約束をしないまま、

同じ場所に住んだり別の場所に住んだり、

くっついたり離れたりしながら、

 

ゆらゆらと会いながら

 

月日が流れ

 

「来週からその町に行くよ。そこで魚でも食べて、本読んで、日光浴して、最後は林の一番日当たりのいいとこに眠る。だから近くに寄ったら、遊びに来てな。…たまには、あいたい」

 

「好き」

「うん」

「好きです」

 

行かないで、を言わないようにしたら、同じ言葉しかでなかった。

私の内側のどんな痛みよりも、高臣さんの安穏の方が大切だった。

 

 

(「花に眩む」より抜粋)

 

 

著書:「花に埋もれる」 短編「花に眩む」他全6編

著者:彩瀬まる

装画:中島梨絵

発行:新潮社 2023年3月発行