以下抜粋:対談のなかの坂本さんの言葉

 

福岡さんとの対話は、こちらが一方的に刺激を受けているだけですが、とても楽しいのです。それは福岡さんが理系の科学者でありながら、音楽やアート、哲学にも深い知識と理解を持っているからというこもあります。

 

そして不思議なことに毎回話すたびに最終的に一つの話題に収斂していきます。それはロゴスとピュシスの対立というものです。簡単に言うなら、ロゴスとは人間の考え方、言葉、論理といったもので、ピュシスとは我々の存在も含めた自然そのものと言ってよいでしょう。

 

「ロゴスVSピュシス」、あるいは人間と自然の対立について、なかなか解決は難しいと思います。一つ言えることはロゴス化されたものを一度実際のものと思ってしまうと、何事もそれを前提に考えてしまい、実際の自然であるピュシスとはどんどん剝離してしまうということです。  (*乖離や剥離でなく「剝離」と表記されている)

 

一番身近な自然は海や山ではなくて自分自身の身体なんです。

 

自分自身が自然だということに気がついてから、僕はいつもそのことが気になるようになりました。自分の身体は自然物なのでコントロールできない。毎日変化するのが当たり前で、風邪も引きますし、病気にもなりますし、生まれたら死ぬわけで、やがては崩壊していくことになる。これはもう、絶対のエントロピーの法則に従っているわけなんですね。

 

はたしてどれだけの人がそのことを意識しているのか、

 

 

 

著書:「音楽と生命」

著者:坂本龍一、福岡伸一

発行:集英社 2023/3/29発行 (*坂本龍一さん 2023/3/28ご逝去 享年71歳)

 

装幀:新井千佳子

構成:加藤裕子

 

*2017/NHK「SWITCHインタビュー達人達」対談を大幅加筆修正、及び、坂本龍一Art Box Project2020「2020S」冊子「福岡伸一・坂本龍一 往復書簡」を加筆修正されたもの