3/23家族に付き添い希望。

 

(ベッドで点滴をしながら、3/23~26「東北ユースオーケストラ」公演をリモートでリハーサルを含めて見届ける)

 

(3/25,26「一音一時」リモート打合せ)

*参考

「Ryuichi Sakamoto:SOUND AND TIME」

坂本龍一氏の大規模展覧会「一音一時」

坂本氏が著名アーティストと共同製作した8点のサウンド・インスタレーション作品を展示しており、うち1点は今回の展覧会のために制作された新作。

会期:2023年7月30日〜2024年1月5日
会場:中国・成都木木美術館

 

3/25坂本さんの希望で、緩和ケアをはじめる。

「もうここまでにしていただきたいので、お願いします」と、おだやかな語調で。

 

3/27坂本さんの希望で、ベッド正面の備品の壁の絵を、李禹煥(リ・ウファン)さんの原画に替える。

 

3/28AM4:32。71歳。

 

(文抜粋:)

残された時間がごくわずかであるという自覚があったからこそ、坂本さんは最後の命のエネルギーを、自らの生命の維持のためというよりは、そうではないことのために、惜しげもなく費やしたのだろうか。いや、それはむしろ、生命の維持のためだったのかもしれない。

 

 

 

著書:「ぼくはあと何回、満月をみるだろう」

著者:坂本龍一

発行:新潮社 2023/6/20発行 (『新潮』2022/7~2023/2掲載)

 

聞き手:鈴木正文

カバー写真:Zakkubalan