父は、自分で淹れたコーヒーを飲みながら、ベニーグッドマンを聴いていた。

父を内包しながら生きている。

父が積み上げてきたものを引き継ぐ。

 

引き継ぐことは大事なことであるけれど、

次第に自分がなくなっていく。

自分が自分ではなくなってしまう。

 

それでは意味がない。

 

人は皆、未来に旅をする。

人生は旅なのだと父から教わった。

 

では、いったい自分はいま、人生の旅のどのあたりを通過しているのか。

何を目印にして、どちらへ向かって進めばいいのか。

 

あたらしい音をつくろう。

真っ白な空間に。

 

(部分抜粋)

 

著書:「鯨オーケストラ」

著者:吉田篤弘

発行:角川春樹事務所 2023年3月発行