版画が動いている。

 

黒い色のインクの線は、観ていると、いきなり動き出し、いきなり大量のなにかを正面から投げつけ、さっといなくなっている。

 

「八木穂」作品集箱表紙表

「八木穂」作品集箱表紙裏  

 

*作品(表=左、裏=右 一枚もの)

作品ナンバー 95

銅版シュガーアクアチント

24.9×37.3㎝

2002年

 

 

■はじめに(2022/6) より抜粋

反具象という本道から外れた畦道を走ろうと、最初から決心していました。

作品を見る人に巧さを自慢するような方向へには、反旗を掲げることにしたのです。

 

■編集後記(2022/6) より抜粋

突然画集の話が持ち上がり、後援会が出来、あっという間の出来事で、わずか6ヶ月でこの作品集は出来上がりました。

そして最大の喜びは私の最も尊敬する野見山暁治先生のお言葉を頂けたことです。

 

■野見山暁治さんの巻頭の言葉より (全文)

 

「畦道」

 

門外漢のぼくに、版画集の巻頭をと言ってくるのは、八木さんが門外漢のせいだろう。八木さんは生まれ落ちた当初から、寄る辺ない流れに沿って生きてきたと言う。

 

どんな岸辺に辿り着いても、それなり生きてゆける才覚は持っていたのだろう。しかし、思いもよらずに着いた先が、版画の道具といったかなり片寄った手仕事で、それを手伝って版画の虜というか、それっきり動こうとしないのが面白い。

 

手先は器用らしい。しかしそうした目先の要領や、周辺との馴れ合いで、いつまでも続けられる職域ではない。

 

この道に入って八木さんは何年になるのか、ぼくと出会った当初から職人らしく、師匠らしい髯が、身についていた。

 

モチーフは意表を突いている。これが人間か、打ちひしがれた眼、鼻。人相のない顔、というのがおかしい。人間ではないのかも知れん。

 

もっとナマに人間を問いつめていった揚句か、或いは技法の面白さに、のめり込み過ぎたものか、いきなり覗き込んだ放蕩な女態。小さい画面を刻み込む、大胆な肢体が織りなす、闇の中の秘めごと。

 

具象という本道から外れた畦道を走ろうと、最初から決心して版画に挑んだと、八木さんは述壊しているが、創る、という基本の裏側で、壊すという本能的な昂奮が、いきなり入り込んできたのだろう。

 

しかし交尾の恍惚は、そう続くものではない。むなしく飽きることなく、八木さんは手にしたものを離さない。いつまで初心のニードルの感触に浸ってばかりもいられない。どこ迄、走りつづけても畦道。

 

野見山暁治

 

 

 

画集名:「八木 穂 作品集」

企画・発行:八木 穂 後援会 2022/6/10発行

監修:八木 穂 1935生~2023?ご逝去(日にちは不明 87歳頃)

「八木穂」作品集本体内表紙

「八木穂」作品集本体表紙

 

 

 

 

展覧会名:「版画・みやこ展」

会場:「みどりの館」ギャラリー 入場無料

会期:2023/7/19~7/30

 

たぶん、企画時はご存命だったのではないだろうか

 

野見山暁治さんの作品(2023/6/22ご逝去/102歳)

八木穂さんの作品(2023?ご逝去 日にちは不明/87歳頃)